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筋肉の材料となるだけではない!アミノ酸に期待できるメリット

坂口 真由香
最終更新日:2022.07.19
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

筋肉の材料となることだけがアミノ酸の働きだと思っていませんか?

人体の20%はタンパク質、つまりアミノ酸でつくられています。筋肉にかぎらず、頭から足先まですべてアミノ酸で構成されているのです。

また体内での働きもさまざまあり、生きていくうえで欠かせないアミノ酸。今回のコラムでは、「アミノ酸の働きやメリット」についてご紹介します。

スタミナアップを目指したトレーニングやスポーツをする方に

アミノ酸は体内で身体の材料となるだけではなく、実はエネルギー補給にもなります。通常、主にブドウ糖や脂質をエネルギー源として利用。しかしながら空腹時や運動時などエネルギーが不足する場合、アミノ酸もエネルギーとなり、利用されます。

またアミノ酸の中でもBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)がエネルギー源として有用とされています。

したがって持久力アップを目指して運動をしている方には、ブドウ糖の補給に加えてBCAAやアラニンなどのアミノ酸の摂取も役立つと期待されてるのです。

美容のために

アミノ酸は美容面でも力を発揮します。
なぜなら、普段私たちがお手入れしている、肌や爪、髪の毛などもアミノ酸を材料としてできているからです。

できればいつまでも若く美しくあり続けたいですよね?その秘密がアミノ酸に隠されていそうです。さっそく、美容とアミノ酸のさまざま関係をみていきましょう。

肌の構成成分であるアミノ酸

肌は大きく分けて表皮、真皮、皮下組織で構成されています。さらに表皮よりも内側の部分は生きた細胞で、基底層では常に新し細胞がつくられているのです。新しい細胞は次々と上に押し上げられながら角層に到達。角層に達してからさらに14日後、垢となって肌からはがれ落ちるというわけです。

この一連の流れをターンオーバーといい、約28日周期といわれています。このサイクルが円滑におこなわれ、古い細胞が剥がれ落ち、新しい細胞へと生まれかわります。しかしながら年齢や紫外線などの刺激によってリズムが崩れたり、周期が長くなってしまうのです。そのため、紫外線対策や保湿などの日々のケアはしっかりと続けながらも、新しい細胞の材料の一部であるアミノ酸の補給も忘れてはいけません。

スキンケア効果

うるおい成分「NMF」の材料であるアミノ酸

美しくあるために重要なことのひとつとして「うるおい」があげられるかと思います。

私たちの身体の約60%は水分です。この水分を保つためにも肌が重要な役割をはたしています。

皮膚の角質層にNMF(Natutal Moisturizing Factor)と呼ばれる天然保湿因子が存在します。このNMFの約半分はアミノ酸と、アミノ酸のひとつであるグルタミン酸からできるピロリドンカルボン酸(PCA)で構成されています。

つまりうるおい成分の材料としてもアミノ酸はなくてはならない存在なのです。

美容に欠かせないコラーゲンの材料もアミノ酸

若く美しくいるために!と期待を込めて、コラーゲン配合の化粧品を使ったことありませんか?

若いときは、紫外線などの刺激を受けても新しいコラーゲンを産生できます。しかし加齢とともに壊れた部分を元に戻すほどのコラーゲンは産生されなくなり、壊れて元通りにできなかったコラーゲンが長年にわたって蓄積された結果、鏡を見たときに年齢を感じてしまう方が多いかと思います。

そのため、コラーゲンの補給を求めて、コラーゲン配合の化粧品を使用している方もいらっしゃるかと思います。しかし、化粧品においてコラーゲンは保湿成分として配合されており、保湿としては重要ですが、減ってしまったコラーゲンの補給としての役割はあまり見込めません。

つまり、コラーゲンの材料でもあるアミノ酸を摂取する必要があるのです。コラーゲンはプロリンというアミノ酸が多くを占めているといわれていますが、皮膚だけではなく、靭帯や骨、血管などさまざまな組織の構造にもかかわっています。さまざなところでコラーゲンは利用されるため、肌に優先的に供給することは難しいとされています。そのため日頃からアミノ酸をしっかり補給することが大切です。

また、安定した強いコラーゲンと相性がよいされているのがビタミンCやアミノ酸の一種アルギニンです。アルギニンには、そのほかにめぐり良いとされる成分で、見た目の美しさにも役立つといわれており一石二鳥のため、ぜひ取り入れていきたいですね。

紫外線から身体を守るアミノ酸

美容の大敵といえば、紫外線ですが、人間には紫外線から身を守るための機能が備わっています。それがメラニンなのです。メラニンも美容においては敵と思われがちですが、実は日光を浴びすぎは肌を守るために存在しているのです。

メラニンは大きく黒色メラニンと黄色メラニンに分類されます。黒色メラニンは、アミノ酸の一種チロシンからつくられます。この黒色メラニンにチロシンが混ざったものを黄色メラニンといい、2種のメラニンの割合で肌の色が決まるのです。

通常メラニンは紫外線からの保護として重要なのですが、年齢やその他、なんらかの原因によって過剰にメラニンが生成されてしまうことがあります。そのため、美容の敵と思われてしまうのですが、アミノ酸の一種であるシステインは、還元成分として美容サポートとなるためバランスをとっています。

髪にも存在するアミノ酸

髪の毛はキューティクル、コルテックス、メデュラから構成されており、それぞれがアミノ酸からできています。 キューティクルは毛先の先端にむかって鱗状に重なって表面を覆っており、内部の組織を保護しています。コルテックスは、細い繊維状のタンパク質であるケラチン繊維が束になったものです。メデュラは比較的やわらかいタンパク質でできています。

髪はさまざまなタンパク質から構成されています。中でも多いのがケラチンと呼ばれるタンパク質。ケラチンタンパク質の特徴は、ほかのタンパク質にはほとんど含まれていないシスチンと呼ばれるアミノ酸が含まれています。

アミノ酸は、アミノ酸同士で手をつないで結合しタンパク質をつくりあげています。中でも強い結合といわれているのがジスルフィド結合(SS結合)。シスチンは硫黄元素(S)を持っており、SS結合ができます。

パーマはSS結合を逆手にとった手法です。SS結合をパーマ液によって切断し、ロットを巻きつけることでアミノ酸をずらし、別のアミノ酸と結合させて固定。さらにパーマ液で化学処理をおこない、しっかり結合させているのです。まさにパーマはアミノ酸の化学反応です。

また身近なところでは、寝癖にもアミノ酸の水素結合が関わっています。水素結合は乾燥している状態ではある程度の強さを持っています。しかしながら水に弱いため、寝癖を水で濡らすことによって水素結合が切断され元に戻るというわけです。

お風呂あがりにしっかりヘアドライすることで水素結合が強くなり、キューティクルも引き締まるため理想的な髪に仕上がります。美容のためには、栄養と同じくらいブローテクニックが大切です。

刺激に負けない身体づくりのために

健康維持にとって、身体を守ることは重要です。

グルタミンは消化管粘膜にも存在し、エネルギー源となりながら身体の守りの要であり、外敵に負けない身体づくりが期待できるといわれています。またアルギニンも、グルタミン同様に健康維持のためのバリアとして期待されています。

リラクゼーションタイムに

仕事や家事など、忙しさに追われていませんか?休みは取れてますか?休息時間におすすめなのがセロトニン。セロトニンもアミノ酸の一種トリプトファンから作られています。

楽しい毎日の元気チャージ「ドーパミン」。ドーパミンもアミノ酸の一種フェニルアラニンからつくられています。

また、お休みタイムにおすすめなのがグリシンです。

しっかりと休んで、質の良い睡眠をとることが日中の眠気改善や疲労感の軽減ができるでしょう。また美のゴールデンタイムに質の良い眠りができれば美容効果も期待できるのではないでしょうか。

まとめ

アミノ酸は身体のいたるとことの材料となっています。常に体内でアミノ酸が活躍し、古いものは捨て、新しいアミノ酸で身体ができています。これが毎日の食事からアミノ酸を補給しなければならない理由です。

今回ご紹介したアミノ酸の働きやメリットはほんの一部にすぎません。私たちが想像する以上にアミノ酸は体内で働いており、生命活動に欠かせない栄養素なのです。

参考文献

櫻庭雅文(2019)「アミノ酸の科学」. 東京,講談社.

味の素株式会社(2017)「トコトンやさしい アミノ酸の本」. 東京,日刊工業新聞

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坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
この記事を書いた人
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。

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