β-グルカンと年齢や環境変化に左右されない丈夫な身体づくりとの関係について
年齢や季節の変化などに影響を受け、身体への負荷と感じる方も多いかと思います。身体は、そんな変化に対応して適応するシステムが備わっています。
そんな年齢や環境変化に左右されない丈夫な身体づくりにβ-グルカンの関係が注目されているようです。
今回のコラムでは「β-グルカンと年齢や環境変化に左右されない丈夫な身体づくりとの関係」について解説します。
β-グルカンとは
人間の主なエネルギー源であるブドウ糖がいくつか結合してできた塊をグルカンといいます。ブドウ糖が結合する際に「鎖」役となるものにα型とβ型が存在。
α型で結合してできたものにはデンプンやグリコーゲンなどがあり、α-グルカンと呼ばれます。人間はα-グルカンを消化する能力(鎖を切るハサミ)をもっているため、最終的にはブドウ糖となり体内でエネルギー源として働きます。
一方でβ-グルカンを消化する能力(鎖を切るハサミ)がないため、エネルギーに変換できません。β-グルカンは消化されない成分であり食物繊維に分類されます。酵母やきのこ、野菜、大麦などにβ-グルカンは含まれています。
β-グルカンによる変化や加齢による衰えをも跳ね返す身体づくりのサポート
私たちの身体には、ウイルスや細菌などの異物が入ってきたときに、それらを攻撃し排除する機能が備わっています。この機能は外敵から守るために重要な役割をはたしています。
1940年頃より酵母の研究がおこなわれ、β-グルカンが発見されました。古くからキノコなどの健康効果は知られていました。
1960年頃よりβ-グルカンの健康保護の研究がおこなわれ、1968年、千原博士らが椎茸から「レンチナン」というβ-1,3を基軸とするβ-1,6の枝分かれ構造をしたβ-グルカンの抽出に成功。その後研究がすすめられ、レンチナンの重要な役割が報告されるようになり、健康のために使用されてきました。
2000年代になると、β-グルカンの摂取により丈夫な身体づくりや身体の保護に役立つことが期待されるようになりました[1]。
またオート麦や真菌のβ-グルカンは丈夫な身体づくりや身体の保護をするだけでなく、その他の健康維持のためにも有用であることが報告されています[2][3]。
日本でも近年、大麦やもち麦などの雑穀ブームに加えて、キノコから抽出したβ-グルカン関連の健康食品が注目されています。ただし健康食品に含まれるβ-グルカンと体内の働きついては、研究報告が少ないことも事実です。またβ-グルカンの丈夫な身体づくりサポートには個人差があるとも報告されています[4]。
まとめ
β-グルカンには健康に役立つ働きがあり、北欧諸国はじめ日本においても注目されている栄養素のひとつでした。ただし栄養素は単独で働くことは稀で、互いに助けあって生命活動を維持しています。
昨今、健康ブームで健康食品の需要が高まっています。ただし健康食品は補助的なもので、基本はバランスの取れた食事であることを忘れないでくださいね。
β-グルカンは穀物や海藻、野菜、果物など私たちが日々食べている食材に含まれています。年齢や環境変化にも負けない丈夫な身体づくりの秘訣は、日々の食事にあるのではないでしょうか。
参考文献
1. Taylor, P. R., Tsoni, S. V., Willment, J. A., Dennehy, K. M., Rosas, M., Findon, H., … & Brown, G. D. (2007). Dectin-1 is required for β-glucan recognition and control of fungal infection. Nature immunology, 8(1), 31-38.
2. Chen, J., & Raymond, K. (2008). Beta-glucans in the treatment of diabetes and associated cardiovascular risks. Vascular health and risk management, 4(6), 1265.
3. Othman, R. A., Moghadasian, M. H., & Jones, P. J. (2011). Cholesterol-lowering effects of oat β-glucan. Nutrition reviews, 69(6), 299-309.
4. Oka, M., Hazama, S., Suzuki, M., Wang, F., Wadamori, K., Iizuka, N., … & Suzuki, T. (1996). In vitro and in vivo analysis of human leukocyte binding by the antitumor polysaccharide, lentinan. International journal of immunopharmacology, 18(3), 211-216.