セルロースとは?働きや用途について
「セルロース」をご存じでしょうか?
野菜や果物の成分として日頃からセルロースを摂り入れていたり、食品添加物として口にしていることもあるでしょう。またセルロースは食べるに留まらず、樹脂としても使用されており、生活に欠かせません。
今回の記事では、私たちが日々口にしている「セルロースの働きや用途」に注目して解説します。
セルロースとは
セルロースは陸上に生息する植物の細胞壁の主要構成成分です。
たとえば道端に生えている草木や野菜、果物などの細胞壁の主な成分がセルロースです。そのほか、マンノースやガラクトース、キシロースなどが含まれています。セルロースは人間の体内で消化できないため食物繊維に分類されるのです。
食物繊維には水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と水に溶けにくい「不溶性食物繊維」に分類されます。私たちが日々摂取している食物繊維の約8割は不溶性食物繊維といわれています。そのうちのほとんどがセルロースなのです。
キャベツや人参、ごぼう、リンゴなど日頃当たり前のように食べている野菜や果物に含まれ、シャキシャキとした食感もセルロースによるもの。そのほか、玄米や大麦などにも含まれています。
セルロースには特有の歯ごたえがあります。咀嚼回数も増えて満腹効果が期待できるのではないでしょうか。
食物繊維としての働き
不溶性食物繊維に該当するセルロースは、胃や腸で消化されずに大腸に到達するといわれています。大腸で水分を吸収しながら移動し、腸を刺激して排泄されます。
食物繊維をしっかり摂取することは、健康的なすっきり生活につながると知られています[1]。日々の食生活から食物繊維を摂り入れることで、円滑なすっきりリズムが期待できるのではないでしょうか。
食品添加物としての利用
セルロースは食品添加物としても幅広く利用されています。よく知られているところでは、パスタなどにかける粉チーズやピザ用チーズなどで、細かく刻んだチーズ同士がくっつかないようにする役割を担っているのです。
またセルロースは粘性が高く、安定剤としても利用されています。アイスクリームなどに添加すると、繊維の働きによって溶けても型崩れを抑制したり、なめらかな食感を表現できたりします。
また「食品添加物って大丈夫?」と気になることでしょう。セルロースは食物繊維であり、安全性も高く健康被害は少ないと考えられています。心配な方は食品成分表示を確認するとよいでしょう。
ナタデココもセルロース?
セルロースは植物だけでなく、お酢を作る過程で出てくる酢酸菌によっても産生されます。ひと昔前にブームが巻き起こった「ナタデココ」はまさに酢酸菌の力によってできた食品です。
ナタデココは不思議な食感で、カロリーが少ないことで注目され、缶詰やドリンクなどが日本でもブームとなりました。ナタデココの発祥はフィリピンといわれ、ポピュラーなデザートである「ハロハロ」のトッピングに欠かせないのです。
ココナッツミルクに砂糖と水を入れて混ぜ、酢酸菌を加えて発酵させます。発酵過程でナタデココ特有の乳白色の膜が張り、2週間ほど発酵させると膜が1cmほどまで成長します。この膜こそがセルロースなのです。そして成長した膜(セルロース)をサイコロ状に切ったものがナタデココです。
またナタデココは缶詰などシロップ漬けで食べられること一般的ですね。これは糖度の高い液体に漬けることで離水が抑制されて、ナタデココ独特の歯切れの良さが生まれるからです。
まとめ
普段食べている食物繊維の大半がセルロースで、大腸で働きすっきりサポートをおこなっていました。
食物繊維は日々の健康管理に欠かせない栄養素のひとつです。「日本人の食事摂取基準」では、成人男性では1日21g以上、成人女性では18g以上が望ましいとされています[2]。しかしながら国民健康・栄養調査によると、日本人の平均食物繊維摂取量は1日14.4gと目標量に届いていないのです[3]。
野菜料理1日5皿を目標に食物繊維を意識して摂り入れてみましょう。
参考文献
1. 日本食物繊維学会 (2008)「食物繊維基礎と応用」. 東京, 第一出版.
2. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
3. 厚生労働省. 平成30年「国民健康・栄養調査」.