マッサージに資格は必要?国家資格と民間資格の違いについて
近年、資格をとるための通信教育が普及してきました。さまざまな資格が取得できて、就職にいかしたり、キャリアアップにつなげたりと、学ぶ人が増えているのは非常にいいことですね。
マッサージにおいてもさまざまな学校や講座があったり、中には通信教育で資格が取得できるものもあります。マッサージの通信教育って少し想像がつきませんよね。
みなさんが「マッサージ」を受けたいとき、選ぶ基準にしているものはなんですか?値段?場所?サービス内容?「これだ!」と決める理由の中に「資格」も候補に入るのではないでしょうか。
今回の記事ではマッサージにまつわる「資格」について詳しく解説します。
マッサージの資格
みなさんがイメージするマッサージはどのようなものでしょうか。街の“マッサージ屋さん”はあちこちにあって「今週は疲れたから、マッサージしてもらおう」と訪れることも少なくないと思います。
- 整骨院(接骨院)
- 鍼灸院
- 整体
- ほぐし処
- カイロプラクティック
- オステオパシー
- リフレクソロジー
- アロマセラピー
- リンパドレナージュ
などなど……。
こうして例をあげるだけでも、なにがどう違うのかわからないですよね。私もこれまで鍼灸師として仕事をしてきましたが、お客さまから幾度となく「先生は整体師なんですよね?」と声をかけられたことがあります。ここまでお店が多くなると、お客さま自身も区別がつかないのはよくわかります。
いずれもなんらかの資格を持っていることが多いのですが、そこにはいったいどんな差があるのでしょうか。
国家資格と民間資格の取得について
国家資格の取得
現在、日本で法的に「マッサージ」ができる資格は医師とあん摩マッサージ指圧師のみ。その他では、医師の許可のもとリハビリを担当する理学療法士です。
もちろん、医師やあんまマッサージ指圧師、理学療法士は国家資格です。国が指定する教育カリキュラムを一定期間履修したあと、国家試験を受けて合格する必要があります。
国立・私立大学の医学部は、6年間の履修期間と5~6年間の研修医期間が含まれています。そのため学費は国立大学で約350万円~、私立にいたっては約2000万円~という高額な学費がかかるのです。また学費だけではなく、後援会費や寄付も必要になることもあり、それ相当の覚悟が必要になります。
柔道整復師や鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師も3、4年のカリキュラムを履修する必要があり、入学金や学費もあわせると300~400万円近くかかる大学や専門学校がほとんどです。専門学校以外では、盲学校や特別支援学校で資格の取得を目指すことも可能です。
民間資格の取得
日本には整体師を養成するような学校や講座が数多くあります。中には通信教育もあり、忙しくても通いやすいようなカリキュラムになっていることが多いです。
資格のコースにもよりますが、学習期間は短いもので1ヶ月、長いものでも7ヶ月くらいが一般的なようです。
費用においては数万円から数十万円のコースが多く、国家資格と比較すると時間と費用のコストがかからず、気軽に通えるものが多くなっています。なかには「1日15分の学習でOK!」というものもありました。
資格の取得における時間やコストを考えても、国が認める資格にはそれだけの労力がかかっていて、さらに現場での研鑽が必要になります。
みなさんが「マッサージ」として認識しているであろう資格には、このような違いがあることをおわかりいただけましたか。身体がよくなることは大前提として、身体に関わることを深く細かく学んだ人の施術を受けたいですよね。
資格によってできること、できないこと
国家資格でできること、できないこと
厚生労働省による職業分類では「柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師」は専門的・技術的職業の「その他の保健医療の職業」に分類されています。
マッサージが可能な国家資格は「医師・あん摩マッサージ指圧師」と前述しました。柔道整復師や鍼灸師という国家資格保有者であっても、医療行為としてのマッサージは法的に禁じられているのです。
開業権:あり
資格:必要
分類:医療・その他保健医療の職業
参考例:保険適応される施術
柔道整復師
骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷(肉離れ)についての施術
あん摩マッサージ指圧師
筋麻痺や関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とする症例についての施術
鍼灸師
主として神経痛、リウマチ、頸腕(けいわん)症候群、五十肩、腰痛症及び頸椎捻挫後遺症等の慢性的な疼痛を主症とする疾患の施術
あん摩マッサージ指圧師の資格を持っていれば、マッサージ店を開業する権利が得られるため、国から認められた専門の医療機関としてお店をもつことができます。
民間資格でできること、できないこと
厚生労働省による職業分類においては「カイロプラクティック・アロマセラピー等従事人」はサービスの職業の「その他のサービスの職業」に分類されています。日本国内では、医療分野の職業でないことは明らかにされているわけです。
開業権:あり
資格:必要なし
分類:サービス業
あん摩マッサージ指圧師は施術に応じて保険適応となりますが、整体師のおこなうマッサージ類似行為には保険が適応されません。
サービス業に該当するため、保健所への申請をすれば開業は可能です。マッサージ師としての資格は必要なく、極端なことをいえば「無資格」でもお店を開いて営業することが可能です。あくまでも「もみほぐし」「リラクゼーション」を目的とした施術に限られます。
厚生労働省は、
法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。
と回答しています[1]。
またこれらに類似する行為を無資格でおこなった場合は処罰の対象になります[2]。
まとめ
一見区別のつかないことでも、その内情を知ると少し気になってしまいますよね。
自分に関わることなら「その分野のプロフェッショナルに担当してもらいたい」という気持ちはごくごくあたり前の願望でしょう。
資格を取得するのはあくまでも現場に出るまでのプロセスであり、有資格者でも無資格者でも「人を助けたい」という気持ちは同様です。必ずしも資格を持っているからといって素晴らしい技術をもっているわけではありません。
しかしプロ野球とアマチュア野球のレベルが圧倒的に違うように、そこにいたるまでに努力して得た知識や、経験に裏付けされた技術はお客さまの安心感につながるはずです。
なにより施術を受けた際に「やっぱりプロは違うな」と実感することになるでしょう。
参考文献
1. 厚生労働省. 医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知
2. 厚生労働省. 無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について. https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1.html