ダイエットに訪れる停滞期!挫折しないための対処法とは?
物事がうまく進まないときってイライラしますよね。大人になり年齢を重ねるほど、パートナーとの関係や仕事においての目に見える成果など、自分のイメージと現実のギャップを感じることが多くなると思います。
なにをやっても努力した分だけ結果が出るような子どもの成長期ならともかく、大人の頑張りにはうまくいかないことがつきもの。辛抱強くやり過ごすには精神力も必要です。
ダイエットにおいても「停滞期」といって何週間も体重の変わらない期間があります。これまでスルスルと落ちていた体重が急激に落ちなくなり、結果が出ないことでストレスが溜まったり、最悪ダイエットをやめてしまう人もいます。
停滞期は出口の見えない長いトンネルのようなものです。しかし打破する方法はいくつかあります。今回のコラムでは、ダイエットを頑張る皆さんの応援をすべく、悩ましい停滞期の対処法をお伝えします。
ダイエットの停滞期とは
食事もコントロールして運動もはじめた。頑張って継続しているし、計算上はカロリーがマイナスになっているのにどうして体重が落ちなくなるのでしょう。
一筋縄ではいかないのが人間の身体。停滞期には身体のかしこいメカニズムが関わっています。
なぜ停滞してしまうのか
「ホメオスタシス」という言葉を聞いたことはありますか?ホメオスタシス=恒常性という意味で、人間には体温や脈拍、血圧など身体の環境を一定に保とうとする調節機能が備わっています。
ある一定期間ダイエットが続き「このままいくと、どんどん体重が落ちそうだぞ」と身体が判断すると、身体の代謝をコントロールして、今の摂取カロリーでも体重を維持しようとするのです。
停滞期はいわば「命を守ろうとする身体の自然な反応」なのです。つまり、ダイエットが順調に進んで痩せていっているからこそ停滞期に入るといえるでしょう。
Leibelらの研究によると、ダイエット開始から10%体重が落ちると消費エネルギーが15%低下。反対に10%体重が増えると消費エネルギーは16%増えたと報告されています[1]。
停滞期はどれくらい続くのか
気になるのは停滞期の継続期間ですよね。いつまでも体重が落ちないとストレスがたまり、多くの方は挫折してしまいます。
停滞期の継続期間にも個体差が大きくあらわれ、短い方で2週間、長い方だと1~2か月以上も体重が変動しない方もいます。 筋肉量や運動量、食事内容を含めた総合的な要素が関わり、さらに遺伝的な要因やホルモンバランスの影響もあるようです。
停滞期を抜け出す方法
チートデイを作る
チートは英語で「だます、ごまかす、ズルをする」という意味です。
言葉だけを見ると、すごく悪いことをしているように感じるかもしれませんが、人道に反するような卑怯なことをするわけではありませんのでご安心ください。
ダイエットを一定期間続けていると脳は「この少ないカロリーで生命活動をやり繰りしなくてはいけないんだ」と判断し、全体の活動量を下げていきます。“チートデイ”は脳に対して「今までセーブしてきたカロリーはダイエットをしているからなんだよ。長くは続かないから、今まで通りエネルギーを燃やしてカロリーを消費してね。」と伝える日なのです。
また運動しながらダイエットをしている人には、筋肉のエネルギー源になるグリコーゲン(糖質がもとになる)を補充する役割があります。
ダイエットで食事を制限していると通常より全体のエネルギー量が少なくなります。食事を節制していることでグリコーゲンが十分に補給されない状態になりますので、身体は不足分のエネルギーを補うために筋肉を分解しようと働くのです。筋肉の減少は代謝を下げてしまうことにもつながりますので、それを予防するという役割もあります。
具体的には、これまでの節制した食事から一旦身体も心も解放して「今日(今回)は好きなものを食べるという日」です。
ただし、なんでも好きなだけ食べていいというわけではなく、普段節制しているものを増やすことが大切です。糖質を節制している人は糖質を。脂質を節制している人は脂質を。それぞれ一時的に許して食べるようにしましょう。三大栄養素のバランスの偏りが続くと、代謝のサイクルがぎこちなくなります。それが停滞を招くのです。
過剰摂取はやはり余分な脂肪の増加を招きますので、チートデイは1日だけ(少食な方は2日までOK)にします。チートデイをおこなって食事の楽しみ喜びを感じた後、必ず翌日以降はこれまでのダイエット食に戻してくださいね。するとまた頑張りやすくなるはずです。
チートデイが必要でない人
「好きなものなんでも食べていいの?」と嬉しい噂を聞くと、ついつい飛びつきたくなりますが、以下に該当する人はムリにチートデイを設ける必要はありません。
- 体脂肪率25%以上の人⇒まだまだ停滞せずに痩せる余地があります
- ダイエット開始後5%以上体重が落ちていない人⇒停滞するまでにはもう少しかかりそうです
少し厳しい現実ですが、ある程度結果が出るまでは自分にご褒美をあげられません。上記を達成するまでは辛抱強く取り組みましょう。
ダイエットを挫折しないために
ダイエットの大敵、それは日々の食欲でもストレスでもなく、最終的に挫折してしまうことです。ダイエットの一番の鍵は「いかに継続できるか」です。
食欲やストレスはたまのチートデイで対処できますが、ダイエット自体が嫌になってしまうとすべてが水の泡。挫折せず、ダイエットのモチベーションをうまく保つために必要な対処をしていきましょう。
ダイエット休みの日を作る
数か月にわたるダイエット期間の間、ずっと食事を管理し続けるのは肉体的にも精神的にもツライものがありますよね。できるだけうまく負担を逃がし、ストレスをためずにダイエットを継続するためにも「ダイエットそのものを休む日」を設けて、リラックスできるように工夫していきましょう。
この日のポイントは「精神的なストレスの開放」です。「せっかく頑張ってきたのに、ここで食べちゃっていいの?」という声も聞こえてきそうですが、心配は無用です。
たとえば、1日に5,000kcalもの食事を摂った後、体脂肪の増加はなかったという研究があります[2]。5,000kcalといえば成人男性の必要なカロリーの約2倍です。想像しただけでも、食べるのが大変そうですよね。たった1日の食事制限ですぐに痩せないように、すぐに太りもしないのです。太らないことさえわかれば後は安心です。
またストレスはコルチゾール※というホルモンを分泌させます。コルチゾールは筋肉の分解を招いてしまいます。ダイエット中はストレスを招きやすいので、ダイエット休みの日は三大栄養素や細かいカロリーコントロールは気にしないようにしましょう。
※コルチゾール:副腎皮質ホルモン。生体がストレス受けると分泌量が増える。免疫系や中枢神経系に作用する。うつ病患者はコルチゾール値が高いこともわかっている。また筋肉を分解してエネルギーを作ろうとする働きも持つ。
たとえば、20週間(4~5ヶ月程度)で目標のダイエットを終えようとしているなら、期間をあえて24週間に設定して6~8週間ごとにダイエット休みを入れてみましょう。そうすれば、ずっとダイエットしなければいけないという強迫観念もなくなり、ダイエットによるストレスも少しは軽減できるでしょう。
ダイエット休みの目安については以下の表を参照ください。
男性(体脂肪率) | 女性(体脂肪率) | 食事休憩の頻度 |
---|---|---|
<10% | 18% | 6~8週間ごと |
10~15% | 18~23% | 8~12週間ごと |
15%超 | 23%超 | 12~16週間ごと |
長期間で設定する
短期間での大幅な体重減少は、身体に大きな負担をかけます。結果として体重が落ちたのはいいけれど、同時に筋肉も失っていることが多いです。前述したダイエット休みもそうですが、長い目で見ることが重要なポイントになります。
また急激な減量により「パンっ」と張っていた皮膚がたるんだり、シワが出てしまうのは見た目にも美しいダイエットとはいえませんよね。ダイエット直後は痩せても、その後基礎代謝が下がったままでリバウンドしやすくなっていたり、厳しい食事制限をしていた反動で食生活が乱れてしまうことも考えられます。
いずれにせよ、身体は急激な変化にはうまく対応しきれないことが多いので、健康的なダイエットとはいえないでしょう。
1~2か月で劇的な変化を生むようなダイエットではなく、半年~1年後にカラダに対する考え方や価値観が変わっているダイエットが理想的ではないでしょうか。そうすればその後も、体型をキープするための食事や運動が「習慣」に変わっており、以前の生活に戻ることのほうが難しくなるかもしれません。
まとめ
停滞期はダイエットに限らず、さまざまな場面で起こります。
ビジネスや人間関係も同じです。ダイエットとその他が異なるのは自分の意志である程度コントロールできるという点です。対象が人間関係や景気ではないので、自分のコントロールではどうにもならない不特定要素が少ないんですね。ダイエットは自分に関することをマネジメントすることが可能です。でもそこが一番難しいのですが……。
ダイエットで適切な自己管理を身につければ、他の分野の停滞期もうまく乗り越えられるのではないでしょうか。健康的なダイエットをきっかけに変わった人は、身体だけでなく心や性格まで前向きに変わっていくのかもしれません。
参考文献
1. Leibel, R. L., Rosenbaum, M., & Hirsch, J. (1995). Changes in energy expenditure resulting from altered body weight. New England Journal of Medicine, 332(10), 621-628.
2. Acheson KJ, Schutz Y, Bessard T, Anantharaman K, Flatt JP, Jéquier E. Glycogen storage capacity and de novo lipogenesis during massive carbohydrate overfeeding in man. Am J Clin Nutr. 1988;48(2):240-247.