アルギニンとは?主な役割と不足しないための食べ物

子どものころに「大人の能力があればいいな」と思ったことはありませんか?
大人にはできて、子どもにはできないことってたくさんありますよね。体力的なことから物理的なものまで、小さいながらに「大人ってすごいな」と憧れたものです。
心身ともに大人へと成長していく過程で、可能になることのひとつが「アミノ酸を体内で合成する」ことです。子どものときに「アミノ酸を合成したいな」とは思いませんが、実は身体にとっては非常に大切なこと。アルギニンというアミノ酸は成長にかかせないといわれています。
それではアルギニンとはいったいどのようなアミノ酸なのでしょうか。今回のコラムで解説していきます。
アルギニンとは

日ごろ、エナジードリンクを飲む方は「アルギニン」という言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか。コンビニでも手軽に買うことのできるこのドリンクは、毎日を頑張る人の定番となりましたよね。
アルギニンはヒトの身体を構成するアミノ酸20種類のうちのひとつで、非必須アミノ酸に分類されます。
ただし冒頭でもお伝えしたように、大人になれば体内で合成できるようになるアミノ酸で、身体が未発達段階にある子どもにとっては欠かせない「必須アミノ酸」なのです。このことから「準必須アミノ酸」「条件付き必須アミノ酸」といわれることもあります。
また年齢とともにタンパク質の合成能力は低下するといわれています。アルギニンもアミノ酸の一部なので例外ではなく、必要量が高まるのです。
アルギニンの役割
アルギニンの主な役割は、シトルリンというアミノ酸とともに「尿素回路(オルニチン回路)」の一因として働くことです。身体に有害なアンモニアを無毒化して、体外に排出するために重要な役割をはたします。
この代謝過程で、一部のアルギニンから一酸化窒素(NO)が作られるのがポイントです。一酸化窒素には血管拡張作用があり、血流の改善が見込めます。また血球の血管壁への接着抑制や血管肥厚の予防にもなるため、しなやかな血管を保持する作用があります[1]。
アルギニンは一酸化窒素の前駆物質となるため、間接的に血管に作用するといえるでしょう。
他には、脳の下垂体に作用して成長ホルモンの分泌を促す働きがあります。個人差はあるものの、成長期をピークに分泌が低下するといわれる成長ホルモンは、アルギニンやオルニチン、リジンというアミノ酸によって分泌が促進されます。
つまり睡眠中の身体の回復や、筋肉の合成を後押しするための貴重な栄養素でもあるのです。
アルギニンが不足すると
前述したようにアルギニンは、血管の機能維持や成長ホルモンの分泌に欠かせないアミノ酸です。
不足することで想定されるのは、動脈硬化や血栓症など血管に関わる病気と、成長ホルモンの不足による身体の疲れや筋肉の減少ではないでしょうか。

成長ホルモンの分泌は10歳以降の成長期に大幅に高まります。成長期のピークをすぎると次第に下降気味になります。筋力トレーニングなどの運動によって分泌を促進しない限り、筋肉の合成や身体の回復能力は低下していくのです。
日本国内や海外でもアルギニンに関する明確な摂取基準は示されていないものの、タンパク質を中心とした食事をとっていないとアミノ酸全体の不足になりかねません。
成長期では、体内でアルギニンの合成ができません。お子さんの年代によっては「必須アミノ酸」に該当しますので、普段の食事から十分な量を摂取する必要があります。アルギニンが多く含まれる食べ物は、
- 大豆
- 鶏
- 豚
- 卵
- マグロ
- ごま
- 牛乳
などです。さまざまな食べ物から摂取するようにしましょう。
まとめ
アルギニンをはじめとする各種アミノ酸は「健全な心身の成長」を支えるうえで欠かせないものです。
非必須アミノ酸は大人になれば合成できるとはいえ、子どものときに不足していては本末転倒。小さいころに築いた食習慣は、大人になったとしても多分に影響を受けることでしょう。
経験を重ねて成熟した考えをもつことと、若さに満ちた肉体のピークを一致させるのは難しいかもしれません。しかし知識や習慣を身につけることは何歳からでも可能です。
子育て中の方やお子さんに関わるお仕事に関わる方はもちろん、大人になってからトレーニングや仕事で日々がんばる方も、今一度アルギニンパワーを見直してみましょう。
参考文献
1. 一般社団法人 日本血栓止血学会. NO(一酸化窒素) 用語集(詳細説明). 閲覧2020-09-22, https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=121