アミノ酸スコアとは?スコアが高い食品・食べ物
反芻(はんすう)動物である牛は、胃が4つもあります。胃の中でエサに含まれる窒素からタンパク質を合成できるので、わざわざアミノ酸を食べなくてもいいといわれています。
一方、二足歩行を獲得した人間は、コンパクトな身体を求めて進化したため「体内での栄養素の合成をあきらめたのではないか?」との説があります。人間は牛のようにはいかず、アミノ酸を食品から補給しなければなりません。
体内での栄養素の合成はあきらめましたが、人間は知恵を獲得しました。身体にとって必要な栄養素を考え、選択できます。
「アミノ酸スコア」は、人体に不可欠なアミノ酸を効率よく摂り入れるための指標です。アミノ酸スコアを理解することで、よりバランスのよい食生活が望めるでしょう。
それではアミノ酸スコアついて詳しく見ていきましょう。
アミノ酸とは
地球上には500種類以上のアミノ酸があるといわれています。
そのうち人間を含めた動物は、20種類のアミノ酸から構成されます。DNAに刻まれた遺伝情報をもとに(アミノ酸の配列が書かれている)、配列や結合の仕方を駆使し、たった20種類のアミノ酸から約10種類のタンパク質を合成し、皮膚や臓器などを作っています。その他、酵素やホルモンもアミノ酸から作られており生命維持に欠かせない栄養素なのです。
日本においては、健康的な食生活をしていればアミノ酸の不足はほとんど心配ないといわれており、アミノ酸不足による身体への悪影響を体感することはあまりないでしょう。
しかしながら発展途上国では、アミノ酸の不足による栄養不良が課題。たった一種類のアミノ酸が不足するだけでも、DNAの設計図どおりに身体を作れずに、支障をきたしてしまうのです。
つまり人間にとって20種類のアミノ酸が充足することはとても重要なのです。
20種類のアミノ酸には、体内で合成できるものと合成できないものがあります。体内で合成できるアミノ酸を「非必須アミノ酸」、合成できないアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼んでいます。
伸びてきた爪を切ったり、髪の毛が抜けて新しい髪の毛が生えるように、筋肉などの臓器も常に分解と合成を繰り返して新しい組織へと生まれ変わっています。
具体的な数字をあげると、1日に少なくとも70gものタンパク質が体外に出ていきます。よって1日に出ていくタンパク質を食事から補う必要があり、アミノ酸を豊富に含んだタンパク質食品を選択することがポイントです。そしてタンパク質食品を選択するときのひとつの目安となるのが「アミノ酸スコア」なのです。
アミノ酸スコアとは
20種類のアミノ酸のうち9種類が体内で合成が難しい必須アミノ酸。9種類の必須アミノ酸がしっかりそろっているか点数にしたものを「アミノ酸スコア」といいます。9種類のアミノ酸がしっかりそろった食品には満点が与えられ、「アミノ酸スコア100」という称号が与えられるのです。
逆に赤点ギリギリの食品も存在します。どうして点数が悪いとよくないのでしょうか?下の画像(桶)をご覧ください。
一つひとつの板をアミノ酸に見立てています。左の図は、すべてのアミノ酸が十分に満たされており、桶の水(タンパク質)がこぼれないようになっています。つまり体内で十分なタンパク質をつくれる状態です。
一方右の桶はバリン、トレオニン、リジンが不足。一番少ないリジンの高さまでしか水(タンパク質)は溜まってくれません。どんなに他のアミノ酸がそろっていようと、リジンが極端に少ないだけで十分なタンパク質が合成できないのです。
お米や小麦などの穀類はリジンの含有量が少ないといわれています。このような必須アミノ酸が不足している食品だけを栄養源にしていると、栄養不足となってしまいます。
発展途上国のガーナではトウモロコシ粥が代表的な離乳食です。しかしながらトウモロコシ粥だけでは十分な栄養が補給できないため、子どもの低身長や貧血などの栄養不良が問題となっています。
食品のアミノ酸スコア
それでは代表的な食品のアミノ酸スコアを見ていきましょう。
食品 | アミノ酸スコア |
---|---|
牛肉 | 100 |
豚肉 | 100 |
鶏肉 | 100 |
鶏卵 | 100 |
あじ | 100 |
まぐろ | 100 |
えび | 100 |
牛乳 | 100 |
チーズ | 100 |
ヨーグルト | 100 |
大豆 | 100 |
納豆 | 100 |
精白米 | 93 |
食パン | 51 |
パスタ(乾燥) | 49 |
中華麺(生) | 53 |
うどん(生) | 51 |
蕎麦(生) | 84 |
コーンフレーク | 22 |
じゃがいも | 83 |
にんじん | 76 |
しめじ(生) | 79 |
WHO/FAO/UNU 報告[1]、文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)[2]より算出
100点の食品から、赤点と言わざるを得ない食品がありますね。アミノ酸スコア100未満の食品は桶のどこかしらに凹みがあり、それだけではアミノ酸が十分とはいえません。
100点を獲得している食品は、主に肉や魚といった動物性食品です。実は、動物も人間とおなじ20種類のアミノ酸でつくられています。穀類の中でもとくに小麦やトウモロコシはリジンやトリプトファンが少なく、スコアが低くなっているのです。
解決策はないのでしょうか?
アミノ酸のバランス
実はアミノ酸スコアが100に満たない食品であっても心配ありません。さまざまな食品と組み合わせてバランスよく食べるだけでアミノ酸スコアがアップします。
たとえば朝食はパンとコーヒーなんてことをしていると、アミノ酸スコア51のため十分とはいえません。ですが、満点の卵や牛乳と一緒に食べるだけで凸凹な桶の隙間を埋められ、アミノ酸のバランスがよい食事となるのです。
まとめ
肉や魚などの動物性タンパク質や畑のお肉といわれる大豆は100点でしたね。一方でアミノ酸スコアが低い食品は、さまざまな食品と組み合わせることでカバーできました。
アミノ酸スコアが低い食品は、主に小麦やお米などの穀類。穀類は人間のエネルギー源となる食材です。アミノ酸は少ないかもしれませんが、生命活動に不可欠な栄養素です。
栄養素には適材適所があり、多くの栄養素をバランスよく摂り入れることがポイント。自身にとって必要な栄養素を知り、選択することが大切ではないでしょうか。
参考文献
1. World Health Organization, & United Nations University. (2007). Protein and amino acid requirements in human nutrition (Vol. 935). World Health Organization.
2. 文部科学省. 日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編 第2章 第4表.