話題の「低GI食品」ってなに?
最近、よく耳にするようになった「低GI食品」。お菓子のパッケージに「低GI」とかれた商品をよく目にするようになりました。
しかしながら「低GIってなんですか?」、「低GIなら血糖値は上がりませんか?」などの質問をたくさんいただきます。
そもそも低GIとはなんなのでしょうか。そしてどのような食品が「低GI食品」に該当するのでしょうか。
こちらの記事では、「低GI食品」について詳しく紐解いていきましょう。
GI値とはなんのためにあるのか
GI値について語る前に、GI値の概念を理解しておきましょう。
食事をすると食べ物が消化吸収されて血管内へ「ブドウ糖」が流れます。この「ブドウ糖」を血糖値とよんでいます。血液中のブドウ糖の量が増えると、すい臓からインスリンが分泌されます。そしてインスリンの働きで「ブドウ糖」は、筋肉や肝臓、脂肪組織へ取り込まれるので血糖値が下がるのです。
一方、インスリンの分泌が少なかったり、遅かったりすると急激に血糖値が上昇したり、血糖値がうまく下がらない時間が続くことがあります。これらが慢性的に続くと、身体に負担がかかり、太りやすい体質になってしまいます。
また過剰の糖質の摂取は美容に良くないとも言われています。最近では、「血糖値スパイク」といって、普段の血糖値は正常なのに食後だけ急に血糖値が上昇してしまう人がいることもわかってきました。血糖値スパイクは、若い方にも見られるので気をつけたいですね。
「ブドウ糖」は人間にとって大切なエネルギー源ですが、急激な血糖値の上昇や慢性的な血糖値の上昇は避けたいところです。その一つの手段としてGI値の考え方があるのです。
GI値とは
GI値(グリセミック・インデックス)とは、1981年にジェンキンス博士らが開発した血糖値の上昇度合を数値化したものです。
一般的にブドウ糖を100とした場合に、他の食品ではどれくらい血糖値が上昇するのか?その上昇度合を数値化しています。
GI値の調べ方は、50gのブドウ糖と食品の炭水化物量が50gになるように重量を決めて摂取。そして食後の血糖値の推移を観察し、血糖値の変化を面積にして数値を求めています。
GI値=(「食品」摂取時の血糖値上昇曲線の面積/「ブドウ糖」摂取時の血糖値上昇曲線面積) × 100
食品のGI値
食品のGI値は世界各国で研究が進み、数値が公開されてきました。
オーストラリアのシドニー大学の研究で、GI値が「高GI」、「中GI」、「低GI」に分類されました。その研究によると、GI値が70以上の食品を高GI食品、56~69の食品を中GI食品、55以下の食品を低GI食品と定義しています。
また2002年には、アメリカの栄養雑誌にGI値の国際基準表が掲載されました[1]。海外では盛んに研究がされており、炭水化物の精製方法や化学構造、調理法がGI値に影響してくるとわかっています。
下に2008年に発表されたGI値の国際基準から日本人がよく食べている食品を抜粋し作成しました[2]。おなじジャガイモでもマッシュとフライではGI値が大きくことなりますね。つまりカロリーだけ気にしていてもよくない恐れがあるのです。
食品名 | GI値 | 分類 |
---|---|---|
ジャガイモ(マッシュ) | 87±3 | 高GI食品 |
せんべい | 84±2 | 高GI食品 |
コーンフレーク | 81±6 | 高GI食品 |
お粥 | 78±9 | 高GI食品 |
ジャガイモ(ゆで) | 78±4 | 高GI食品 |
スイカ | 76±4 | 高GI食品 |
食パン(白い) | 75±2 | 高GI食品 |
全粒粉パン | 74±2 | 高GI食品 |
白米 | 73±4 | 高GI食品 |
玄米 | 68±4 | 中GI食品 |
かぼちゃ(ゆで) | 64±7 | 中GI食品 |
ジャガイモ(フライドポテト) | 63±5 | 中GI食品 |
サツマイモ(ゆで) | 63±6 | 中GI食品 |
はちみつ | 61±3 | 中GI食品 |
パイナップル | 59±8 | 中GI食品 |
ソフトドリンク | 59±3 | 中GI食品 |
ポテトチップス | 56±3 | 中GI食品 |
うどん | 55±7 | 低GI食品 |
スイートコーン | 52±5 | 低GI食品 |
バナナ | 51±3 | 低GI食品 |
アイスクリーム | 51±3 | 低GI食品 |
パスタ | 49±2 | 低GI食品 |
いちごジャム | 49±3 | 低GI食品 |
オレンジ | 43±3 | 低GI食品 |
リンゴジュース | 41±2 | 低GI食品 |
ヨーグルト(フルーツ) | 41±2 | 低GI食品 |
チョコレート | 40±3 | 低GI食品 |
ニンジン(ゆで) | 39±4 | 低GI食品 |
牛乳 | 39±3 | 低GI食品 |
リンゴ | 36±2 | 低GI食品 |
豆乳 | 34±4 | 低GI食品 |
大麦 | 28±2 | 低GI食品 |
大豆 | 16±1 | 低GI食品 |
※データは平均±SEM
2008年に発表されたGI値の国際表より作成[2]
GI値の落とし穴
残念なことにGI値には少し落とし穴があります。
栄養相談で、「チョコレートと人参のGI値があまり変わりません。人参は控えた方がいいですか?」と質問を受けました。皆さんは、チョコレートと人参では血糖値の上がりかたは同じだと思いますか?
GI値では、炭水化物50g分を基準にして測定をしています。炭水化物50g分のチョコレートを食べようと思ったら板チョコ約1.5枚、人参では6本分に相当します。チョコレートはありえますが、人参を1回に6本も食べることはありえませんよね……。
つまりGI値は、1回に食べる量を想定してないことが大きな落とし穴なのです。
GL値という考え方
GI値の落とし穴である、1回に食べる量を想定したのがGL値です。
GL値=食品に含まれる炭水化物の量(g)×GI値÷100
最近は、世界的にみてもGL値が主流となってきています。GL値もGI値同様に、10以下の食品を「低GL」、11~19を「中GL」、20以上を「高GL」と定義しています。
チョコレートのGL値は13で、人参のGL値は2です。つまりGL値の考えでいくと、人参に比べてチョコレートのほうが低GL食品といえるのです。
まとめ
いかがでしたか。
GI値もGL値も大切な考え方です。低GI、GL食品をとるようにすることは重要そうですね。
だからといって低GI、GL食品ばかり食べることはおススメしません。なぜなら「ブドウ糖」は大切なエネルギー源だからです。
主に私たちが主食としているものに「ブドウ糖」は多く含まれており「高GI」に該当する食品が多いです。「高GI」であっても必要な糖質は摂取するようにしましょう。たとえば、白米を玄米に切り替えることはGI値をうまく活用できているといえます。玄米に切り替える他に、大麦をごはんに混ぜるのもおススメです。
参考文献
1. Foster-Powell, K., Holt, S. H., & Brand-Miller, J. C. (2002). International table of glycemic index and glycemic load values: 2002. The American journal of clinical nutrition, 76(1), 5-56.
2. Atkinson, F. S., Foster-Powell, K., & Brand-Miller, J. C. (2008). International tables of glycemic index and glycemic load values: 2008. Diabetes care, 31(12), 2281-2283.
3. Nomura, N., Miyoshi, T., Hamada, Y., Kitazono, E., & LIMITED, T. (2020). Glycemic index of boiled BARLEYmax® in healthy Japanese subjects. Journal of Cereal Science, 102959.