おしゃれ野菜「チコリ」の栄養と効能について

フランスでは、古くから親しまれているチコリ。
最近、日本でも出回るようになり、見た目はスプーンにのる白菜といったところでかわいらしく、チコリの中に刻んだ野菜を入れた一口サイズのオードブルは、見た目もかわいくおしゃれでインスタ映えするお料理ですね。
こちらの記事では、そんなおしゃれ野菜「チコリ」の栄養と効能についてご紹介します。
チコリとは?

フランスをはじめとするヨーロッパ諸国で、薬草や食材として古くから食べられてきたチコリ。
フランスではチコリの根、葉、花、すべてを食するようです。また根を乾燥させて焙煎したコーヒーは、戦後、コーヒーが手に入らない時代だけでなく、カフェインを含まないことから子どもからお年寄りまで幅広く今日まで愛されてきました。
日本でよく見かけるチコリは、芽の部分で独特の苦味があり食べにくいといわれていました。しかし「軟白栽培」という紫外線を遮断して栽培する方法で育てることで、程よい苦味と白くてやわらかく食べやすくなっています。
加熱すると苦味が増すといわれていますが、最近のチコリは工夫された栽培方法により、サラダやソテーなど生でも加熱しても美味しくいただけます。
チコリに含まれる栄養

ヨーロッパ諸国で古くから愛されているチコリには、一体どのような栄養・効能があるのでしょうか。
チコリの栄養価は、100g当たり16kcalと食物繊維が豊富でとてもヘルシーです。
チコリの根から抽出された成分やイヌリンという食物繊維をラットに与えた実験では、便に脂質やコレステロールが排泄されたことで脂質代謝が改善したと報告されています[1]。
さらに日本人を対象とした研究では、焼チコリの根から抽出した成分を摂取することで、HbA1c(糖尿病の指標)や血圧、排便リズムの改善、動脈硬化や糖尿病を予防するといわれている「アディポネクチン」という生理活性物質の分泌が増加していました[2]。
その他、2型糖尿病の女性と対象とした研究でも、HbA1cや血圧、ASTとALPといった肝機能の指標となる値が改善したと報告されています[3]。
とてもヘルシーなチコリには、健康に寄与する成分が豊富に含まれていそうですね。それではチコリの代表的な栄養成分をご紹介していきましょう。
イヌリン
チコリには、「イヌリン」という食物繊維が豊富に含まれています。
このイヌリン、腸内環境改善効果、血糖値の上昇抑制効果などが多くの研究で報告されています。またイヌリンを摂取することで食欲抑制ホルモンが分泌され、体重減少を認めた報告もありダイエット効果も期待できそうです[4]。
さらに、ラットや人間を対象としたいくつかの研究では、カルシウム吸収が促進され骨の形成が活性化したと報告されています。
チコリ酸
「チコリ酸」というポリフェノールの一種が含まれいます。このチコリ酸、抗酸化作用や肝臓機能を促進する働きで知られています。
肝機能促進
肥満のラットの実験では、体重減少や血清脂質、インスリンの抵抗性の改善を認めました。
またAST、ALTといった肝機能の指標が低下しており、脂肪肝が改善したと報告されています。チコリ酸を摂取することで、インスリン抵抗性や肝障害、炎症などが改善したことで抗酸化防御システムが強化され、肥満を抑制できたと考えられています[5]。
抗酸化作用
別の研究では、チコリ酸がROS(活性酸素種)の蓄積を抑えたと報告されています[6]。
ROSは体内で、
- 脂質
- タンパク質
- 酵素
- DNA
などと反応して脂質の酸化を促進したり、酵素の働きを妨げたり、DNAを変異させるなどガンや老化に関わる物質です。このROSの蓄積を抑制できれば老化予防「アンチエイジング効果」が期待できるというというわけです。
その他の栄養
その他にもチコリには、カリウムやビタミンB6、マンガンといったビタミン・ミネラルも含まれています。
カリウムは体内の水分調整役であり、利尿作用があることからむくみ改善などが期待できます。ビタミンB6は、皮膚形成やセロトニン、ドーパミンなどの神経伝達物質の合成に関わるビタミンです。またマンガンの必要量は少なく不足の心配はありませんが、記憶力に関わるミネラルで、脳にとっては大切な栄養素です。
まとめ
チコリにはかわいさだけでなく、魅力的な栄養素がたくさん含まれていました。
その中でもとくにイヌリンは、健康に寄与する働きで注目されています。食の欧米化が進み、日本人の食物繊維不足は大きな課題です。
食物繊維を取り入れるためのひとつの手段として、チコリを摂取するのもいいのではないでしょうか。
参考文献
文部科学省. 食品成分データベース.
1. Kim, M., & Shin, H. K. (1998). The water-soluble extract of chicory influences serum and liver lipid concentrations, cecal short-chain fatty acid concentrations and fecal lipid excretion in rats. The Journal of nutrition, 128(10), 1731-1736.
2. Nishimura, M., Ohkawara, T., Kanayama, T., Kitagawa, K., Nishimura, H., & Nishihira, J. (2015). Effects of the extract from roasted chicory (Cichorium intybus L.) root containing inulin-type fructans on blood glucose, lipid metabolism, and fecal properties. Journal of traditional and complementary medicine, 5(3), 161-167.
3. Farhangi, M. A., Javid, A. Z., & Dehghan, P. (2016). The effect of enriched chicory inulin on liver enzymes, calcium homeostasis and hematological parameters in patients with type 2 diabetes mellitus: a randomized placebo-controlled trial. Primary care diabetes, 10(4), 265-271.
4. Parnell, J. A., & Reimer, R. A. (2009). Weight loss during oligofructose supplementation is associated with decreased ghrelin and increased peptide YY in overweight and obese adults. The American journal of clinical nutrition, 89(6), 1751-1759.
5. Xiao, H., Xie, G., Wang, J., Hou, X., Wang, X., Wu, W., & Liu, X. (2013). Chicoric acid prevents obesity by attenuating hepatic steatosis, inflammation and oxidative stress in high-fat diet-fed mice. Food research international, 54(1), 345-353.
6. Schlernitzauer, A., Oiry, C., Hamad, R., Galas, S., Cortade, F., Chabi, B., … & Cros, G. (2013). Chicoric acid is an antioxidant molecule that stimulates AMP kinase pathway in L6 myotubes and extends lifespan in Caenorhabditis elegans. PLoS One, 8(11).