運動のパフォーマンスを維持するためには、適切な水分と栄養素の補給が不可欠です。
特に筋肉中のアミノ酸濃度を一定に保つことはトレーニーの間では常識になりつつありますね。
そして摂取しはじめて気になるのが「タイミング」です。せっかく摂取している栄養素。できればタイミングよく摂取したいですよね。
トレーニーであれば体重×1.4g〜2.0gのタンパク質摂取は心がけておきましょう[1]。
タンパク質とアミノ酸は、消化に要する時間が異なります。トレーニング上級者であれば自身のトレーニングと栄養素が吸収されるまでの時間を計算し、日々の食事管理をおこなっていることでしょう。
これからBCAAを摂り入れます!という方もご安心ください。今回のコラムでは、タンパク質とアミノ酸の違い、そしてBCAAの効果的な飲み方・タイミングを解説します。
なぜBCAAが必要か?

BCAAとはバリン、ロイシン、イソロイシンの3つのアミノ酸を指します。枝分かれした構造上の特徴から分岐鎖アミノ酸あるいはBCAA(branched-chain amino acid)と呼んでいます。これら3つのアミノ酸は体内で合成できない必須アミノ酸に該当するため、食事から摂り入れなければなりません。
運動中、糖質や脂質などもエネルギー源として使われますが、これらが減ってくるとアミノ酸が利用されます。とくに筋肉ではBCAAが効率的にエネルギーとして使われます。
このほか、トレーニングによる筋肉の成長やコンディション準備などBCAAの活躍は多岐にわたり、運動中に摂り入れたい栄養素の代表といってもいいでしょう。
アミノ酸の桶理論

アミノ酸の桶理論をご存じでしょうか。ヒトの身体にとって必要なアミノ酸は全部で20種類。そのうち必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分けられます。
体内で筋肉や肌などの組織を作る際に、これら20種類のアミノ酸すべての摂取量が十分でないと、特定のアミノ酸ばかり摂取したとしても身体は効率よくタンパク質を合成することができません。
前提として、タンパク質を中心とした栄養素のバランスが取れた食事を摂れているからこそ、サプリメントとしてのアミノ酸が活用しやすくなるわけです。
トレーニーであれば体重×1.4g〜2.0gのタンパク質摂取は心がけておきましょう1)。
BCAAの摂取タイミング
前提を考慮した上で、BCAAを活用しながら身体づくりのサポートとして取り入れるためには、適切なタイミングと飲み方が重要になってきます。
下記の図からアミノ酸の特性を考慮した計画を立ててみましょう。

朝の補給
夜から朝にかけては絶食時間が長く、体内に蓄えられているエネルギーやアミノ酸が低下している状態です。そこで朝にBCAAを活用するのがオススメです。
タンパク質は「朝・昼・夕」の食事で一定の割合で摂取したほうが、理想の身体づくりが期待できるといわれています[2]。とくに朝食はタンパク質が不足しがちです。お目覚めでBCAAをチャージし、いつもどおりに朝食を食べることでタンパク質をしっかり摂取できますね。
運動前
運動前にBCAAを摂取することで、骨格筋内に十分なアミノ酸を供給しておきましょう。筋肉へのエネルギー供給をサポートし、トレーニング中の持久力やパフォーマンスを維持するための準備ができます。アミノ酸は身体へ素早く吸収されやすいので、運動前30分〜1時間前にBCAAを摂取していただくのがおすすめです。
注意点は、1度に大量のアミノ酸を摂取するとお腹を下してしまう可能性があることです。 腸内のアミノ酸濃度が一気に高まると、身体は濃度を調整しようとして腸外から水分を取り込みます。腸内の水分量が多くなり、吸収しきれなかったアミノ酸と水分が排泄されるのです。したがって、1回分の摂取目安量は10g程度のBCAAを350ml〜450ml程度の水に溶かしておき、こまめに少しずつ飲んでいただくのがよいでしょう。
応用編としてもうひとつ。
これはトレーニングの強度に応じてになりますが、運動前に十分な食事を摂取できていない時や食事から時間が経過している場合、糖質と一緒にBCAAを摂取するのもおすすめです。
スポーツドリンクや果物のジュース、糖質のサプリメントであるマルトデキストリンなどと混ぜて飲むことでトレーニング時のエネルギー源である糖質、アミノ酸を合わせて摂取できますよ。
運動中~運動後
運動中にBCAAを摂取するパターンにはどのようなものが考えられるでしょうか。 例を挙げてみましょう。
①トレーニング、運動が長時間にわたる場合
アミノ酸プールといって、筋肉が一度にアミノ酸を蓄えられる量には限界があります。
一定の運動量を超えた場合、筋肉のエネルギー源であるアミノ酸は枯渇してしまうのです。 つまり、運動前に補給したBCAAをエネルギーとして使い切ってしまうと、新たに補給しない限り、身体は体内にある古いアミノ酸を再利用してエネルギーに変えようとします。
運動時間が1時間以上になる場合は、できるだけ運動中にもBCAAを補給して新しいアミノ酸を身体に供給するようにしましょう。
BCAAは消化にあまり時間がかからず、30分程度で血液中に到達するといわれています。
吸収時間を逆算し、運動前を目安に摂取しはじめると、運動するタイミングでBCAAが働くようにできるため、エネルギーとして利用されたり、運動による身体づくりのサポート役として活躍してくれるでしょう[3]。
繰り返しになりますが、パフォーマンス維持に役立てるには「こまめに水分とアミノ酸を補給し続ける」のが重要です。
②運動前の食事における栄養素バランスが十分でない場合
先述した通りトレーニング前に十分な栄養素を補給ができなかった場合は、あらかじめ筋肉中に貯蔵できているエネルギー量が限られるため、こまめにアミノ酸を補給する必要があります。トレーニング中のパフォーマンスを維持し、より効果的なトレーニングのサポートに役立ちます。運動中にBCAAを摂取する方法としては、水やお好みのドリンクに混ぜて摂取するのが一般的ですね。
ハードな運動後に有酸素運動やストレッチなどでゆっくりクールダウンをおこなう方などは、水分とアミノ酸の補給として摂っていただくのもおすすめです。 ご自身のトレーニング計画と合わせて、アミノ酸補給計画も組んでみてください。
食事でアミノ酸をカバー

残念ながらBCAAだけでは筋肉の成長やリカバリーは難しいでしょう。
20種類のアミノ酸をしっかり補給していることが大前提となります。食事でタンパク質を摂り入れましょう。肉や魚といったタンパク質はアミノ酸と比較して緩やかに吸収されるため、運動後のリカバリーに適しています。
運動後のリカバリーには糖質やビタミン・ミネラルなど多くの栄養素を必要とします。バランスのよい食事を心がけましょう。嬉しいことにバランスのよい食事をしているとBCAAの不足の心配はないといわれています。
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まとめ
BCAAはハードなトレーニングに打ち込むトレーニーをサポートする重要な栄養素のひとつです。アミノ酸の特徴を理解して、運動前、運動中を中心に適切なタイミングでBCAAを摂取することで、身体に十分なエネルギーを供給することができます。
ポイントは運動前~運動後にかけてBCAAを摂取し、運動後、タンパク質を豊富に含んだ食品で頑張った身体にしっかり栄養をあたえることです。栄養素の特性をいかし、望ましいタイミングで摂り入れてみましょう。
今回の記事を参考に、計画的な身体づくりをおこなっていきましょう。
参考文献
- Tarnopolsky, M. A., Atkinson, S. A., MacDougall, J. D., Chesley, A., Phillips, S., & Schwarcz, H. P. (1992). Evaluation of protein requirements for trained strength athletes. Journal of Applied Physiology, 73(5), 1986-1995.
- Mamerow, M. M., Mettler, J. A., English, K. L., Casperson, S. L., Arentson-Lantz, E., Sheffield-Moore, M., … & Paddon-Jones, D. (2014). Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults. The Journal of nutrition, 144(6), 876-880.
- Shimomura, Y., Inaguma, A., Watanabe, S., Yamamoto, Y., Muramatsu, Y., Bajotto, G., … & Mawatari, K. (2010). Branched-chain amino acid supplementation before squat exercise and delayed-onset muscle soreness. International journal of sport nutrition and exercise metabolism, 20(3), 236-244.
この記事を書いた人

GronG編集部