タンパク質の重要性を理解してくると、せっかくなら効率よく摂取したいと思いますよね?そうすると気になってくる指標のひとつが「アミノ酸スコア」かもしれません。
たまに、たくさんのアミノ酸を摂取したいので、この商品の「アミノ酸スコア」を教えてほしいという方がいらっしゃいます。
「アミノ酸スコア」とはタンパク質の『質』を確認するための指標であり、たくさんの種類のアミノ酸は摂れるかもしれませんが、『量』がたくさん摂れるかを測るという考えはちょっと違うかもしれません。
正しく理解するためにも、「アミノ酸スコア」について詳しくみていきましょう。
アミノ酸とタンパク質
まずは、アミノ酸とタンパク質の関係を整理しましょう。ヒトの身体の材料となる重要な栄養素のひとつがタンパク質であり、そのタンパク質を合成しているのがアミノ酸です(図)。

一口に「アミノ酸」「タンパク質」と説明していますが、アミノ酸は数百もの種類が存在し、そのアミノ酸の種類や配列・結合の仕方を変えることで、身体に必要な多くの種類のタンパク質を合成しています。
アミノ酸の種類
そこで、身体を構成するために必要とされる今回の主役、20種類の「アミノ酸」を紹介していきます。

身体を作るための20種類のアミノ酸は、体内では合成不可能な「必須アミノ酸」9種類と体内でも合成可能な「非必須アミノ酸」11種類に分けることができます。
アミノ酸スコアとは
では、本題の「アミノ酸スコア」について説明していきます。
アミノ酸スコアとは、スコアというだけに、タンパク源として、主に体内で合成不可能な必須アミノ酸がバランスよく含まれているかを点数化して表したものなのです。
タンパク質1g当たりに含まれるべき各アミノ酸の量は決まっています。それぞれその基準量に対してどれくらいが含まれているかを計算し、基準以上に含まれているものは全て100点とみなされます。
一方で、基準に満たないものは、何割にまで達してるかが計算されて点数がつけられます。その最低点がアミノ酸スコアになるのです。極端なことを言えば、8種類が満点でも1種類が0点なら0点というスコアをつけられてしまうのです!
また、全てのアミノ酸が200点以上だとしても、アミノ酸スコアは100点としか表されません。
赤点ギリギリの食品も存在します。どうして点数が悪いとよくないのでしょうか?下の画像(桶)をご覧ください。

一つひとつの板をアミノ酸に見立てています。左の図は、すべてのアミノ酸が十分に満たされており、桶の水(タンパク質)がこぼれないようになっています。つまり体内で十分なタンパク質をつくれる状態です。
一方右の桶はバリン、トレオニン、リジンが不足。一番少ないリジンの高さまでしか水(タンパク質)は溜まってくれません。どんなに他のアミノ酸がそろっていようと、リジンが極端に少ないだけで十分なタンパク質が合成できないのです。
お米や小麦などの穀類はリジンの含有量が少ないといわれています。このような必須アミノ酸が不足している食品だけを栄養源にしていると、栄養不足となってしまいます。
発展途上国のガーナではトウモロコシ粥が代表的な離乳食です。しかしながらトウモロコシ粥だけでは十分な栄養が補給できないため、子どもの低身長や貧血などの栄養不良が問題となっています。
食品中のアミノ酸スコア
食品名 | イソロイシン | ロイシン | リジン | 含硫アミノ酸※1 | 芳香族アミノ酸※2 | スレオニン | トリプトファン | バリン | ヒスチジン | アミノ酸スコア |
基準※3 | 30 | 59 | 45 | 22 | 38 | 23 | 6 | 39 | 15 | - |
精白米 | 46 | 95 | 41 | 56 | 110 | 45 | 17 | 66 | 30 | 91 |
食パン | 42 | 81 | 23 | 42 | 96 | 33 | 12 | 48 | 27 | 51 |
コーンフレーク | 44 | 170 | 10 | 44 | 110 | 38 | 6 | 55 | 33 | 22 |
納豆 | 54 | 89 | 78 | 40 | 110 | 46 | 17 | 59 | 34 | 100 |
鶏ささみ | 59 | 97 | 110 | 47 | 90 | 58 | 15 | 61 | 39 | 100 |
まぐろ | 54 | 93 | 110 | 48 | 88 | 58 | 14 | 60 | 69 | 100 |
エビ | 43 | 78 | 88 | 41 | 80 | 43 | 10 | 46 | 22 | 100 |
牛乳 | 58 | 110 | 91 | 36 | 110 | 51 | 16 | 71 | 31 | 100 |
アミノ酸組成によるタンパク質1g当たり(mg)で表示
※1 含硫アミノ酸:メチオニン+シスチン
※2 芳香族アミノ酸:フェニルアラニン+チロシン
※3 アミノ酸評点パターン(2007年)18歳以上
表の緑字部分が、先ほど説明した表現で言うところの、いわゆる基準点に当たります。また、食品ごとに含まれる各アミノ酸量(mg/タンパク質1g当たり)が記載してありますが、これが青字以上であれば100点です。全て100点のものがアミノ酸スコア100ということになります。
そして、残念ながら基準値に満たないものは、赤字で記載してあります。この場合には、基準値(青字)に対してどの程度満たしているかの割合を算出します。もし、赤点が複数ある場合には、全ての割合の中で一番低い数値がアミノ酸スコアとなります。また、その一番低い数値のアミノ酸のことを制限アミノ酸といいます。 精白米の場合であれば、アミノ酸スコア91(制限アミノ酸はリジン)となります。
この点数だけを見ると、この中ではコーンフレークが一番の劣等生のように見えますよね。だからといって、食べてはいけないということではありません。コーンフレークには、トレーニーの多くが好んで摂取するロイシンがお肉などよりも多い割合で含まれています!(ただし、絶対量として多く含まれているかはこの表からは判断できませんのでご注意下さい。)
アミノ酸スコアが100のものを摂取するに越したことはないですが、100でないものを避けるのではなく、100でないものは補ってあげることが重要なのです!
上記以外の食品のアミノ酸スコアをいくつかピックアップしてみます。
食品 | アミノ酸スコア |
---|---|
牛肉 | 100 |
豚肉 | 100 |
鶏肉 | 100 |
鶏卵 | 100 |
あじ | 100 |
チーズ | 100 |
ヨーグルト | 100 |
大豆 | 100 |
パスタ(乾燥) | 49 |
中華麺(生) | 53 |
うどん(生) | 51 |
蕎麦(生) | 84 |
じゃがいも | 83 |
にんじん | 76 |
しめじ(生) | 79 |
WHO/FAO/UNU 報告[2]、文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)[3]より算出
100点を獲得している食品は、主に肉や魚といった動物性食品です。実は、動物も人間とおなじ20種類のアミノ酸でつくられています。穀類の中でもとくに小麦やトウモロコシはリジンやトリプトファンが少なく、スコアが低くなっているのです。
ここまで読んでくださった方は、冒頭で、アミノ酸スコアとは『量』がたくさん摂れるかを測るための指標ではなく、タンパク質の『質』を確認するための指標とお伝えした理由が、だんだん分かってきていただけたのではないでしょうか?
身体に必要なタンパク質をつくるためには、たくさんのアミノ酸を摂ることも重要ですが、より効率的な身体づくりを目指すのであれば、各アミノ酸をバランスよく摂取することも忘れないようにしましょう。そのために「アミノ酸スコア」もぜひ参考にしてみてください。
GronGプロテインのアミノ酸スコア
せっかくなので、この機会にGronGのプロテインのアミノ酸スコアについても紹介しておきたいと思います。プロテイン選びや、普段の食事との飲み合わせ等の参考にしていただければ幸いです。
食品名 | イソロイシン | ロイシン | リジン | 含硫アミノ酸※1 | 芳香族アミノ酸※2 | スレオニン | トリプトファン | バリン | ヒスチジン | アミノ酸スコア |
基準 | 30 | 59 | 45 | 22 | 38 | 23 | 6 | 39 | 15 | - |
ベーシックシリーズ | 59 | 104 | 87 | 40 | 62 | 68 | 18 | 59 | 19 | 100 |
スタンダードシリーズ | 59 | 104 | 87 | 40 | 62 | 68 | 18 | 59 | 19 | 100 |
パフォーマンスシリーズ(WPI) | 71 | 114 | 103 | 51 | 64 | 78 | 19 | 68 | 19 | 100 |
ウェイトアッププロテイン | 58 | 95 | 87 | 43 | 57 | 64 | 19 | 50 | 17 | 100 |
ソイプロテイン | 53 | 87 | 67 | 27 | 95 | 41 | 14 | 54 | 28 | 100 |
ジュニアプロテイン | 65 | 105 | 97 | 47 | 63 | 71 | 21 | 56 | 19 | 100 |
ヘンププロテイン | 37 | 61 | 35 | 48 | 68 | 32 | 9 | 46 | 25 | 78 |
アミノ酸組成によるタンパク質1g当たり(mg)で表示
※1 含硫アミノ酸:メチオニン+シスチン
※2 芳香族アミノ酸:フェニルアラニン+チロシン
※3 風味展開のあるシリーズは、全てココア風味の数値を記載しています
乳清たんぱく(ホエイプロテイン)、大豆たんぱく(ソイプロテイン)は、原料がそれぞれ牛乳と大豆なので、食品のアミノ酸スコア(牛乳と納豆)をみても分かるように基本的にはアミノ酸スコア100の商品が多いかと思います。
商品設計(原料の配合)によっては、絶対ではありませんので、気になる方はメーカーに確認することをおすすめします。GronGプロテインにおいては、唯一ヘンププロテインがアミノ酸スコア78で100ではなく、制限アミノ酸はリジンです。
身体の材料となるアミノ酸は、ヒトだけではなく、動物も同じく20種類なので、動物性の食品は比較的バランスよくアミノ酸が配合されています(アミノ酸スコア100)ので、迷ったら動物性食品を選ぶと覚えておくのも良いでしょう。
ただし、他の栄養素バランスにおいては、別途考える必要があるのでご注意くださいね。
まとめ
栄養素には適材適所があり、多くの栄養素をバランスよく摂り入れることがポイント。自身にとって必要な栄養素を知り、選択することが大切ではないでしょうか。
アミノ酸スコアが悪いからといって、必ずしもその食品や商品がダメなわけではありません。
アミノ酸スコアが100のものだけが効率的なわけではなく(もちろん、効率的なことは多いですが)、そうでない場合でも、苦手分野(制限アミノ酸)を補ってあげるようにさえすれば良いので、それも効率的にタンパク質を摂取する方法のひとつです!
アミノ酸スコアについて、正しくご理解いただき、今後の食品およびプロテイン選びの参考にしていただければ幸いです。
参考文献
- 文部科学省.日本食品標準成分表(八訂)増補2023年.
- World Health Organization, & United Nations University. (2007). Protein and amino acid requirements in human nutrition (Vol. 935). World Health Organization.
- 文部科学省. 日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編 第2章 第4表.
この記事を書いた人

坂口 真由香
管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。