現在、市場に出回るプロテインの多くは、WPCといわれる乳由来のプロテインですが、数十年前のプロテインの主原料の多くは大豆だったそうです。
最近では乳や大豆由来のプロテイン以外にも様々なたんぱく原料素材として出てきはじめています。
プロテインを選択する際に参考にしていただきたい「プロテインの種類」を解説します。
原料の違いによるプロテインの種類

タンパク質を多く含む食品は、主に、肉や魚、卵、乳製品および大豆製品であり、大豆製品は植物性食品ですが、それ以外は動物性食品になります。
栄養学的には、タンパク源として、毎日お肉ばかりではなくお魚や納豆、お豆腐を使う食事を盛り込んでバランスのよい献立を考えます。
スポーツ界の食事管理においても、動物性の食品はタンパク源として優秀ですが、基本的には、植物性の食品と一緒に摂ることで栄養バランスを整えることをベースに考えていきます。
原料の違いによる代表的なプロテインの特徴1)
カゼイン・ホエイは牛乳に含まれる成分

カゼインとは、水に溶けない乳たんぱく質※1で、酸と結合すると固まる性質があり、牛乳全体の約80%を占めます。ちなみにヨーグルトは、乳酸菌がつくった乳酸でカゼインが固まったものです。
※1 乳たんぱく質:牛乳やその他乳製品に含まれるタンパク質の総称。
一方残りの20%のホエイは、牛乳から脂肪分などの固形分とカゼインを取り除いた半透明の液体です。ヨーグルトを少し置いたときにできる上澄みの液体にもホエイは溶け込んでいます。
カゼインプロテインやホエイプロテインは、牛乳の成分中の乳たんぱく質である「カゼイン」と「ホエイ」から抽出して生成されたものです。
ホエイプロテイン

ホエイプロテインの特徴は、吸収速度が速く、利用率も高い(吸収効率も良い)ことです。
また、ホエイプロテインは水溶性のため、比較的クセが少なく、水に溶けやすいメリットもあります。
吸収がスピーディーなので、スポーツや筋力トレーニング後に速やかに補給したいとき、朝一のタンパク質が枯渇している時間帯の補給などに優れています。
種類 | WPC(Whey Protein Concentrate) | WPI(Whey Protein Isolate) |
---|---|---|
読み | ホエイプロテイン・コンセントレート | ホエイプロテイン・アイソレート |
製造方法 | 乳清たんぱく質を濃縮 | WPCを精製して乳糖や乳脂などを除去 |
タンパク質の含有率 | 80%前後 | 90%前後 |
生まれつき乳糖の消化酵素が少なく、乳製品を摂るとお腹の調子を崩しやすいという方は、乳糖が比較的少ない、WPIがオススメです。
カゼインプロテイン
酸の作用によるカゼインの性質は、消化・吸収の過程でもその特性をいかんなく発揮します。
カゼインは胃に運ばれると、胃酸によって凝集されるためヨーグルト状の塊となり、胃の中にとどまる時間が長くなることで、ゆっくりと時間をかけて消化・分解して吸収されます。
そのため腹持ちが良くなり、減量時や夜の時間帯など、食間のインターバルが長くなるときのタンパク質の補給に優れています。
カゼインプロテインも、牛乳由来のタンパク質ですが、不溶性のタンパク質のため、水には溶けにくいです。吸収速度もゆっくりなため、腹持ちが良いのが特徴です。
ソイプロテイン

ソイプロテインは、大豆から生成されるプロテインです。
ソイプロテインは、大豆由来のタンパク質で植物性です。乳由来のタンパク質にはほとんど含まれていない食物繊維が含まれており、吸収速度がゆっくりで、腹持ちが良いので女性に人気が高いです。吸収速度がゆっくりな代わりに体内のアミノ酸濃度を長時間維持する持続力があるのも魅力のひとつです。
そのため食事の置き換えや食事に添加すれば、お米を主食とした味噌や醤油、豆腐、納豆など、多くの大豆食品を添加して栄養のバランスを整える日本人にとって相性抜群のプロテインといえるでしょう。
一方、水には溶けにくく、乳由来のタンパク質と比べてどろっとした食感が特徴的です。
また、それぞれのタンパク質原料によってアミノ酸の配合割合が違います。

筋肉に多く含まれるといわれているBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)および、必須アミノ酸の含有量は動物性の乳由来タンパク質に多く含まれる傾向にあります。
そのため、筋トレなどで筋力アップを目指すアスリートやトレーニーは乳由来かつ吸収の速いホエイプロテインを好んで飲む方が多いですね。
一方で、カゼインやソイプロテインは、それぞれ由来は違うものの吸収がゆっくりで腹持ちが良いため、ダイエット時や間食などとしての利用が勧められている気がします。
そのため、冒頭で話した、筋トレをする男性はホエイプロテイン、女性は美容やダイエットのためにもソイプロテインというイメージが強くなっているのでしょうね。
原料の違いによるプロテインのおすすめ摂取タイミング
目的によってプロテインを選ぶのももちろん良いのですが、私のおすすめは、各プロテインの特徴に合わせて、摂取タイミングによってプロテインの使い分けをすることです。
トレーニングをして筋力やパフォーマンスアップを目指す方も、運動時だけではなく、それ以外でのタンパク質摂取も重要です。しかし、どうしても運動時だけのタンパク質摂取に目がいきがちです。
目的は同じダイエットでも、食事制限による体重減少を目指す方もいれば、運動もしながらスタイルアップを目指す方もいるでしょう。
また、日頃の食事内容によっては、プロテインの必要性自体が変わってきます! このように、目的は一緒でも、効率的にプロテインを摂取するためには、飲む量やタイミングは違います。
運動前後のタンパク質摂取

運動やトレーニングをすると、筋肉に負荷がかかります。そのため、さまざまな筋肉細胞が傷ついている状態になります。これは、筋力アップには欠かせない工程のひとつで、その後、身体は筋肉に多くのアミノ酸を運び入れて筋肉を修復しようとします。その吸収率が最も高くなるのが、運動後から45分までといわれています。身体が筋肉にアミノ酸を多く取り込もうとしても、材料のタンパク質がなければ空輸送になってしまいます。
そのため、運動時にはより素早く身体にタンパク質を補給する必要があるため、おすすめは、吸収速度が早く、吸収率のよいホエイプロテインです!
1日の始まりや終わりのタンパク質摂取
タンパク質が必要なのは、運動時だけではありません。運動時だけにたくさんのタンパク質を摂っても十分ではありません。むしろ、1回に多く摂りすぎても身体は処理しきれず無駄になってしまうことさえあります。そのため、1日に必要なタンパク質量を20g程度ずつの小分けにして摂取することがおすすめです。
特に、就寝中はタンパク質をはじめとする栄養素の補給がされません。1日の終わりの栄養補給には、腹持ちの良いカゼインプロテインやソイプロテインがおすすめです。1日の始まりについては、直近摂取したプロテインと違う種類のものや、日頃の食事でのタンパク源に動物性と植物性のどちらが多いかでバランスをとって飲むので良いでしょう。迷う場合には、比較的BCAA含有量の多いホエイプロテインを摂取しましょう。
食事の置き換えや+αとしてのタンパク質摂取
日頃の食事のバランス調整のためにプロテインを飲む場合には、Wタンパク質のプロテインがおすすめです!
Wタンパク質とは?
動物性タンパク質と植物性タンパク質のそれぞれのメリットを良いとこ取りをすることです。
プロテインにおいては、動物性タンパク質の代表である乳由来のホエイプロテインと植物性タンパク質の代表である大豆由来のソイプロテインを上手に取り入れることがおすすめです。

筋力アップやボディメイクに向けてトレーニングをする方に、ソイは嫌厭されがちですが、身体づくりの貢献度として、Wタンパク質が効率的であるといったデータも出てきています。3)

また、先述した通り、ホエイとソイで摂取できるアミノ酸の種類が違います。
ホエイプロテインとソイプロテインのWタンパク質摂取でバランスよく摂取することができます!

まとめ
ご自身のプロテインを選び場合、もしくは「誰か?」のためにプロテインを選ぶ場合の基準はなんでしょうか?メーカーや種類が混在する現代。メーカーの認知度やパッケージイメージ、価格、フィットネスイベントや店頭試飲会での味の良さ好みなどなど。最終決断に至るプロセスは人それぞれかと思います。
しかしながら成分やTPOならぬTTO(時間帯、タイミング、目的)は、意外とないがしろにされているのではないでしょうか?せっかくのプロテインをより効果的に活用するために、TTOにもこだわりを。
この記事を書いた人

阿部 友美
管理栄養士/元食品・化粧品メーカー研究員