リカバリーの栄養素!グルタミンと筋トレの深い関係とは?

「寝る子は育つ」といいますが、子どもって本当に驚くくらいよく眠りますよね。睡眠は身体を回復させるために重要な要素のひとつ。また、睡眠と同じくらい大切なのが栄養です。
「睡眠」と「栄養」の質が高い人は、回復がスムーズになることで日中も精力的に活動できます。そしてなにより健康的な生活を送れます。
ハードに筋トレをする人は、年齢を重ねれば重ねるほど、トレーニングと同じくらい「いかにリカバリーをするか」がカギになってきますからね。
今回のコラムでは、睡眠と栄養において重要な役割を持ち「身体を守るアミノ酸」ともいわれるグルタミンと筋トレの深い関係についてお伝えします。
グルタミンの働き

ストレスに対抗する
体内におけるグルタミンの働きは「ストレス刺激に対して抵抗するためのエネルギー」です。ストレスと聞くとマイナスなイメージを持たれるかもしれません。しかし生きていく上で身体にかかる刺激はすべて「ストレッサー」と呼ばれ、必要なものなのです。
人間関係の精神的負担はストレスの象徴のような存在ですし、「会社での重要なプレゼン」や「人前に立って歌う」などある種の緊張する場面もストレスにあたります。
そしてあなたが一生懸命取り組んでいるであろう「トレーニング」も、実は身体を成長させるための肉体的なストレスです。
ストレス状態を引き起こす「ストレッサー」の種類[1]
外的ストレッサー
- 物理的ストレッサー⇒紫外線や気温、騒音など主に外部環境によるもの
- 社会的ストレッサー⇒経済状況や人間関係など主に社会的な要因
内的ストレッサー
- 心理的ストレッサー⇒個人的な感情(怒り・悲しみ・緊張・不安など)
- 身体的ストレッサー⇒疲労や睡眠不足、健康上の問題など
良い刺激も、悪い刺激も身体にとってはすべてストレスになり、ストレスに負けないためにはグルタミンの力が必要になります。
ストレスは「コルチゾール」と呼ばれるホルモンを出します。コルチゾールの主な働きは、
- 肝臓でグリコーゲンから糖を生成
- 筋肉でタンパク質を代謝(分解)
- 脂肪組織における脂肪分解の促進
- 抗炎症作用
- 免疫抑制作用
などがあげられ、生体にとっては必須のホルモンです。「糖新生や筋肉の代謝(分解と合成)、免疫の抑制」とグルタミンの関わる仕事はたくさんあるのです。
免疫力を維持する
グルタミンはストレスに対抗する細胞のエネルギーと前述しました。
免疫に関わるリンパ球や好中球、マクロファージといった白血球のエネルギー源となったり、細菌やウィルスの侵入を防ぐために、腸自体のエネルギーとしても働きます。
グルタミンは病原から身体を守るために欠かせない栄養素なのです。ストレスフルな社会生活を送る上に、筋トレなどで肉体的な負担が多くなると、通常よりもグルタミンの消費量がグンと増えます。適切な補給をすることで、免疫力をキープするようにしましょう。
筋トレとグルタミンの関係

とくにアスリートやトレーニーにとっては、せっかく鍛えた筋肉が減るのだけは避けたいところ。筋トレ用語で「カタボる※」といったりします。少しわかっている人に使えば通じる言葉です。
※ カタボリック(Catabolic)⇒体内の組織を分解する代謝作用。異化作用ともいう。
運動のエネルギーは糖質と脂質が中心。とくに筋力トレーニングのエネルギー源は主にグリコーゲン(糖源)です。肝臓や筋肉に貯蔵していたり、血中に流れる糖を利用します。
運動強度が高かったり、運動時間が長くなるにつれて、体内にあるエネルギー源だけでは供給が追いつかなくなるため、自らの筋肉を分解(糖新生)して運動のエネルギーを生み出そうとします。身体のメカニズムってすごいですね。
筋トレのジレンマともいえるでしょうか。身体を鍛えることで筋肉を合成(成長)させようとするスイッチが入ると共に、分解しよう(ストレスから守ろう)とするスイッチも入るのです。
筋肉が大きくなるには合成が分解を上回る必要があります。そこでタンパク質やアミノ酸の出番です。とくにグルタミンには、外傷や運動による筋肉の分解を抑制する作用が報告されています[2]。
余分な筋肉の分解を防ぐには、血中のアミノ酸量を一定間隔で十分に満たしておく必要があります。バランスのよい食事に加えて適切なタイミングでの間食が必要になるでしょう。
間食の目安は「トレーニング後から次の食事までの間」「最後の食事から就寝前までの間」にとるようにするのがオススメです。
まとめ
筋トレが好きな人よりも苦手な人のほうが多いでしょう。身体を鍛えることは、それだけ身体に負担がかかることでもあります。
しかし適切に栄養を補給してあげることで、筋肉量や筋力の低下を予防できたり、アンチエイジングにつながったりと良い面があるのも確かなことです。
古代の王様が求めた「不老不死」までは叶わないにしても、より良く自分の人生を生きるためには、運動とリカバリーに取り組んでみるのがよいかもしれませんね。
参考文献
1. 特定非営利活動法人. 日本成人病予防協会「ストレスについて」. 閲覧2020-12-19, https://www.japa.org/mental_health/stress/
2. Petra G. Boelens, Robert J. Nijveldt, Alexander P. J. Houdijk, Sybren Meijer, Paul A. M. van Leeuwen, Glutamine Alimentation in Catabolic State, The Journal of Nutrition, Volume 131, Issue 9, September 2001, Pages 2569S–2577S,