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クレアチンの摂取タイミングと飲み方を知る【トレーニー必見】

島袋 好一
最終更新日:2022.07.11
島袋 好一
トレーナー(寄稿)

筋トレをライフワークとして積極的に取り入れている方なら、「クレアチン」という栄養素の存在を、一度はお聞きになったことがあるのではないでしょうか?

ヒトが食物から栄養素を摂り入れる目的はさまざま。主たる目的は、

  1. 体を動かすエネルギーになる
  2. 体の骨や組織、筋肉などのかたちをつくる
  3. 体の機能を調節し、コンディションを整える

の3つで、クレアチンの役割のひとつは「体を動かすエネルギーになる」ことです。筋トレのシーンならベンチプレスやスクワットで、重いバーベルをあげるためのエネルギーとして活用されています。

クレアチンの存在自体は知っているものの、「いつ、どのくらい、なんのために?」までは、詳しく理解していない……。そんな方のために今回の記事では、クレアチンの摂取タイミングと摂り方・飲み方について解説いたします。

トレーニーが知っておきたい栄養素「クレアチン」とは?

クレアチンとは有機酸の一種で、体内で作り出すことも、食物から摂取することもできます。

体格による固体差はあるものの、ヒトの体内に80g~130g程度存在。95%はリン酸と結合し、クレアチンリン酸(CP)として骨格筋に蓄えられています。

スポーツや筋トレをおこなう際に、骨格筋を動かすためのエネルギーは以下の3つに分類できます。

  1. 数秒足らずで、酸素を必要としない瞬発的な動き(高強度)で活用するエネルギー
  2. 数十秒継続し、酸素を必要としない素早い動き(中強度)で活用するエネルギー
  3. 長時間継続し、酸素を必要とする、ゆっくりとした動き(低強度)で活用するエネルギー

クレアチンリン酸は、「数秒足らずで、酸素を必要としない瞬発的な動き(高強度)で活用するエネルギー」です。

クレアチンをエネルギーとして利用するメカニズム

1~3のいずれの動きにせよ、エネルギーとなるのはATP(Adenosine Tri-Phosphate:アデノシン三リン酸)と呼ばれる化合物です。

このATPは食物から摂取した栄養素が、人体でさまざまなプロセスを経て構造を変え、筋肉や脂肪、肝臓などの細胞や臓器にストックされています。最終的にはATPを生成して活用されますが、用途に合わせ、あらかじめストックされる化学的構造(脂肪、グリコーゲンなど)とエネルギー量が違うのです。

ストックされたATPは分子量の大きさで、エネルギーを供給できる時間が長くなります。図1は、そのエネルギー量を模式化しタンクの大きさで示したものです。

ATP エネルギー供給

ではもう少し、クレアチンがエネルギーとして利用されるメカニズムについてミクロな解説を加えてみましょう。

アデノシン三リン酸(ATP)は、アデノシン(アミノ酸と糖がくっついた化学物質)と3つの無機リン酸から構成されています。

アデノシン三リン酸(ATP)の説明

筋肉は瞬発的に素早く動こうとするとき、ATPをエネルギーとして利用します。ATPからひとつのリン酸が離れるとき、エネルギーが放出されます。

アデノシン三リン酸(ATP)とアデノシン二リン酸(ADP)の説明

このとき、リン酸がひとつとれたので、ATPはADP(Adenosine Di-Phosphate:アデノシン二リン酸)となっています。

※ADPのdiはギリシャ数字の2をあらわしています。1はMono、2はDi、3はTri。

残念ながら、筋肉にATPはごくわずかな量しか存在しないためにスグに枯渇してしまいます。そこで、筋肉中にあるクレアチンリン酸から、リン酸をもらってエネルギーにします。

ATPの説明

しかしクレアチンのサポートをもってしても、瞬発的な動き(高強度)で活用するエネルギーは8秒前後という短時間で、エネルギーの供給をストップしてしまうのです。

その他、人体の異なるエネルギーシステムと筋肉の種類の解説を交えて、更に詳しく「クレアチン」について解説します。

以下、図と質問から筋力発揮後の結果をイメージしてみてください!アナタが勾配の少しキツイ坂道を歩いていたら、前からドラム缶が次から次へと転がってきました。

A:ジャンプ力MAXなら何個連続でかわせるでしょうか?

B:ジャンプ力MAXの半分程度なら?

C:歩きながら、跨ぐ程度のジャンプ力なら?

クレアチン 筋力発揮後の結果

きっとジャンプをやり終えたあとには、このような結果が待ち受けているはずです。

Aなら、自分の持てる限りの筋力を使ってジャンプすれば数回で疲労困憊。

Bなら、余力ある筋力でジャンプできたとしても一定回数がくれば疲労困憊。

Cなら、ジャンプすることに筋力の影響も少なくかなりの回数をこなせ、疲労も少ない。

Aのようなサイズのドラム缶を連続ジャンプでかわすときは、悠長に呼吸をする間はありません。速やかに反応し、収縮速度が早く大きな力を出せる速筋が使われます。

そのためにエネルギーをスピーディーに供給できるATP-CP系を活用。しかしこの筋肉は大きな力を出せても、スタミナがありません。自身MAXのジャンプを数回跳べば、その高さもどんどん落ちてくると想像できると思います。

Bのようにある程度の筋力を保ちながら、一定時間エネルギーを供給しなければならない場合は中間筋が使われます。

ATP-CP系ではATPの供給を賄いきれないため、あらかじめ体内に蓄えられているグリコーゲンを活用。連続する筋収縮でも酸素の供給が間に合わない場合は、中間筋と解糖系が活用されます。ただし酸素を供給せずにエネルギーを活用すると同時に乳酸が生成されてしまいます。

※たとえば腕立て伏せを限界までおこなうと、次第にプルプルと腕が震え出し、局所的にロックがかかります。腕がパンパンに張って動かなくなる状態は、乳酸が溜まったサインです。

Cのように、日常の「歩く」動作の延長線上にあるような「ジャンプ」であれば、会話も呼吸も可能です。酸素を取り込みながら遅筋を使い、グリコーゲンと脂肪を分解してATPを長時間供給できます。

これまでの解説を総括すれば、筋肉に存在する「クレアチン」がエネルギー源として優秀な栄養素であるかをご理解いただけるかと思います。

クレアチンはどのように摂ればいいのか?

クレアチンは、体内で3種類のアミノ酸(アルギニン、グリシン、メチオニン)から、主に肝臓や腎臓内で合成されます。体内で合成されるクレアチンは、必要量の半分程度といわれ、不足分は食事から補う必要があります。

クレアチンは生肉や生魚に多く含まれますが、加熱調理の過程で含有量は減少します。

種別名称含有量(g/kg)
魚類ニシン6.5~10
魚類サケ4.5
魚類マグロ4.0
魚類タラ3.0
魚類カレイ2.0
肉類豚肉5.0
肉類牛肉4.5
その他野菜微量
その他果物微量

図1:食品に含まれるクレアチン

図1をご覧ください。クレアチンを効果的に摂取できる食品は、魚類や肉類です。

日常生活において特段強度の高い労働や、瞬発的な筋力を発揮するトレーニングやスポーツを実践されている方でなければ、三度の食事でバランスの良い食事を心がけていれば、不足する可能性が低い栄養素だと思われます。

しかしながら常習的にそのような環境下に身を置かれる方は、クレアチンがエネルギーとして使用され不足しがちになります。調理や摂取の方法を考慮して、積極的な摂取を心がけるようにしましょう。

クレアチンと筋トレの親和性

皆さんが筋トレをおこなう理由といえば、どんなものがあげられるでしょうか?

ある方は「筋肉をつけて格好いいカラダになりたい」、またある方は「パワーアップしてスポーツの競技能力をあげたい」。いずれの理由にせよ、自身のカラダや身体能力に大きな変化をもたらすには、現状の限界点を突破し、それ相応の負荷を筋肉にかけていかなければなりません。

では、相応の負荷とは、どれくらいの負荷なのでしょうか?

上半身の代表的な筋トレ種目「ベンチプレス」や下半身の代表的な筋トレ種目である「スクワット」も、コツコツと地道にトレーニングを積めば、やがては自分の体重より重い重量が扱えるようになります。

つまり相応の負荷とは、日常生活では到底かかろうハズがない負荷のことです。

筋肉が最大限の力を発揮しようとすれば、前述したドラム缶の例のように当然、速筋を動員しATP-CP系のエネルギーをカツカツまで使用します。通常体内にプールされていた「クレアチン」は、1g~2g/日排泄されていくので、日々その不足分の半分を体内で生成、残りの半分は食事から補っています。

しかし高強度の筋トレをライフワークとして実践していれば、「クレアチン」が慢性的な不足状態に陥っていても不思議ではありません。普遍的な筋トレの原理・原則のひとつ過負荷(オーバーロード)の原理※1に準じても、クレアチンの需要度は、より高まると考えられるのです。

肉や魚といった食品の含有量を鑑みれば、必要量を充足するための過剰な摂取は、消化器官の相当な負担となるのは必至。では、どのようにすれば効率よく「クレアチン」を摂取できるのでしょうか?

※1 過負荷(オーバーロード)の原理:筋肉を大きくするには、現状よりもさらに重い負荷でトレーニングしなければいけない

クレアチンの摂取方法と摂取タイミング

クレアチンを効果的に摂取する方法のひとつは、クレアチン・モノハイドレート(クレアチンー水和物)を摂取することです。

クレアチンの摂取の目的は、適切な量を継続的に摂取し体内の貯蔵量を増加させることです。摂取の方法には2つの方法が有効とされています。

1. ローディング+メンテナンスによる摂取

※短期間にクレアチンの体内貯蔵量を増加させる摂取方法。

  1. クレアチン20g/日を4回~5回に分け、5日~7日間摂取し、クレアチンの貯蔵量を増加させる。(ローディング期)
  2. その後、2g~5g/日を摂取することで、クレアチンの貯蔵量を維持する(メンテナンス期)

ローディング(短期間の多量摂取)のみの摂取で、メンテナンス(継続的な少量摂取)をおこなわなければ、貯蔵量は低下していくため、メンテナンス期の継続摂取も重要。

2. 低用量3g/日の長期摂取(ローディングなし)

※クレアチンの体内貯蔵量を徐々に増加させる方法

  1. クレアチン3g/日を継続的に摂取する。

この摂取方法でおおよそ4週間で、ローディングした場合と同等量の貯蔵量に達する。

クレアチンは糖質と同時に摂取する

いずれの方法にせよ、一定期間継続して摂取すれば、同等のレベルまで体内貯蔵量を増加できるといわれています。

クレアチンは、体内に貯蔵される過程では浸透圧性の特徴をもちます。そのため消化器官に不調をきたし下痢などを引き起こす可能性があり、身体への負担を考慮した場合、低用量(3g/日)での長期摂取が推奨されているのです。

摂取のタイミングは双方ともに、糖質と同時に摂取するのがよいでしょう。糖質を摂取すると「インスリン」というホルモンが分泌されます。

クレアチンはそのインスリンによって筋肉中に取り込まれます。そのため、インスリン感受性※2が高まる食後か、トレーニング後においてはクレアチンを糖質と同時に摂取することが推奨されています。

※2 インスリン感受性:筋肉や肝臓に糖質をエネルギーとして引きこもうという状態

まとめ

多くのトレーニー達が「筋トレによさげ」と知りつつも、なかなか深くを知らない栄養素「クレアチン」について解説してみました。

サバンナで狩りをする肉食獣。チーターやライオンは瞬発的に筋肉を稼働させ、獲物を捕えます。その目的は自らの生命を維持し、種を未来永劫へと繋ぐこと。獲物から得たエネルギーは、またその狩りで躍動する筋肉へのエネルギーへと循環します。

では食物連鎖の頂点に君臨する最も知恵のある動物である「人間」はというと、しばしその筋肉を、時には自己を顕示するアイテムのひとつとして、またあるときには生きがいや生業のツールなどなど……。

明らかにサバンナの肉食獣とはかけ離れた機能・能力を筋肉に期待せずにはいられない動物なのです。

そんな筋肉への果てなき渇望の前に「クレアチン」は、さぞかし魅力的に映るに違いありません。

しかしながら瞬発的な筋力が、絶対的優位に働くであろう競技やスポーツにおいて、ビーガンやベジタリアンといったチャンプやレコードホルダーも数多く存在するのです。

そう、「クレアチン」は内因性の生成※3ができる化合物。生まれながらに体内での合成力に優れ、クレアチンを多く含む食事の多量摂取に頼らずとも、クレアチン由来のエネルギーを安定供給できる体質のヒトもたしかに存在するのです。

期待や成果を焦るあまり安易に、過度な摂取に踏み切ってはいけません。ますは、バランスの取れた食事を中心に、自身の体質や目的に応じた正しい摂取を心がけましょう。

※3 内因性の生成:自らの体内で生成できること

参考文献

1. Jagim, A. R., Stecker, R. A., Harty, P. S., Erickson, J. L., & Kerksick, C. M. (2018). Safety of creatine supplementation in active adolescents and youth: A brief review. Frontiers in nutrition, 5, 115.

2. Saremi, A., Gharakhanloo, R., Sharghi, S., Gharaati, M. R., Larijani, B., & Omidfar, K. (2010). Effects of oral creatine and resistance training on serum myostatin and GASP-1. Molecular and cellular endocrinology, 317(1-2), 25-30.

3. Hultman E, et al. Muscle creatine loading in men. J Appl Physiol (1985). 1996 Jul;81(1):232-7.

4. 一般社団法人日本スポーツ栄養協会. 第2回「クレアチンの摂取方法・安全性」 | スポーツ栄養Web. 閲覧2020-10-26, https://sndj-web.jp/news/000688.php

5. 大槻純男. (2015). クレアチン欠損症の輸送蛋白質局在異常機構の解明. 上原記念生命科学財団研究報告集, 29, 1-4.

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島袋 好一 トレーナー(寄稿)
この記事を書いた人
島袋 好一
トレーナー(寄稿)

トレーナー。体育学修士、JATI-AATI(上級トレーニング指導者)保有。トレーニング歴は30年にも及ぶ。「知識と実践の融合」、「担がざるもの教えるべからず」を最大のテーマに日々のセッションに対峙。専門学校講師時代は最大年間1000時間以上の座学、実技の講義及び運動指導者資格の対策講座を担当。

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