ダイエットにランニングはNG?筋トレと有酸素運動の正しい選び方
運動不足になり、「最近太ってきてお腹が出てきた」という方も多いはず。
とりあえずダイエットのために走りはじめようとしていませんか?はい、ちょっと待った!ストップです。実はランニングはダイエットに「最適な」運動ではありません。
「汗をかく=ダイエット」という認識の方はまだまだ多いはずです。しかし汗をかいたからといって効率的に痩せているわけではありません。なぜなのでしょう。また「筋トレをしたほうが痩せやすくなる」と聞いたことはありませんか?
今回のコラムでは、それぞれの運動をダイエットに取り入れることのメリット・デメリットを踏まえて解説します。
発汗=脂肪燃焼ではない
がむしゃらに頑張って運動していると、たしかに痩せるような気はしますよね。ダイエットのために走っている私って素敵!となりがちです。それ自体は非常によいことなのですが、ダイエットで結果を出すには運動を頑張るよりも、情報の整理を頑張ったほうがよい結果につながることが多いのです。
冒頭でも触れましたが、「汗をかく=痩せる」ではありません。運動をして汗をかくのは体温が過度に上昇するのを防ぐため(ホメオスタシス=恒常性の維持)、全身に熱がこもらないよう放散することを目的としているからです。
ダイエットにおける最重要ポイントは脂肪の燃焼です。とくに「なにを主なエネルギー源として使っているか」にあります。
身体のエネルギー源は糖と脂肪、タンパク質です。私たち人間は、肝臓や筋肉に貯蔵されているグリコーゲン(糖源)と体内に蓄えられている体脂肪、アミノ酸をエネルギーに変えて活動する仕組みになっています。
すばやくエネルギーに変わる糖と、長時間の運動にエネルギー供給しやすい脂肪を使う比率には個体差があり、代謝や運動の強度によって変わります。運動でなくとも、安静時や睡眠時でも呼吸をしたり、心臓を動かすために身体はエネルギーを使っているのです。
具体的には「呼吸商※」を計測するとわかるのですが、アスリートのような一部の人がおこなう特殊な検査なので、ダイエットに取り組む方は「激しい運動(=ダッシュ)は糖を中心に使い、軽い運動(=ウォーキング)は脂肪を中心に使う」と考えておけばよいでしょう。
※呼吸商:一定時間に体内で燃焼される栄養(糖質:脂質)の概要がわかる数値。呼吸商の検査には酸素の消費量に対して二酸化炭素の排出量を計測する。
有酸素運動で得られるダイエット効果
有酸素運動は読んで字のごとく、酸素を使った運動です。
特徴としては、長時間続けられるという点にあります。グループで歩いたり走ったりもできますし、筋力トレーニングのように高い負荷をかけないという点においても、誰もがはじめやすい運動といえるのではないでしょうか。
会話できるペースで続ける運動は主に体脂肪をエネルギー源として活用します。心拍数と脂肪燃焼には密接な関係があり「ぜえぜえ、はあはあ」と息が上がるようなペースでムリをして走らなくてもよいのです。ダイエットを第一の目的として有酸素運動をおこなう場合は、楽に続けられるペースでおこなうようにしましょう。
有酸素運動にはその他にも心肺機能の向上やストレスの発散、血行促進などの効果が期待できます。そのため目的に合わせて取り組む内容(強度、継続時間、種目)を変更することでさまざまなメリットを受け取れることでしょう。
ダイエット効果がまったくなくなるわけではなく、優先順位が変わるだけですので心配はいりません。
有酸素運動の種類
有酸素運動にはたくさんの種類があります。今回は代表的な種目をその運動レベル(METS※[1][2])と合わせてご紹介します。METSが低いほどラクな運動、高いほどきつい運動ですので目安にしてみてください。
※METS:運動強度の単位で、安静時(横になったり座って楽にしている状態)を1としたときと比較して、何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。
ウォーキング(METS 3.0-4.3)
最もはじめやすい運動がウォーキングではないでしょうか。
道具もいらず、場所を選ばないのも大きなメリットです。たとえば通勤時に自宅から駅まで歩いてみる、お買い物に歩いていってみるなど、一日のスケジュールを考慮すれば生活の中に取り入れるのが可能になるはずです。
ジョギング(METS 4.0-6.0)
歩くことに慣れてきたら少し走りたいなと考える人もいるでしょう。颯爽と走っていたらカッコいいですもんね。
またジョギングのペースは人によって全然違います。10キロを60分で走るのがやっとな人もいれば、40分で走っても呼吸ひとつ乱れない人もいます。前述した「話しながらでも続けられるペース」を目安にしましょう。
ランニング(METS 7.0-23.0)
ランニングはダイエットというよりも趣味でマラソンをしている方や、競技思考で取り組んでいる方向けの運動です。
強度が高くなるため、脂肪燃焼の効率も下がりますし、相当な意志をもって取り組まないと継続するのが難しい種目だといえます。
インターバル速歩(METS 4.3-5.0)
ただ歩くよりも効果が高いのがインターバル速歩です。
ややきつい早歩きと、ゆっくりを交互に繰り返しおこなうことで、脂肪燃焼とともに心肺機能を高めることが可能です。ウォーキングのバリエーションとして、楽しみながらスピードを高めていくのもよいでしょう。
自転車※サイクリングレベル(METS 3.5-7.5)
生活の足として自転車を活用している方は、その延長で有酸素運動をするのもよいでしょう。自転車通勤をしてみたり、自転車で買い物に行くことで十分に有酸素運動の役割を果たせます。
自転車※ツーリングレベル(METS 8.5-16.0)
ロードバイクやマウンテンバイクなど、競技レベルで取り組むような自転車の運動は非常に強度が高い運動です。このような運動はダイエットというよりもスポーツや趣味としておこなう側面が強くなります。
水泳(METS 4.8-13.8)
水中は浮力によって体重が10分の1程度になります。これによって関節への負担が少ない状態で運動できます。温水プールは、暑さ寒さ問わず一定の環境に保たれた施設ですので、季節を問わずおこないやすいでしょう。
水泳といっても軽い水中ウォーキングからバタフライのような全身運動まで幅広いですが、脂肪燃焼にはゆったりとしたペースで歩くもしくは泳ぐのがよいでしょう。
縄跳び※エア縄跳び(METS 8.0-12.0)
縄跳びは小学生の頃、体育の授業でやったことがある方も多いはずです。縄跳びの消費カロリーは非常に高く、ウォーキングやジョギングよりも高い消費カロリーを得られます。毎分100回~160回くらいのペースで跳ぶのが目安です。
ただし効果が高い分、ジャンプによる関節への負担は大きいので、早く結果を出したいからといって、過体重の方が縄跳びをするとケガをするリスクが高くなりますので注意しましょう。
踏み台昇降(METS 4.0-8.0)
踏み台昇降は天候と場所を選ばない有酸素運動のひとつです。自宅の階段やステップ台など段差を利用すればいつでもどこでもおこなえます。
ウォーキングよりも強度が高いため、消費カロリーも多くなりますし、段差を上り下りすることで同時に足腰のトレーニングも可能です。テンポを速くすればその分強度も上がり、活動量も多くなります。
エアロビクス(METS 5.0-10.0)
エアロビクスは80年代に一大ブームとなった有酸素運動です。音楽に合わせておこなうダンスエクササイズの総称になります。
現在もフィットネスクラブを中心に広くおこなわれており、テンポのよい音楽にあわせておこなうので、ただ黙々とウォーキングしたり、自転車を漕ぐのか苦手な方におススメのエクササイズです。
ダンス(METS 3.0-11.3)
ダンスと一口にいっても、さまざまなジャンルがありますよね。社交ダンスやロック、ジャズ、ヒップホップとスタイルや音楽の違いも含めると消費するエネルギーにはかなりの差がありそうですね。楽しみながら有酸素運動できるという点においても、継続しやすい運動のひとつかもしれません。
トランポリン(METS 3.5-4.5)
近年、有酸素運動中でも流行しているのがトランポリンを使ったエクササイズです。音楽に合わせて弾んだりするレッスンもありますし、ご家庭でお子さんと一緒に遊びながらカロリーを消費できるのでおススメです。
ハイキング(METS 6.0-7.3)
街中を歩くのもよいのですが、森林浴を兼ねて山の中で歩くハイキングはダイエットに加えて心身の癒しにもつながります。ヘルシーなお弁当をもって自然の中でダイエットするのも素敵ですね。
有酸素運動はどれくらいおこなえばよいか?
さまざまな有酸素運動があることはわかりました。しかし一体どれくらいおこなえばよいのでしょうか。
それはどれだけ体重を落としたいのかと、どれくらいの期間でダイエットに取り組むのかという目標によって変わります。
たとえば60kgの女性が、3か月かけて5kgのダイエットに取り組むとしましょう。体脂肪は1kgあたり約7000kcal。それを5kg落とすとなると、
7,000kcal×5kg=35,000kcal
35,000kcalを3ヶ月(90日)かけて落とすには、
35,000kcal÷90日=388kcal/日
運動と食事で半分ずつカロリーを分担すると、
388kcal÷2=194kcal/日
毎日の運動で194kcalを消費すればよいという計算になります。時速4㎞の1時間のウォーキングでは約200kcal弱消費できますので、運動の目安にしてみましょう。
有酸素運動のデメリット
なににおいても一長一短はあるもので、有酸素運動においてもそれは同じです。手軽で脂肪燃焼の効率がよいなどのメリットもありますが、ここでデメリットもご紹介しておきましょう。
- 運動中しかカロリーを消費しない
- やりすぎると筋肉が落ちる
- 部分的(お腹の脂肪だけ)に燃焼できない
といったところでしょうか。長所短所を理解したうえで目的や生活習慣に合わせ、自分の好きな運動を選ぶのが一番のポイントです。
筋トレで得られるダイエット効果
筋力トレーニングはダイエットの強い味方になります。
具体的には、
- 基礎代謝が上がる
- 成長ホルモンの分泌による脂肪燃焼効果
などがあげられます。一度付いた筋肉は減らない限り半永続的に脂肪を燃やし続けてくれます。今頑張れば、将来お腹周りについてしまうはずの脂肪にサヨナラできるかもしれません。
①基礎代謝の向上
トレーニングによって筋肉量が増えると、基礎代謝が向上します。たとえば筋肉量が1kg増える(とても大変ですが……)と約50kcalの基礎代謝UPにつながるのです。
30日で消費カロリーが1500kcalプラスされる計算になります。これは体脂肪にして0.2kg。1年で2.4kg。数字上ではなんと5年で12kg分もの脂肪を燃やしてくれることになります。ここ5年で10kg太ってしまったという方は、筋肉を1kg増やしていれば太らなかったのかもしれません。
筋肉量の増加には、ややきついかなと感じる負荷をかけたトレーニングが必要になります。腕立て伏せやスクワット、腹筋、背筋などの基礎的な種目でもきっちりとこなせば十分に効果はありますよ。
②成長ホルモンの分泌による脂肪燃焼効果
筋トレをすることで「成長ホルモン」が分泌されやすくなり、体内の脂肪(中性脂肪)が脂肪酸とグリセロールに分解されます。脂肪が分解されたあとは、脂肪酸は血液中に放出されエネルギーとして使われる際にミトコンドリアで変換されます。これが脂肪燃焼の仕組みです。
つまり筋トレをした後は、脂肪が分解されて燃焼しやすい状態になっているのです。
筋トレのデメリット
有酸素運動と同様、筋トレにもデメリットはあります。いくつかご紹介します。
- きつい
- 筋肉はすぐにつかない
- 体重が減らないように感じる
ラクな筋トレって、有酸素運動になってしまうんですよね。あまりにも負荷が軽いと、筋トレとしての意味を成しません。デメリットとは少し異なるかもしれませんが「ちょっときついけど、頑張れる」運動を根気よく続けるという基本的なことからは逃げられません。
また筋肉は脂肪に対して比重が重いため、引き締まってきたのに体重が変わらないこともあり得ます。ダイエットでなんとしても「40kg台に!」と考えている女性は少なくないと思いますが、数字よりも見た目での満足度を基準にしていただくほうがよい結果につながりますよ。
目的に沿った運動の組み合わせ方
とにかく痩せてスリムになりたい
ダイエットはなんといっても痩せるのが第一優先です。長い目で見れば筋肉量の維持は必要なので、最低限筋肉量をキープする筋トレと、脂肪燃焼を効率よくすすめられる有酸素運動を3:7の割合でおこなうようにしてみましょう。筋トレは週に2回。有酸素は週に3~5回ほど取り組むのがおススメです。
またタンパク質中心の食事も忘れてはいけませんね。
筋肉をつけてかっこよく引き締めたい
筋肉量を増やしてメリハリのある身体を目指すには、有酸素運動を取り入れる必要性は少ないといえます。それよりも筋トレにしっかりと取り組み、適切な食事管理と一緒にダイエットを進めていくほうがよいでしょう。
より早く結果を出したい方は30分程度の有酸素運動を取り入れて脂肪燃焼をするのも手段のひとつです。
趣味を活用して引き締まったカラダになりたい
趣味でなにかのスポーツに取り組まれている方は、それを継続しながらのダイエットできれば一番よいですよね。たとえばゴルフであれば、いつも乗っているカートを使わずに歩いてみる。ダンスをしているのであれば、筋トレを取り入れて日々の代謝を上げるのもよいでしょう。
自分の趣味に有酸素的要素があれば、筋トレをプラス。ゴルフや野球のように、持続的に走り続ける時間が少ないものであれば有酸素運動をプラスしてみましょう。
まとめ
有酸素運動は脂肪燃焼に効果はありますが、筋力トレーニングのような効果はありません。一方筋力トレーニングは、筋肉の発達・維持に効果はありますが、脂肪燃焼の効果においては有酸素運動よりも劣ります。
ボディビルダーのように特殊な生活をしない限り、筋肉を落とさないように必要以上の有酸素運動を取り入れないのはあまり現実的ではありません。やるやらないかという極端な議論ではなく、2つのいいとこどりをすれば健康的なダイエットが可能になるはずです。
そもそもダイエットに取り組みたいと考えている人の特徴は、食生活が乱れていたり運動不足であることがほとんどです。近所のスーパーやコンビニまでも車。駅までも車やタクシーで送迎。エレベーターやエスカレーターを使うのが当たり前な生活を変えるだけで、わざわざ運動の時間を取らなくても改善できるところはたくさんあるでしょう。
生活の延長ではじめることが継続するためのポイントです。自分のできるところから少しずつはじめてみましょう!
参考文献
1. 厚生労働省. メッツ / METs | e-ヘルスネット. 閲覧2020-09-01,https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-004.html
2. 国立健康, & 栄養研究所. (2012). 改訂版 「身体活動のメッツ (METs) 表」.