WRITER
島袋 好一
トレーナー(寄稿)
最終更新日:2018.12.04
来年は大台節目の100回を迎える、全国高等学校野球選手権大会。
予選から早稲田実業・清宮幸太郎選手の高校通算本塁打の記録更新への期待が高まり、近年にはない注目を浴びていました。
本数の累積の状況から、上手くいけば、甲子園での新記録達成が容易に予測されたからです。
が…その甲斐むなしく、清宮選手率いる早稲田実業は西東京予選の決勝で東海大菅生にあえなく敗退。
スーパースター不在の中、本大会はイマイチ盛り上がりを欠くのではないかと高校野球ファンをやきもきさせたはずです。
49の代表校が決定して組み合わせ抽選が終わると、そんな心配もどこ吹く風で、勝利の女神か、はたまた運命の悪戯か、1回戦から注目カードの目白押しで、いやが上にも必然的な盛況、そして何か波乱めいた展開を予感せずにはいられませんでした。
予感通り、大会は徐々に盛り上がっていきました。
特に歴代優勝校が多数出場した大会4日目は、チケットを買い求めるファンが朝早くから長蛇の列をなし、なんと試合開始1時間半前に完売。
その後も連日、こんな日が続きました。
清宮選手は出場せずとも舞台は広陵高校の中村奨成選手と言うニューヒーローを誕生させました。
中村選手は32年前に清原和博さんがPL学園時代に打ち立てた一大会5本塁打の記録を6本に更新しました。
それだけでも話題は充分だったのですが、加えて今大会は大会新記録となる68本塁打が飛び出し「清宮無くともホームラン・フィーバー」に沸きに沸いた大会となりました。
この68本と言う数字ですが、過去4年間がすべて30本代であったことから推測すると、かなり桁外れの数字で在ることが理解して頂けるかと思います。
この数字に潜む謎解きとも思える情報を、SNSやメディアでかなりの数、目にしました。
「うん、うん」と思わず唸ってしまうようなデータに基づいた論評から、憶測の域を出ないまことしやかなものまで様々でした。
過去のコラムにも投稿させて頂いたように、近年は野球のトレーニング指導に多く関わっているため、その真実が何たるかをこの目で確かめたいという衝動に駆られる日々。
自身では雑誌や記事を読み漁ったり、大会のホームラン動画を血眼になって検証したり…。
そんな行動を繰り返す中で、垣間見てきたものを本日は綴ってみたいと思います。
昭和53年の第60回大会以降、記念大会でない限り48と言う試合数で大会は運営されています。
過去のデータに照らし合わせてみると、各年度おおよそ20本台後半から30本代のホームラン数を推移しています。
これらの数値の閾値から激減したり激増したりする背景には、何かしらの明らかな根拠を見出す事が出来るのです。
例えば木製バットから金属バットへの移行、ラッキーゾーンの撤廃(球場の拡張)、高反発バット(特殊加工されたよく飛ぶバット)の規制、重さの規制や高反発球(よく飛ぶボール)の規制などなど。
しかしながら、今大会の使用球を提供しているメーカーや各種バットを販売しているメーカーからは大きな仕様の変化はないとの見解。
ますます血が騒ぎました。
そうすると、大きな要因はチームの戦術変化や選手の体格の変化にヒントが隠されているという結論に至りました。
2ストライクに追い込まれ、投手有利の状況でのホームランは全体の約20%しかありませんでした。
加えておよそ70%がストレートを痛打。
※ストレートの球速は127km/h~142km/h。135km/h前後が平均的。
打者有利なカウントで果敢に強いスイングをしていたと推測されます。
追い込まれるまではじっくりボールを見て、おっつけて1,2塁間に打つなどといった戦術をとるチームは少なくなっています。
ホームランを打った選手の中で体重60kg台の選手は僅か2名。
160cm台の選手も僅か4名。
これはデータではなく抽象的なイメージであるが、一昔前の身長180㎝前後ある体格に恵まれた選手が放つものではないことは確か。
172~175cmの選手が最も多く、(身長―体重)の数値が103~95ぐらいが平均的でした。
90を逸脱した選手は僅か2名。
大会後の各種メディアの報道で見られた過度な炭水化物とカロリー摂取によっての体重増加がホームラン数に影響をもたらしたいう見解は極めて懐疑的。
適切なトレーニングと栄養摂取で上記した平均的な範囲内の体重でも、技術があればホームランを打つことは可能だと思われます。
一般的にみられる除脂肪体重とヘッド―スピードの相関性は、個人的な変化を比較したものは少ないのが現状。
適切な筋力トレーニングを行い適切な栄養摂取をした結果、筋肥大がもたらす体重増加と過食によってもたらされた体脂肪量の方が明らかに増加しているような体重増加とは一線を画す。
その因果関係については更なる知識の向上とデータ収集を行っていきたいと思います。
ルールや道具の改正と、選手の技術と運動能力向上は常にいたちごっごの関係にあります。
今回収集した資料やデータと睨めっこしていると、まだまだ興味は尽きません。
移りゆく時代の中、我が国のスポーツ史に多大なる影響をもたらしたであろう『高校野球と言う競技と文化』は、こういった数値をみると、大きな変化を必要とする時代に突入したのかも知れませんが、元球児、ファンとしてその行く末を見守りたいと思う今日この頃です。
GronGのLINE公式アカウントをフォローして
新製品情報やお得なセール情報をGETしよう!
その他SNS公式アカウント
WRITER
島袋 好一トレーナー(寄稿)
GronGでは日々SNSを通じて、製品やサービス情報、イベント情報などさまざまな発信をおこなっています。
既に製品をお使いの方はもちろん、はじめてGronGを知ったという方からのフォローもお待ちしております!