寝違えの原因と予防・対策について
朝起きて「首が痛い…」となってしまったこと……私はあります。皆さまも一度くらいは経験がありませんか?
寝違えてしまった日に、車を運転したり、誰かに呼び止められたりして振り返るのはなかなかツライものですよね。
今回のコラムでは、寝違えの症状と原因、予防・対策など、さまざまな疑問にお答えしていきます。
寝違えの症状
寝違えは起床時に首から肩にかけて痛みを感じます。動作に伴い痛みを感じることが多く、場合によっては腕に痛みを感じて、しびれの症状が出ることもあります。
寝違えは大きく分けて以下の3種類です。
肉離れ
肉離れとは、筋肉に負荷がかかることで筋線維や周辺の筋膜に損傷が生じる状態です。一般的な寝違えはこれに該当し、症例も多いです。
首を右に動かしたときに右が痛ければ筋肉の中心部、反対の左が痛ければ筋肉を覆う筋膜周辺部の痛みという風に判断したりします。筋膜の損傷のほうが治癒に時間がかかるケースが多いです。
神経痛
頸椎という首の骨に負担が掛かり、関節が圧迫されることによってしびれや痛みを伴う場合があります。骨の変形や椎間板の圧迫が起こりやすい姿勢をとることで起こりやすくなります。
捻挫
ソファーで寝たり、合わない枕で極端に首に負担がかかるような姿勢で寝ると、骨を支える腱・靱帯という軟部組織に過度な負担がかかり、炎症を起こしやすくなります。
寝違えが起こる原因
寝違えは首の筋肉や関節に過度な負担がかかることで起こります。
就寝時には身体と脳を休ませるため、全身の血流量が低下し、筋肉は少し硬くなります。目覚めたときには、身体がこわばっているような感覚になると思いますが、これは血流量を下げて筋肉を休ませているからなんです。
筋肉が休んでいるときに寝相が悪かったり、身体に合わない寝具を使っていたりすると、首にかかる負担が大きくなります。これによって寝違えが起こりやすくなるのです。
寝違えやすい人の特徴
姿勢(猫背・ストレートネック)
頭の重さは体重の10%程度といわれています。もちろん体格や骨格にも差はあります。しかしそれだけ重たいものが身体の一番上にあることに変わりはありません。
ボウリングの球が6ポンド~16ポンド(約2.72キロ~約7.25キロ)ですので、デスクワークなどで前かがみの姿勢を続ければ、猫背になり首や肩に負担がかかるのも容易に想像できるはずです。
とくに最近では、パソコンやスマートフォンの普及により、画面を覗き込むような姿勢が原因でストレートネック※になる人が急増しています。
ストレートネックにより首を支える関節のクッションとしての役割が少なくなり、必要以上に首や肩に負担が掛かっている姿勢を生むのです。
※ストレートネック:本来あるべき首の自然な前弯が失われた状態のこと
首~肩こり
デスクワークに限らずとも、首こりや肩こりに悩む人も少なくありません。長時間の過緊張状態によって、血行が悪くなった筋肉は柔軟性を失ってしまいます。
これに加えて、就寝時に身体を休ませるため、末梢への血流量が低下した状態が重なれば、寝違えを起こす条件が出そろってしまうというものです。
寝違えは肉離れや捻挫といった「怪我」の一種です。とくに疲労がたまり、動きにくくなっている筋肉や関節は、負荷に対応する力が弱くなっています。
寝違えの予防と対策
では、どのように対策をすれば寝違えを予防できるのでしょうか。
睡眠姿勢を整える
睡眠時間の個人差はあれど、一日のうち約3分の1から4分の1は寝て過ごします。なのでその環境を整えるだけでも、身体にかかる負担は大きく変わります。
就寝着や寝具を見直すのもよいでしょう。就寝着は身体を締め付けないようなリラックスしたものがおススメです。快適な環境づくりを心がけましょう。
また睡眠環境に左右されるのが「寝返り」です。適度な寝返りは身体の疲れを取ったり、汗のかき方を調整したり、寝具内の温度を適切に保ったりするために必要なことです。
寝相のよい人は筋肉が動かないまま寝ているので、緊張して凝りやすく、寝違えを起こしやすいとされています。
寝返りをする際には背骨のカーブが自然な形であることがとても大切です。合わない高さの枕や、硬すぎたり柔らかすぎる布団(もしくはマットレス)は楽な寝返りがしづらくなります。以下に紹介するものを参考になさってください。
枕
ポイントは「首のカーブの負担を減らすこと」にあります。
上向きで寝るときは、肩口から頭が10~15度の傾斜の状態となります。うなじと床の間に生まれる隙間を埋めるような枕が適切です。
横向きで寝るときは、背骨のカーブが床と平行に保たれることを目安にします。
首には上半身の動きをつかさどる神経が集まっていて、頸椎のカーブに負担が掛かると、神経の出口を圧迫しやすくなります。起床時に寝違えやしびれなどの症状が頻繁にある場合は、枕の高さや大きさ、素材を見直すのがよいでしょう。
寝具
マットレスや寝具においては硬さが重要になります。
体圧分散といって睡眠時に身体にかかる圧力には部位別で大きな差があります。
柔らかすぎて身体が沈み込んだり、硬すぎて特定の場所に負担がかかり、頻繁に寝返りを打たなくてはいけない寝具は避けるようにしましょう。
一般的に体格の大きい方や、運動習慣のある方は硬め。細身だったりあまり運動習慣のない方は柔らかめのマットレスがよいでしょう。ただし好みや感覚は分かれるため、ある程度の目安としてお考えください。
冷やさない
「寝違え」は筋肉が硬くなることで起こりやすくなります。冷えることで筋肉は硬直して血行が悪くなります。筋温が下がりすぎないように気をつけましょう。
夏場は冷房の設定温度を調節したり、冬場は首元を冷やさないように温めるようにして、筋肉の温度調整を心がけましょう。
深酒をしない
アルコールは入眠をスムーズにする一定の作用はありますが、飲みすぎはNGです。
酩酊状態だと、ソファや床でそのまま寝てしまうこともあるでしょう。また身体の感覚が鈍くなるので、寝返りの回数が少なくなります。いずれも身体に負担がかかるので、適切な量を心がけましょう。
もし飲みすぎてしまった場合は、アルコールによる脱水を防ぐため、水分をしっかりとって血流の低下を防ぎましょう。ミネラルの入ったスポーツドリンクや経口補水液もおススメです。
まとめ
寝違えにはさまざまな原因と背景があります。
とくに日常生活で多くの時間を割くであろう「仕事」「睡眠」の環境を整えることが、身体に積み重なる負担を軽減することになるのです。首をこまめにほぐしたり、寝具の見直し、スマホやPCを使う時間を減らすことなどが大切です。
小さなことの積み重ねで身体は、良くも悪くもなります。身の回りからできることで対策をして、寝違えの予防につとめてみませんか。