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アルコールで筋肉崩壊?プロテインとお酒の飲み方を徹底解説

坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)
最終更新日:2022.06.24

今回は多くの人が大好きなアルコール!栄養相談をする中で、必ずといって質問を受けるのがアルコール。永遠のテーマといっても過言ではなさそうです……。

さて、日々プロテインを片手にトレーニングに励まれておられる皆さまの中にも、アルコールが好きな方は沢山いらっしゃるでしょう。

「いや、アルコールを飲んだら筋肉が分解されると聞いた!」、「そもそもアルコールを飲むときにプロテインを飲んでいいの?」、中にはトレーニングを機に断酒を決断した方もいるかもしれません。

そんな皆さまの疑問を、現在報告されている研究を紐解きながら解説します。また、アルコール代謝と栄養素について解説しながら、「二日酔いになりにくいお酒の飲み方」、「プロテインの活用法」までご紹介しましょう。

お酒に「強い?」「弱い?」はなにで決まるのか

お酒に「強い?」「弱い?」はなにで決まるのか

ボディビルダーのような鍛えた身体の人(筋肉が発達している人)は、お酒に強いというイメージを持たれている方がいらっしゃるようです。

しかしながら日頃から鍛えていることと、お酒に強いかどうかはまったく関係ありません。ひとついえるとするなら、体格が大きい人のほうが、小さい人に比べて、同じ量のアルコールを飲んだ場合に血中アルコール濃度が低くなることは考えられます。

お酒に「強い」「弱い」は、アセトアルデヒド脱水素酵素といって、アルコールを分解する酵素があるかないか、もしくはしっかり働いているかそうでないかの違いです。日本人は、とくにこのアセトアルデヒド脱水素酵素の欠損率が高く、お酒に弱い人が多いのです。

一方、ロシアやドイツなどヨーロッパ系の人種は、この酵素の欠損がないといわれています。つまり酵素がしっかり働いているため、ビールやウォッカをがぶ飲みしても平気なのです。

アルコールで筋肉崩壊するのか?

アルコールで筋肉崩壊するのか?

アルコールとホルモンについて

それでは本題の「アルコールで筋肉が崩壊するのか?どうなのか?」に入りましょう。結論から申しますと、崩壊するとまではいいませんが、筋肉の分解を促進する可能性はありそうです

まず筋肉の合成・分解には、たくさんのホルモンが関与しています。これらホルモンの分泌がアルコールによって抑制・促進されることがわかっています。その代表的なホルモンがコルチゾールテストステロンです。

その他、DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロン)通称「若返りホルモン」などがあります。これらのホルモンは、体内でさまざまな働きをしており、筋肉に着目すると以下のような働きがあります。

コルチゾール「別名:ストレスホルモン」

コルチゾールは、筋肉を分解してエネルギーを産生する働きがあり、副腎皮質から分泌されるホルモンのひとつです。ストレスを受けたときに分泌が増えることから「ストレスホルモン」といわれています。

人体にとって、エネルギーが不足することもストレスの一種。コルチゾールは、エネルギーが不足していると察知したら、肝臓での糖新生や脂肪組織での脂肪分解、もちろん筋肉にもエネルギーを産生するように働きかけるので筋肉が分解されるのです。

※糖新生:ブドウ糖以外の物質から糖の代用となるエネルギーを産生すること。

テストステロン「別名:男性ホルモン」

テストステロンには、筋肉の合成促進・分解抑制する働きがあります。筋肉細胞の中で、タンパク質の合成を促進、分解を抑制するように働きかけているので、テストステロンが多いと筋肉合成に有利というわけです。

DHEA-S「別名:若返りホルモン」

DHEA-Sには筋肉を維持し、脂肪燃焼を高める働きがあります。デヒドロエピアンドロステロンという難しい名前であまり聞きなれないホルモンですね。主に副腎から分泌され、男性ホルモンや女性ホルモンの材料でもあります。

炎症をおさえて免疫を高める働きや、インスリンの働きを助けたり、動脈効果を予防することから「若返りホルモン」といわれています。

アルコール・ホルモン・筋肉について報告されている研究

アルコールとホルモンの研究は、1970年代頃までさかのぼり随分昔の研究となります。しかしラットの研究において、アルコールとホルモンの関係が明らかとなっています。

アルコール(実験ではエタノールを使用)を摂取したラットの肝臓では、アンドロゲン(男性ホルモン)からエストロゲン(女性ホルモン)の変換が増加しました。よって血中のエストロゲンは上昇しましたが、アンドロゲンの材料となるテストステロンは低下してしまったのです。

これらのことから、男性ホルモンは生殖機能にも大きく関与しているため、アルコールを飲むと生殖機能に弊害が生じる可能性があるともいわれています[1]

またテストステロン(男性ホルモン)は、筋肉の分解をおさえ、合成を促すホルモンでもあります。体内を循環している量が減ることで、筋肉合成にもなにかしらの影響があるかもしれないのです。

男性ホルモン(アンドロゲン)と女性ホルモン(エストロゲン)、テストステロンの関係

2002年に発表された人間の研究では、20~27歳の成人(男女)を対象に、アルコールを飲んだグループと飲んでいないグループでホルモンに変化があるか研究しました。

研究結果の一部をまとめた下記の図をご覧ください。男女で異なる結果となりました。

男性では、アルコールを摂取したグループでテストステロン(男性ホルモン)が低下し、プロゲステロン(女性ホルモン)が上昇しました。また、筋肉の分解を促進するコルチゾールが上昇しました。DHEA-Sは、アルコールグループと飲んでいないグループで変化はみられませんでした。

男性がアルコールを飲んだ場合のホルモンの変化

一方女性では、アルコールを摂取したグループのほうがテストステロン(男性ホルモン)が上昇し、プロゲステロン(女性ホルモン)に変化は見られませんでした。

コルチゾールについては、男性同様に上昇していました。さらにDHEA-S(若返りホルモン)がアルコールを摂取したグループで上昇していました[2]

女性がアルコールを飲んだ場合のホルモンの変化

ここまでをまとめると、アルコールを摂取した際のホルモンの作用は男女で異なること。

男性がアルコールを摂取すると、テストステロン(男性ホルモン)が低下し、コルチゾールが上昇する可能性があり、筋肉合成が低下し分解が促進するかもしれない。

女性は、テストステロンがむしろ上昇しており男性ほど筋肉に対するダメージは少ないように思えますが、筋肉の分解を促進するコルチゾールが上昇しているため、安心はできないでしょう。

アルコール・mTOR・筋肉について報告されている研究

筋トレ大好きな方なら一度は聞いたことがある、筋肥大のキーファクター「mTOR(エムトール)」。mTORは筋トレに反応して筋肉の合成を促進する働きがあるといわれており、筋肉合成に重要な物質です。

このmTORとアルコールの影響について調べた研究をご紹介します[3]。運動する65分前に標準化された食事の代替となるようなドリンクを摂取し、運動(スクワット)を実施。運動後(10~20分後)にアルコールもしくは水(プラセボ)を摂取。mTORについては運動前、3時間後、5時間後に調べました。

アルコール・mTOR・筋肉について報告されている研究

Duplanty, A. A.ら(2017)図1より引用[3]

結果男性では、摂取から3時間後の時点で、プラセボを摂取したグループではmTORは上昇していましたが、アルコールを摂取したグループでは低下していました。

女性は、アルコールとプラセボのグループで差はみられませんでしたが、運動前と比較して3時間後にmTORが増加していました。

簡単にまとめると男性は、アルコール摂取をするとmTORに影響を与えるが、女性は影響をしないことがわかったのです。少なくとも男性においては、運動後の飲酒はおススメできません。

アルコール・mTOR・筋肉について報告されている研究

Duplanty, A. A.ら(2017)図2 Aより引用[3]

アルコール・mTOR・筋肉について報告されている研究

Duplanty, A. A.ら(2017)図2 Bより引用[3]

アルコールは適量にとどめる

ここまでの研究報告から、お酒も筋トレも大好きな方は落ち込む内容となりました。そんな方に朗報です。今回、ご紹介した研究の他いくつか調べると、ちょっとだけ嬉しいことがわかりました。それは「お酒の量」です。

テストステロン(男性ホルモン)が劇的に減少した研究の多くは、アルコール摂取量100~200gを超えているものが多く、これはビール5~9杯に相当します。また適量であれば筋肉合成にそれほど影響はないという報告もあります[4]

つまり「お酒は適量にとどめましょう!」です。この適量とは、1日平均純アルコールで20g程度です[5]。また肝臓にも休息が必要です。休肝日を週2日程度設けるとさらによいでしょう。

アルコール 度数

プロテイン(タンパク質)とアルコールの食べ方・飲み方

プロテインとアルコールの飲み方について

それでは「いかに筋肉分解をさせずにアルコールを楽しむか?」について考えていきましょう。

アルコールを飲むなら食事をとる

炭水化物やタンパク質などの栄養素は、胃で消化、腸で吸収されます。しかしアルコールは胃と腸で吸収されます。

よって「すきっ腹にビール」なんてことをしていると、血中アルコール濃度がいっきに上昇してしまうのです。アルコール濃度が高まると、前述したようなホルモンの影響を受けやすくなるので、お酒を飲むときは、必ず食事も一緒にとりましょう。

なにを食べるか?

炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよく食べることがベストです。

アルコール摂取時は、アルコールを解毒しようと身体は必死に働いているわけで、その原動力となる栄養源である米や麺などの炭水化物をしっかり取り入れることが大切になります。

お酒を飲むと、〆にお茶漬けやラーメンが欲しくなったりしませんか?もしかすると身体からのサインなのかもしれませんね。

たまにお酒を飲むからといって、炭水化物を控える方がいます。しかしかえって身体にはダメージですし、筋肉分解を促進してしまう可能性があるので注意が必要です。

もちろんタンパク質の摂取も重要です。健康的な身体の維持には、血中アミノ酸濃度を一定に保つことが大切になります。お酒の席でも枝豆やお刺身、焼き鳥などタンパク質をしっかり摂取しましょう。

またアルコール摂取時には、ビタミンB1の摂取も重要です。そのため豚肉やうなぎ、レバーなどビタミンB1を豊富に含んだ食品を「おつまみ」にすると、タンパク質・ビタミンB1を同時に摂取できるので一石二鳥です。

さらにその他のビタミン摂取も大切です。ビタミンがあることで身体は円滑にまわります。ビタミンは、肉や魚などのタンパク質、野菜に豊富に含まれているため野菜もしっかり食べましょう。栄養をしっかりとって、翌朝に引きずらない、上手なお酒付き合いをしましょう。

なかなか食べられなかった場合

会話が弾んで、接待で……など理由はさまざまですが、思うように飲み会の席で栄養がとれなかった場合は、帰宅後におにぎりと1杯のプロテインをおススメします。

炭水化物であるおにぎりは栄養源として欠かせません。市販されている多くのプロテインには、アミノ酸だけではなくビタミンが含まれているので非常におススメです。

またアルコール摂取は脱水を招きがちですので、水分は必ず摂取しましょう

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まとめ

今回は、アルコール摂取と筋肉についてお話しましたがいかがでしたか?

少なくとも、アルコールを摂取することでホルモンやその他の物質がなにかしらの影響を受けて、筋肉の分解が促進される可能性があるとわかりました。しかしながら、それは量に気をつけることで回避できることもわかました。

お酒はデメリットばかりではありません。ストレス緩和や円滑なコミュニケーションなどメリットもあるからこそ、皆さんお酒が大好きなのではないでしょうか。

日々、ストイックに食事・運動の管理をされているなら、なおさらストレス発散も必要でしょう。厳しい食事管理の継続は困難です。それよりも少しだけ息抜きをしながら、バランスのよい食事と運動習慣を長く継続することのほうが、健康な身体を作り上げる秘訣ではないでしょうか。

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参考文献

1. Chung, K. W. (1990). Effects of chronic ethanol intake on aromatization of androgens and concentration of estrogen and androgen receptors in rat liver. Toxicology, 62(3), 285-295.

2. Frias, J., Torres, J. M., Miranda, M. T., Ruiz, E., & Ortega, E. (2002). Effects of acute alcohol intoxication on pituitary–gonadal axis hormones, pituitary–adrenal axis hormones, β-endorphin and prolactin in human adults of both sexes. Alcohol and Alcoholism, 37(2), 169-173.

3. Duplanty, A. A., Budnar, R. G., Luk, H. Y., Levitt, D. E., Hill, D. W., McFarlin, B. K., … & Vingren, J. L. (2017). Effect of Acute Alcohol Ingestion on Resistance Exercise–Induced mTORC1 Signaling in Human Muscle. The Journal of Strength & Conditioning Research, 31(1), 54-61.


4. Barnes, M. J., Mündel, T., & Stannard, S. R. (2011). A low dose of alcohol does not impact skeletal muscle performance after exercise-induced muscle damage. European journal of applied physiology, 111(4), 725-729.

5. 厚生労働省. アルコール. 閲覧2020-08-31, https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html

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坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
この記事を書いた人
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。

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