WRITER
島袋 好一
トレーナー(寄稿)
最終更新日:2018.12.04
去る7月29日(土)。
和歌山県田辺市田辺スポーツパークにて専GronGトレーニングセミナーに登壇させて頂きました。
セミナータイトルは「現代の子どもたちが野球を始める前に知っておきたいこと」です。
そのセミナー内容と感想を書いていきたいと思います。
思い起こせば、五年前に遡ります。
その年の甲子園大会は、奪三振記録を樹立した現楽天の「松井裕樹」投手擁する桐光学園や、春夏連覇を目論む現阪神の「藤浪晋太郎」投手、現西武の「森友哉」捕手率いる大阪桐蔭の出場など、非常に興味深いタレント揃いで何かと話題の多い大会でした。
たまたま当時の仕事休みと松井投手の試合日が重なった事で、久しぶり大会を観戦した時、ふと抱いたこんな印象をFacebookで呟いていました。
独り言。
最近の父と息子のコミュニケーションツールは公園での野球。て言っても庭球とプラバットの単純なもの。
父は延々と球を投げ、息子は黙々と打ち返す…って、これって僕らの子どもの時って近所の歳上の兄ちゃんに混ぜてもらって、路地裏の三角ベースでやったやつやん。
だから、誰でも男の子は自然に野球に親しみ、ルールを覚えた…。
色んな、身体活動の選択肢の一つとして。
今や野球も、お稽古事の時代やな。
高校野球の技術革新は、今回の大会観ても凄いよな。
小学生にもトレーナーが付く。
その分、プロパー型の選手は多くなってるわ。
けどアスリート型の身体能力のポテンシャルを感じる選手が少なくなった…(>_<)
稼頭央とか嘉男みたいな魅力的な選手は少なくなっていくのかな。
その日も目の前で140km/h超のスピードボールや、それをスタンドインさせる豪快な一発を目の当たりにしました。
なのにそれとは裏腹に…
少し抽象的な表現になりますが、野性味と言うか…天然の馬力と言うか、野球自体の技術の高さと相反する身体能力の脆弱さを感じた1日でもありました。
それと、それに伴う専門的なトレーニングの低年齢化に疑問を持った日。
記憶は覚束ないが恐らく、そんな情報がインプットされての観戦だったのかも知れません。
兎に角、昭和40年代の第二次ベビーブーム世代の少年たちが路地裏でプラスチックバットやゴムまり、三角ベースといった空間で野球を嗜み、軟式野球、硬式野球へと段階的なレベルに応じて技術を獲得してきたのとは違う気がしていました。
今の子どもたちは、最初にグラブとバットを手にした日から「小さい大人」としてのプレーをきっとしてきたんだろなーと言うような、そんな想像を容易にさせる少し異質な感情が芽生えたのを鮮明に記憶しています。
月日は流れ、ここ数年は幅広い年代の野球のトレーニング指導に関するご依頼を多く頂くようになりました。
実際に現場に出てみると、その傾向は5年前より更に拍車がかかっているように感じられました。
(※私が現場に出て気づくのが遅かっただけで、既にずっと前からこんな傾向はあったのかも知れません)
踊る大走査線の青島刑事の名セリフ「事件は会議室で起こってるんじゃない!!現場で起こってるんだ!!」に倣って、ここ1年は、時間が許せば球場やグランドに行って世代を問わず年間50試合くらいは観戦したと思います。
現場の指導や観戦を繰り返す中で、5年前に感じた抽象的であった異質な感情は以下の4つ要約されるようになってきました。
今回のセミナーではこの感情をさらに具体化して解説し、日々の指導での経験、身体測定や体力測定のデータ解説を交えて、プレゼン・デモ・実技を行わせて頂きました。
ご参加頂いたのは、約200名の指導者、保護者の方と中学生の野球少年、少女たち。
当初の予定を遥かに上回る参加者となったため、会場のキャパシティと設備の関係で前半は指導者、保護者の方に準備したプレゼンと子どもたちに準備したデモをコンバインして行うカタチでの進行となりました。
一部内容が難しいと思うところもありましたが、指導者の方には事前に入手した情報で体育大学出身の先生方も多くいらっしゃったので、妥協せず専門用語も多用して進行。
練習後に参加したと思われる子どもたちの中には途中、船頭さんに導かれ『こっくり、こっくり』船旅をしてしまう場面も見受けられましたが、概ね皆さま真剣な眼差しで聴講していただけました。
終了後に実施したアンケートには、内容を十分に理解した端的な感想や質問も多くあり、子どもたちの能力の高さを思い知らされることになりました。
後半は場所を体育館に移動して実技を行いました。
日々の指導中に感じる柔軟性の低下を感じる部位を中心に指導しました。
本来、日々の身体活動で十分に対応できたにも拘わらず、現代の生活様式ではなかなか補えなくなったものを取り入れたもの。
私のような運動指導に携わる者が余計な干渉をせずとも、子どもたちは本来放っておいても“遊び”の中で自然に体得出来たものだ。
実際、今回の開催地の田辺市は多くの緑や自然が残る地域。
今でも小学生たちは重たいランドセルを背負って、往復6キロほどの道を登下校するそうです。
ほんの10~15年ほど前の子どもたちは、その間に川に入ったり虫取りなんかをしてその工程を時間をかけて楽しんだそうです。
本来、これだけでもあらゆるスポーツの身体活動のベースとなりうるものが存分にあります。
あるにもかかわらず、今はこういった土地でもスマホやポータブルゲーム機で遊ぶ子どもたちが大半で、めっきり外で遊ぶ時間が少なくなってきているとか。
そんな時代と相まって、減少する日々の身体活動と反比例するように、SNSやYouTubeといった動画配信サイトを通じて進化する科学的な技術革新の情報はひっきりなしに入って来ます。
「日常の生活や遊び」の中で、ゆっくり時間をかけて醸造された体験や能力は、こう言った情報に謀殺され、時代のスピード感が子どもたちのそれを許さないのです。
しかしながら、今も昔も「速い球を投げたい、ホームランをかっ飛ばしたい!!」と言う子どもたちの欲求に大差はないはずです。
そんな思いに貢献するため、移りゆく時代の中、ともすればお節介ともなりかねない、運動指導者の活動として何ができるのか…葛藤の日々はまだまだ続きそうです。
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島袋 好一トレーナー(寄稿)
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