クレアチンはダイエットに活用できる栄養素なのか?
ボディビルダーやトップアスリートの中で愛用されるクレアチン。最近では高強度なトレーニングに励むトレーニーの中でも人気な栄養素となってきました。
トレーニング上級者が愛用しているのなら「ダイエットにもよいのでは?」と疑問に思ったことはありませんか?
今回のコラムでは「クレアチンはダイエットに活用できるのか」について詳しく解説します。
クレアチンとは
クレアチンは肝臓や腎臓、膵臓でアルギニンやグリシン、メチオニンから合成される有機酸の一種です。体内のクレアチンの60%がクレアチンリン酸として存在し、そのほとんとが筋肉内に蓄えられているのです。
日常生活の動作やスポーツなどで筋肉を動かすためにはエネルギーが必要で、ATPと呼ばれるエネルギーを利用します。
ただし筋肉に貯蔵されているATPはわずかであるため、運動(筋肉の収縮)を継続するために3つのエネルギー代謝回路が備わっています。この代謝回路はうまくできており、運動の強度や時間によって使用する経路が異なるのです。
3つのエネルギー代謝回路
ATP-CP系(クレアチンを利用)
筋肉にはATPよりもクレアチリン酸が多く蓄積されています。このクレアチンリン酸を利用してエネルギーとする経路が、「ATP-CP系」です。この経路は筋肉内のATPが分解されて減少すると、瞬時にクレアチンをエネルギー源とするのです。
筋肉にはATPの5倍~6倍の量ものクレアチリン酸が蓄えられているものの、瞬時にエネルギー源として使用されます。そのためATP-CP系のみではエネルギーとして不十分のため、長時間の運動には不向きです。よってウェイトリフティングなど、数秒間で瞬発力を要する運動時に使われるエネルギー源なのです。
解糖系(無酸素性解糖系)
食事から糖質を摂取すると筋肉と肝臓にグリコーゲンとして蓄えられます。これらの糖質をエネルギー源とする経路が「解糖系」です。
解糖系には酸素を必要としない経路と酸素を必要とするものがあります。「無酸素性解糖系」は酸素を利用せずに糖質からエネルギーをつくります。そのためつくられるATPの量も少なく、筋トレや短距離走といった30秒~60秒程度の運動で利用されるのです。
有酸素系
「有酸素系」は酸素を使ってエネルギー代謝をおこなう経路です。有酸素系は解糖系よりも多くのステップを経てATPの合成をおこなうため、大量のATPを合成でき長時間の運動時に働きます。
ジョギングやウォーキングといったATPが緩やかに消費される運動では、酸素を取り込みながら時間をかけてATPを再合成できるため、長時間の運動が可能となるのです。
クレアチンはダイエットに有効か
それでは本題のクレアチンがダイエットに有効かどうか考えてみましょう。
運動中のエネルギー源となる
運動やトレーニングの実施時間、強度で利用されるエネルギー経路は変わってきます。ダイエットをするにあたり、どのような運動をするかによってクレアチンが利用されるかどうかが決まります。
ウエイトリフティングなど瞬発力を要するようなトレーニングであればクレアチンがエネルギー源となるため、クレアチンの補給が大切になってくるでしょう。
一方でジョギングやウォーキングといった酸素を利用する運動では、「有酸素系」のエネルギー回路から作られたATPを利用します。有酸素系が働く運動においてクレアチンは必要ないのです。
つまりクレアチンを必要とする運動とそうでない運動があります。自身の運動時間や強度を振り返り、クレアチンが必要かどうか考えみてください。
運動による筋肉増加のサポート
クレアチン自体に筋肉を増加させたり脂肪を燃焼する働きはありません。しかしながら高強度のトレーニングや瞬発力を必要とする運動でより長く強い筋力を発揮したい場合にはクレアチンをチャージしておくことをオススメします。
いつもより長時間トレーニングに励むことは筋肉の成長につながります。そして、筋肉が増えることで代謝が上がり、脂肪燃焼の高まりを期待できるのではないでしょうか。
クレアチンで体重が増える?
クレアチンは筋肉中に存在し、水分補給をサポートするため、筋肉が水分を含むため、一時的にパンプアップします。クレアチンローディングをおこなうと、体重あたり1%~2%の水分増加を認めることがあるといわれています[1]。
クレアチン特有の性質を太ると勘違いしてはなりません。「スナック菓子を食べて脂肪が増えた」とは理由が異なります。体重が増えたのは筋肉にエネルギーと水分が蓄えられた結果であり、運動して筋肉を鍛えるほど水は抜けるといわれています。
まとめ
どんな運動をするかによって利用されるエネルギーが異なるとわかりました。またクレアチンは脳にも存在し重要な働きをするとわかっており、運動時だけでなく、仕事や勉強を頑張る際にも大切な栄養素です。
バランスの良い食生活をしていると1g~2g摂取できるといわれており[2]、これは筋肉に貯蔵される量の60%~80%に相当するといわれています。肉や魚といったタンパク質を欠かさず摂り入れるといいでしょう。
参考文献
石井直方(2020)「スポーツ科学の基礎知識 筋肉の機能・性質パーフェクト事典」
1. Powers, M. E., Arnold, B. L., Weltman, A. L., Perrin, D. H., Mistry, D., Kahler, D. M., … & Volek, J. (2003). Creatine supplementation increases total body water without altering fluid distribution. Journal of athletic training, 38(1), 44.
2. Kreider, R. B., Kalman, D. S., Antonio, J., Ziegenfuss, T. N., Wildman, R., Collins, R., … & Lopez, H. L. (2017). International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14(1), 1-18.