もち麦とは?期待できる効果について
日本人の食物繊維不足は深刻な問題です。
戦後1日20g以上あった食物繊維摂取量は低下の一途を辿り、平成30年度の国民健康・栄養調査によると食物繊維の平均摂取量は1日14.4g[1]。その背景には食の欧米化による米離れとともに、大麦などの雑穀が食べられなくなったことも要因のひとつと考えられています。
近年、穀類に含まれる食物繊維が、健康に良いことがわかり、とくに穀類に含まれるβ-グルカンという食物繊維の効果が世界的に注目されています。
穀類の中でも大麦に豊富に含まれるβ-グルカン。大麦の約7割がβ-グルカンといわれるほど豊富に含まれています。
大麦といえば押し麦やもち麦が代表的。もち麦はモチモチとした食感と冷めても美味しい特徴から、コンビニのおにぎりなどで注目され話題となっています。
この記事では、話題の「もち麦の魅力」について解説します。
もち麦とは
もち麦は大麦の一種です。大麦は「二条大麦」と「六条大麦」に大別されます。ビールや焼酎などの原料が「二条大麦」。もち麦や押し麦は「六条大麦」にあたります。
米に「もち性」と「うるち性」があるように、大麦にも「もち性」と「うるち性」があり、もち性にあたるのが「もち麦」です。
ごはんに混ぜたり、サラダにトッピングしたりアレンジ自由なもち麦。食感もモチモチっとしており食べ応えがあります。もち麦にはなんと白米の約25倍も食物繊維が含まれているのです。もち麦に含まれる食物繊維の中でも、とくにβ-グルカンが注目を集めています。
β-グルカンは酵母から発見され、きのこや野菜、大麦などの穀類にも含まれていることがわかりました。大麦の食物繊維の7割は水溶性食物繊維といわれ、その大半がβ-グルカンといわれています。またビタミンやミネラルなども豊富で栄養価が高く、さまざまな働きが期待されています。
もち麦の効果
快調な日々のサポートに
食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。
水に溶けにくい不溶性食物繊維は、水分を吸収し、膨張しながら体内を移動。膨張することで刺激しながら移動して排泄されます。水に溶けやすい水溶性食物繊維は、ゲル状になり、体内からキレイをサポートしてゆっくり移動、スムーズに排泄されるのです。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の理想的なバランスは「不溶性食物繊維:水溶性食物繊維=2:1」といわれています。日本人は食物繊維の摂取量が不足しており、とくに水溶性食物繊維が足りていないのです。
大麦には食物繊維ならびに水溶性食物繊維が豊富に含まれており、すっきり快調な毎日が期待できるのです。
丈夫な身体づくりに
健康に腸が重要視されています。そして食物繊維には腸内善玉菌のエサとなる働きがあります。腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌といわれる菌が存在しており、これらの菌がバランスを保ちながら生息しています。
腸内でよい働きをする善玉菌のエサとなるのが食物繊維です。食物繊維が善玉菌によって分解されると酢酸や酪酸といった短鎖脂肪酸が生成します。短鎖脂肪酸は、大腸菌などが嫌いな酸性であり、逆に酸性は、善玉菌が生息しやすい好きな状態であるといわれています。
また、β-グルカンは丈夫な身体づくりには欠かせない成分であり、健康にかかわる因子だといわれています。
腹持ちがよい
大麦は消化に時間を要するため胃内停留時間が長くなるため、満腹感が持続し食べ過ぎ防止につながるでしょう。満腹感が持続することで食べる量も減るため、ダイエットのお供にオススメです。
最近では「もち麦ダイエット」が流行し、もち麦おにぎりなどが手軽に購入できるようになったため、活用しやすいのではないでしょうか。
低GI値
健康のためにも、高GI食品の大量な摂取は避けたいところです。β-グルカンは体内でゲル状となり、他の栄養素を巻き込みながらゆっくり移動するといわれています。
一般的にもち麦は、ごはんに混ぜて食べることが多いでしょう。
- 白米
- もち麦30%ごはん
- もち麦50%ごはん
- もち麦100%
で比較した研究では、もち麦を混ぜることでGI値が抑制できました[2]。
脂肪が気になる方に
β-グルカンを摂取することで健康維持に役立つことが報告されています。報告されている研究によると、β-グルカンは1日約5g~20gの摂取がおすすめであるといわれています[3]。
また日本人を対象とした研究では、1日約3gのβ-グルカンの摂取でも、健康維持につながる可能性が報告されています[4]。
一般的にもち麦に含まれるβ-グルカンの量は4%~5%といわれています。1日に50g~100g程度を目安に摂取するとよいでしょう。
この量は食べ慣れない方にとっては多く感じるかもしれませんね。少しずつはじめてみて量を増やすのもいいでしょう。
またβ-グルカンはきのこなどの野菜にも含まれています。さまざまな食材を組み合わせ食べると負担が少ないのではないでしょうか。
もち麦のビタミン・ミネラル
もち麦には食物繊維の他、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。ビタミンやミネラルは、炭水化物や脂質、タンパク質といった三大栄養素の働きをサポートする働きがあります。ビタミンやミネラルのサポートがあってこそ、コンディション維持に役立つのです。
もち麦には、ビタミンB1やビタミンB2、ナイアシンなどのビタミンB群が含まれています。ビタミンB群は、糖質やタンパク質などの栄養補給時必要なビタミンで、エネルギー補給や、身体づくりの際にタンパク質と合わせて不可欠です。
その他、カリウムや亜鉛、マグネシウムなどのミネラルが含まれているのももち麦のポイントです。
まとめ
もち麦にはたくさんの魅力がありました。日本人がとくに不足している水溶性食物繊維の他、ビタミンやミネラルも豊富でしたね。
食物繊維は健康維持に寄与しており、自身の健康は自身で守る時代の鍵となるのではないでしょうか。ぜひ、もち麦を日々の食生活に活用してみてくださいね。
参考文献
1. 厚生労働省. 平成30年「国民健康・栄養調査」.
2. Aoe, S., Komae, K., Inoue, Y., Murata, I., Minegishi, Y., Kanamoto, I., … & Yanagisawa, T. (2018). Effects of Various Blending Ratios of Rice and Waxy Barley on Postprandial Blood Glucose Levels. Nippon Eiyo Shokuryo Gakkaishi, 71(6), 283-288.
3. 日本食物繊維学会 (2008)「食物繊維基礎と応用」.第一出版
4. Shimizu, C., Kihara, M., Aoe, S., Araki, S., Ito, K., Hayashi, K., … & Ikegami, S. (2008). Effect of high β-glucan barley on serum cholesterol concentrations and visceral fat area in Japanese men—a randomized, double-blinded, placebo-controlled trial. Plant foods for human nutrition, 63(1), 21-25.