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HMBの効果は嘘なのか?「HMBとはなにか」を正しく理解しよう

前田 修平
最終更新日:2020.10.15
グロング専属 鍼灸師

「不老不死」は古代文明における王様の永遠のテーマだったそうです。なんとしてもその命と若さを保つために、王様に仕える者たちは、なにかよいものはないかと東西南北に奔走していたといいます。

現代を生きるみなさんは「加齢による〇〇……」「〇〇は老化現象が原因で……」とネガティブな言葉を並べられたらどんな気持ちになりますか?ほとんどの人はイヤですよね。

人はこの世に生まれたその瞬間から「老い」がはじまっているという表現があります。しかしいつまでも若々しく健康的でありたいのは、誰しも一度は望むことでしょう。

情報に敏感な方はその中でも「HMB」という成分について聞いたことがあると思います。「筋肉を増やす?」「老化の予防に効果的?」などと耳触りのよい言葉が並びます。はたしてその実情やいかに。

今回のコラムでは「HMB」に関する基礎的な知識を解説し、その噂の真偽について言及します。

HMBとは

HMBの正式名称は「β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸」といいます。身体に欠かせない必須アミノ酸のひとつである「ロイシン」が、体内にて代謝される過程で作られるものです。

2015年に厚生労働省が作成した「日本人の食事摂取基準」にも「筋肉におけるたんぱく質合成を誘導する重要な働きをすると想定されている。」とあります[1]。国の公文書に掲載されるくらいですから、みなさんも少し期待しますよね。

実際にHMBはなんなのかというと、「身体へのシグナル」を発します。代謝に関わる仕組みに作用することで、筋肉の分解を抑制(できるだけ筋肉を残してください)して、筋肉の合成を促進する(筋肉を増やしてください)スイッチを押すような成分なのです。

HMBの実際

一部で「飲むだけで痩せる」「飲むだけで筋肉がつく」といったような拡大解釈のキャッチフレーズが広まってしまい、さまざまな憶測が飛び交うことになりました。このような例はかなり飛躍してしまったものですが、本当のところはどうなのでしょう?

結論からいうとHMBは「身体へのシグナル」であり、それ以上でもそれ以下でもありません

たとえばタンパク質においても、筋肉を構成するのに重要な栄養素である事実に変わりはありません。だからといって、筋トレをしなくてもタンパク質の多い食事をすれば、勝手に筋肉がつくわけではありませんよね。

HMBも元をたどれば身体を構成する「アミノ酸のロイシンが代謝されたもの」です。つまりは栄養素の一部であり、薬剤のような作用があるわけではありませんから、決して勘違いしないようにしましょう。

HMBに関する研究結果

HMBに関する研究結果

HMBを求める方で最も多いのはハードにトレーニングをおこなっている層でしょうか。

2013年の国際スポーツ栄養学会(ISSN)のガイドラインでは、プロテインやEAA、クレアチンを推奨する他に「筋肥大・筋損傷の回復・加齢による筋肉減少の予防・脂肪量の減少」についてHMBも推奨されています[2]

このガイドラインはHMBに関する80以上の研究を調査した結果ですので、客観的なデータとしては十分でしょう。コンマ何秒、数センチの差が勝敗を分けるアスリートにとっては、すこしでも基礎体力を高めておきたいと考えるのは自然なことかもしれませんね。

冒頭でHMBは「ロイシンの代謝産物である」と解説しました。まずはHMBのもとであるロイシンの研究結果からご紹介しましょう。

2013年におこなわれた日本の高齢女性155人を対象とした研究で、週2回の筋トレとロイシン高配合の補助食品を1日2回、3ヶ月間摂取したグループでは筋肉量や歩行速度、筋力が有意に改善したという報告があります[3]

こちらは前述した厚生労働省の資料にも掲載されており、適度な筋力トレーニングとHMBのもとであるロイシンの筋肉合成との関係を示唆している内容です。

HMBについてのアメリカのある研究では、70歳以上の地域在住高齢者に対して、筋トレの継続とあわせて1日3gのHMBを補給してもらったところ、筋肉量と筋力の増加が期待できるかもしれないという報告もあります[4]。高齢者は代謝機能の低下や筋肉量の減少は避けては通れないポイントであり、非常に気がかりな内容でしょう。

一方で、HMB自体にはあまり効果がないとする研究もあります。

40名の男性に週3回、8週間の筋力トレーニングをおこなってもらいながらHMBの摂取を継続したのち、最大筋力と炎症マーカーの測定をおこなった研究においては、有意な差が認められなかったという報告があります[5]

また1日あたり3gのHMBの摂取をしながら、6週間の筋力トレーニングをおこなった群において、プラセボ群との差が認められなかったという研究もあります[6]

HMBはここ20年余りで注目されている成分であり、前述のような研究結果についても賛否あるのが実情です。トレーニングの強度や摂取するタイミング、量についても明確な基準がないため、最終的にはあくまでも個人の体感がベースになるといえるでしょう。

ひとつの栄養素や成分においては「どのような活動をして、どのような食生活を送ったか」を考慮せずに、評価をするのは難しいですよね。どんな方法論にも必ず賛否両論ありますから、必ず自分が利用する目的を明確にしておきましょう。

まとめ

HMBは合成を促進する神経伝達回路の活性化や、分解を抑制するためにスイッチを押すという「キッカケづくり」の成分です。

仮にスイッチが入ったとしても、体内に十分なアミノ酸がなければ、筋肉の合成や分解には機能しませんので「飲むだけで〇〇」という考えは改めなければなりません。今回ご紹介した研究データからもHMBは、運動や十分なタンパク質摂取あっての成分だといえるでしょう。

まずは包括的に身体をとらえて、基本の食生活を整えることが第一優先です。

参考文献

1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2015年版).

2. Wilson, J.M., Fitschen, P.J., Campbell, B. et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB). J Int Soc Sports Nutr 10, 6 (2013).

3. Kim HK, Suzuki T, Saito K, et al. Effects of exercise and amino acid supplementation on body composition and physical function in community-dwelling elderly Japanese sarcopenic women: a randomized controlled trial [published correction appears in J Am Geriatr Soc. 2012 Mar;60(3):605]. J Am Geriatr Soc. 2012;60(1):16-23. 

4. Vukovich MD, Stubbs NB, Bohlken RM. Body composition in 70-year-old adults responds to dietary beta-hydroxy-beta-methylbutyrate similarly to that of young adults. J Nutr. 2001;131(7):2049-2052.

5. Teixeira FJ, Matias CN, Monteiro CP, et al. Leucine metabolites do not attenuate training-induced inflammation in young resistance trained men. J Sports Sci. 2019;37(17):2037-2044.

6. Slater G, Jenkins D, Logan P, et al. Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) supplementation does not affect changes in strength or body composition during resistance training in trained men. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2001;11(3):384-396.

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前田 修平 グロング専属 鍼灸師
この記事を書いた人
グロング専属 鍼灸師

GronG TEAM GEAR(チームギア)所属の鍼灸師。鍼灸師、CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)保有。学生時代、自らの度重なるケガ・不調の経験から、質の高いケアができる施術家を志す。鍼灸・リハビリテーションのケア分野はもちろん、パーソナルトレーナー、フィットネスインストラクターとしても活動。これまでの臨床現場ではアスリートから運動経験のない方まで、さまざまな症例を述べ1万5000件以上担当。

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