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HMBで痩せるのか?ダイエットとの関係について解説

坂口 真由香
最終更新日:2022.07.12
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

ダイエットをはじめると少しでも楽したくなることでしょう。

最近話題のHMBを聞いたことありますか?「HMBを摂取すると痩せる」という憶測が飛び交っているようです。期待を寄せてここにたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

意外にもHMBの歴史は古く、多くの研究報告があります。しかしながらさまざまな意見があり効果について賛否両論あるようです。

今回のコラムではHMBのダイエットについて報告されている論文を紐解きながら解説します。

HMBとは

HMB(beta-hydroxy-beta-methylbutyrate:β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)とは、BCAAのひとつであるロイシンの代謝産物です。

ロイシンが酵素の働きによって代謝され「KIC(α-ケトイソカプロン酸)」となります。KICはさらに酵素(α-ケトイソカプロン酸デヒドロゲナーゼ)によって代謝され、多くはイソバレリルCoAとなります。別の酵素(α-ケトイソカプロン酸ジオキシゲナーゼ)によって代謝されたKICがHMBとなるのです。ロイシンの約5%がHMBに代謝されるといわれています。

HMBとは

ロイシンは運動による筋肉の合成や分解時に重要なアミノ酸のひとつです。ではなぜ?ロイシンやHMBがここまで注目を浴びるのか解説します。

筋肉は細胞の集合体です。細胞の核にある遺伝情報(DNA)をもとにタンパク質がつくられています。しかしながら細胞内にあるDNAの情報は簡単に外へ持ち出すことが難しく、そこで登場するのがメッセンジャーRNA。メッセンジャーRNAが細胞内の遺伝情報をコピーしてタンパク質がつくられます。コピーしてタンパク質がつくられる過程を「翻訳」といいます。翻訳のスイッチ役となるのが「mTOR(エムトール)」という物質です。

mTORは、近年注目されている物質で、運動やトレーニングによって活性化され、「転写(情報のコピー)→翻訳(タンパク質をつくる過程)→タンパク質の合成」の過程を促進します。同時に、タンパク質の分解を促進するユビキチンプロテアソームという酵素を抑制するといわれています。

この過程に対して、HMBは、運動によって刺激させる筋タンパク質の合成時の材料としてだけでなく、分解時には守りに入ることから、運動による筋肉アップ時の栄養補給として期待されているのです。

HMBダイエットの是非

HMBダイエットの是非

では本題、HMBとダイエットの関連はどうなっているのでしょうか?

ダイエットするとなれば、誰しもメリハリのある美ボディを目指したいですよね。美ボディの要となるのが筋肉。つまり美しい身体を手に入れたいなら「筋肉を維持もしくは増量しながら脂肪を落とす」ことが重要です。

また人間が消費するエネルギーには体温維持や呼吸など生命活動を維持するための「基礎代謝」。日常生活動作やスポーツなど体を動かすことによってエネルギーを消費する「生活活動代謝」。そして食べ物を消化するための「食事誘発性熱産生」があります。

ダイエットといえば運動でエネルギー消費しようとしがちです。しかし最もエネルギーを消費しているのは基礎代謝で、エネルギー消費全体の60%を占めているのです。基礎代謝は筋肉による熱産生が多くを占めており、代謝量は筋肉量に比例します。

つまり筋肉を鍛えて基礎代謝を上げることはダイエットで重要なのです。その意味で運動刺激による筋タンパク質の合成の材料となり、分解においては守りに入るHMBは運動によるダイエットの手助けとなるかもしれません。

HMBの研究報告

HMBを摂取したグループとプラセボを比較した研究では、HMBを摂取したグループは筋力トレーニングにおける筋肉アップに貢献する可能性があると報告されています[1]

HMBはあくまでも、筋肉の材料であり、身体の保護として働きます。運動せずにHMBを補給した場合、身体に大きな差は出ないようです[2]。つまり筋肉を大きくすることもダイエットも運動や筋肉トレーニングをすることが大前提なのです。

またサッカー選手を対象とした研究でも、パフォーマンスの向上のサポートとして有用である可能性が報告されています[3]。一方アスリートのように日頃からトレーニングで強化している方では、HMBの摂取による体感は得にくいという意見もあります[3]

HMBにはメリット・デメリットとさまざまな意見がありますが、とくにアスリートのような激しいトレーニングをする方には、あまり期待できないといわれています。

最近の報告によると、HMBカルシウムをレジスタンストレーニング中に補給すると、とくにトレーニング経験のない被験者の間では、理想の身体づくりとして有用であることが示唆されています。

また現在確立されているHMBの推奨量は、1日あたり1.5gです。3g摂取するとメリットも期待できる一方で、さらに増量してもそれ以上のメリットは期待できない?といわれています。

アスリートのHMBの使用についてはさまざまな見解がありました。日頃から激しいトレーニングをしている場合、ただ摂取するだけでは十分でないようです。

ボート選手(16名)を対象とした研究では、HMBカルシウム水和物を摂取した結果、ダイエットサポートにはなったとしても、アスリートとして理想としている身体づくりのサポートには及ばないと報告しています[4]

また男性アスリート(58名)を対象とした研究では、HMBカルシウム水和物を長期間補給した結果、理想の身体づくりとして有用であったと報告されています[5]。さらに格闘家を対象とした研究では、HMBカルシウム水和物を長期間補給した結果、強い身体づくりのサポートとなることがわかりました[6]

これらのことから国際スポーツ栄養学会は、トレーニング経験が少ない場合は比較的短い期間、アスリートのように激しいトレーニングをおこなっている場合、より長い期間のHMBを摂取をお勧めすると述べています[7]

国際スポーツ栄養学会はHMBの効果について下記のように述べています[3][7]

  1. HMBはトレーニングによる理想の身体づくりのサポートとして期待ができる。
  2. HMBは筋肉トレーニング後の身体のコンディショニングのために必要な栄養素の可能性がある。
  3. トレーニング初心者の方が短期的にトレーニング効果のサポートとしてのメリットが得られやすい一方、熟練したトレーニーの場合、長期的な摂取が必要。

まとめ

HMBにはさまざまな見解がありました。ダイエットの要となる運動効果による筋肉の増加や体脂肪量の減少時に必要な栄養素として期待ができそうでした。

効果を体感するためにはトレーニングが必須で、トレーニング歴や強度によってもさまざまでしたね。ご自身の状況に合わせて摂り入れてみるのもよいかもしれません。

ただしHMBに過度な期待をすることはオススメできません。ダイエットの基本は食事と運動です。食事バランスが崩れていては元も子もありません。

参考文献

1. Nissen, S., Sharp, R., Ray, M., Rathmacher, J. A., Rice, D., Fuller Jr, J. C., … & Abumrad, N. J. J. O. A. P. (1996). Effect of leucine metabolite β-hydroxy-β-methylbutyrate on muscle metabolism during resistance-exercise training. Journal of Applied Physiology, 81(5), 2095-2104.

2. Nissen, S., Panton, L., Fuller, J., Rice, D., Ray, M., & Sharp, R. (1997, February). Effect of feeding beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) on body composition and strength of women. In FASEB JOURNAL (Vol. 11, No. 3, pp. 875-875). 9650 ROCKVILLE PIKE, BETHESDA, MD 20814-3998 USA: FEDERATION AMER SOC EXP BIOL.

3. Wilson, G. J., Wilson, J. M., & Manninen, A. H. (2008). Effects of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) on exercise performance and body composition across varying levels of age, sex, and training experience: A review. Nutrition & metabolism, 5(1), 1-17.

4. Durkalec-Michalski, K., & Jeszka, J. (2015). The efficacy of a β-hydroxy-β-methylbutyrate supplementation on physical capacity, body composition and biochemical markers in elite rowers: a randomised, double-blind, placebo-controlled crossover study. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 12(1), 31.

5. Durkalec-Michalski, K., & Jeszka, J. (2016). The effect of β-hydroxy-β-methylbutyrate on aerobic capacity and body composition in trained athletes. Journal of Strength and Conditioning Research, 30(9), 2617-2626.

6. Durkalec-Michalski, K., Jeszka, J., & Podgórski, T. (2017). The effect of a 12-week beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) supplementation on highly-trained combat sports athletes: A randomised, double-blind, placebo-controlled crossover study. Nutrients, 9(7), 753.

7. Kerksick, C. M., Wilborn, C. D., Roberts, M. D., Smith-Ryan, A., Kleiner, S. M., Jäger, R., … & Kreider, R. B. (2018). ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 15(1), 38.

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坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
この記事を書いた人
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。

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