ダンベルフライのやり方 | ダンベルプレスとの違いは?
ダンベルを使った大胸筋のトレーニングで、最も代表的な種目といえば“ダンベルプレス”ではないでしょうか?
誰しも1度はおこなったことがある「腕立て伏せ」を、裏返したような動作でおこなう馴染み深さも、多くのヒトがダンベルプレスを実践する理由のひとつなのかもしれません。
プレス系の種目は、複数の筋肉(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋)・関節(肩関節・肘関節)を動員しておこなうので、慣れてくれば高重量を扱えるようになります。
日々トレーニングをおこなう楽しみ、効果を実感できる指標の一つが「使用重量のアップ」であることは間違いありません。しっかりスケジュールを守ってトレーニングを実践し、順調に挙上重量はアップしているのに……。
「あれれ?」
トレ-ニングをおこなって効いているのは肩や腕ばかり。肝心の胸の筋肉は思うように発達していない……というようなご経験はありませんか?
そんなとき、ダンベルプレスの動作をベースに新たな種目としてトライしやすく、胸の筋肉により強くアプローチできる種目が「ダンベルフライ」です。
今回のコラムでは、「ダンベルプレスとダンベルフライ」の違いを解説し、ダンベルフライをより効果的に実践する方法をご紹介します。
ダンベルフライのやり方
- 両手にダンベルを持って膝の上に置き、ベンチ台に仰向けになります。
- 手のひらを向かい合わせて肘を伸ばします。
- 肘を軽く曲げて左右にゆっくりとダンベルを開きます。ダンベルは胸の一番高い位置あたりまで下ろし、元の位置まで閉じます。
- 足の反動を使って起き上がります。
ダンベルプレスとダンベルフライの違い
図1:ダンベルフライとダンベルプレスの運動
続いて、図1を参考にダンベルプレスとダンベルフライをおこなう際の、ダンベルの軌道を比較し2つの種目の違いを検証してみます。
ダンベルプレスにせよダンベルフライにせよ、メインターゲットとなる大胸筋の主な作用は腕を閉じることです。そのため両種目ともに胸の筋肉が収縮すると上腕(肩から肘までの腕の部分)の軌道は弧を描きます。
では、末端に握られたダンベルの軌道はどうでしょうか?ダンベルプレスは斜め上にスライドするような軌道となるのに対して、ダンベルフライは上腕延長線上の手のひらまでの距離の更に大きな弧を描いて動きます。
またダンベルプレスが肩と肘の2関節の回転運動によってダンベルを移動させるのに対し、ダンベルフライは肘関節をロックし肩関節のみの回転運動でダンベルを移動させます。
ダンベルプレスは上腕を閉じる大胸筋、三角筋と肘を伸ばす上腕三頭筋の共同作業でダンベルを動かすのに対して、ダンベルフライは上腕プラス前腕(肘から手首までの腕の部分)を、大胸筋と三角筋のサポートでダンベルを動かしています。
要約するとダンベルプレスは、複数の関節と筋肉を使い「合理的に重いものを持ちあげる作業」。作業の合理性は高いが、主役の筋肉が少しないがしろになる種目といえます。
一方ダンベルフライは、単一の関節で複数の筋肉を使い「少し不合理に、重いものをより重く感じながら持ち上げる作業」。作業の合理性は低くなるが主役の筋肉がスポットライトを浴びて存分に活躍できる種目といえるのです。
ダンベルフライを上手くおこなうコツ
肘を伸ばし過ぎない
ダンベルフライで多くのヒトが起こしやすいフォームの間違いは、「ヒジの伸ばしすぎ」にあります。
関節の回転運動はテコの原理と同じです。ダンベルフライの動作中の回転軸(支点)は肩関節にあり、力を出している主要な筋肉は大胸筋、ダンベルを握り重さの抵抗を受けているのが手のひらです。
基本的には肘を伸ばせば伸ばすほど回転軸からダンベルは遠ざかり、同じ重さのダンベルを扱ってトレーニングをおこなったとしても、大胸筋が感じる負荷は高くなります。
しかしながら肘を伸ばしすぎてしまうと、三角筋や上腕二頭筋(本来は肘を曲げるための筋肉。ダンベルフライの動作中は、肘の角度をキープするために伸縮せずに力を発揮している)への負担が強くなりすぎてしまうため、大胸筋に的確な刺激が伝わりずらくなってしまいます。
肘の角度は、ダンベルプレス(肘の角度は90度)よりも外側に開いていれば、大胸筋の作用は高くなると理解しておきましょう。
ダンベルを深く下ろし過ぎない
次に多い間違いが、動作中に可動域を大きくとろうとするあまり、「ダンベルを深く下ろしすぎる」ことです。
たしかに可動域を大きくすれば大胸筋のストレッチ感は強くなりますが、それは同時に肩関節への負荷を高めることにも繋がります。オーバーストレッチは怪我のリスクも高くなります。
ダンベルは胸の位置まで開けばしっかりと負荷はかかっていますので、可動域には充分に注意してください。
ダンベルの可動範囲は90~180度
続いて、ダンベルを戻してくる位置ですが、ダンベルがカラダの真ん中でぶつかる位置まで戻してしまうことがよくあります。しかし胴体に対して腕が90度よりも内側に倒れてしまうと、大胸筋への負荷は抜けてしまいます。
ダンベルの可動範囲は90~180度の位置でコントロールしながらおこなうように心がけましょう。
※負荷の作用を考え、1セットあたりの回数は15~20回を目安に、重さよりも筋肉のコントロールを意識してトレーニングをおこなってください
まとめ
今回のコラムでは、ダンベルプレスとならび胸を鍛える代表的な種目「ダンベルフライ」について解説しました。
動作はよく似ていても、実は「似て非なる」2つの種目。関わる関節や筋肉、簡単な物理的作用を理解することでより効果的なトレーニングを実践できます。
「ノーブレイン・ノーゲイン」
“考えなくして、筋肉の発達はない”という意味の金言です。今回のコラムを参考に、「使用重量だけにこだわらず」よりスマートにトレーニングライフを充実させてください。