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極端な糖質制限は危険?もち麦を活用してGI値を低く抑えよう!

坂口 真由香
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)
最終更新日:2021.04.19

糖質制限がダイエットのセオリーのようになりつつある現代。コンビニやスーパーにも「糖質オフ」、「糖質ゼロ」などのパッケージがたくさん並んでいます。

糖質を減らすことは単純、簡単であることから多くの人が飛びついているように思います。たしかに糖質を過剰に摂取すると血糖値の上昇や肥満を招くおそれがあるのも事実。はたして極端な糖質制限は危険ではないのでしょうか。

今回のコラムでは糖質制限の危険性について解説しながら、話題のもち麦活用法まで解説します。

糖質制限とは

糖質制限とは

糖質制限は、アメリカのロバート・アントキンス医師の提唱がはじまりといわれています。

自身が太りだしたことを気にしていたところ、ある会社が肥満の従業員にさせていた食事に驚愕しました。なんと彼らに提供されていた食事は、1食当たりの炭水化物量20gと定められ、パンなどの主食をとことんカットし肉ばかり食べていたのです。

そこからヒントは得て「炭水化物を可能な限り減らし、肉・魚・卵、野菜を積極的に食べる」食事法をまとめた著書『Dr. Atkins’ Diet Revolution』は1500万部と空前の大ヒットを成し遂げ、これが今もなお脚光を浴び続ける糖質制限の始まりです。

ただ糖質をカットすることで体重が減るという極めて簡単な方法。誰しもが飛びつき日本でもブームを巻き起こしました。これがダイエットのセオリーのように糖質制限が推奨される理由ではないでしょうか。

通常、糖質を摂取すると血糖値は上昇。血糖値が上昇するとインスリンと呼ばれるホルモンが分泌され、肝臓や筋肉などの細胞にブドウ糖を取り込みエネルギーとして利用します。余ったブドウ糖は、インスリンの働きによってグリコーゲンや中性脂肪として蓄えられます。

つまり糖質を過剰に摂取すると脂肪合成が高まることから太りやすくなるのです。糖質制限ダイエットはこの理論を逆手にとり、糖質を減らすことでインスリンの分泌を減らす方法です。

糖質を制限しすぎると死亡率が上昇

糖質を制限しすぎると死亡率が上昇

そもそも1日にどれくらいの糖質が必要かご存知でしょうか。一般的にエネルギーの50%~65%は炭水化物から摂ることが推奨されています[1]

炭水化物摂取量と健康との関係を調べた研究によると、炭水化物食の割合が高い場合も低い場合も健康に良くないとされており、50%〜55%の炭水化物摂取で健康が維持されました[2]

また炭水化物を減らす場合、減らした分をタンパク質と脂質で補うことになります。牛肉や豚肉、鶏肉などの動物性由来のタンパク質と脂質で置き換えた食事パターンと、植物性タンパク質およびナッツや全粒粉パンなどに置き換えた食事パターンでは、後者のほうが健康が維持できたとも報告されています。

オーストラリアの中年女性を対象した研究によると炭水化物制限は、果物やシリアル、食物繊維を豊富に含む主食の摂取量低下と関連していました。これらの食品群の摂取量低下は、2型糖尿病のリスク上昇とも関連していたと報告されています[3]

そのほか、極端な糖質制限は糖質のかわりに脂質が大幅に燃焼されるため「ケトーシス」と呼ばれる状態に陥りやすくなります。この状態になると、脱力感や眠気など不調をきたすことがあるため注意が必要です。

大麦などの穀類は健康維持につながる?

大麦などの穀類は死亡リスクを低下させる?

糖質は身体とても大切で、欠かすことのできない栄養素だとおわかりいただけたでしょうか。では適度に糖質を摂り入れならがらGI値を抑えていく方法はないのでしょうか。

その鍵を握るのが「もち麦」などの大麦です。もち麦には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維の消費は、健康維持につながるといわれています[4]。大麦にはβ-グルカンが含まれており、身体によい働きがあるといわれています[5]

セカンドミール

セカンドミール効果

セカンドミールとは、“最初に食べた食事が次の食事に影響する”ことです。

たとえば朝食にもち麦を食べるとβ-グルカンのパワーによって昼食のGI値も抑え、食物繊維のパワーが持続するというものです[6]。ごはんに混ぜたり、サラダやヨーグルトなどにトッピングして朝からもち麦生活をはじめるのもよいかもしれませんね。

まとめ

糖質制限など「なにかを抜いたら、なにかを食べたら」というような方法は、ただ抜いたり、摂り入れたりすればよいため簡単です。しかし人間の身体は、そんな単純なものではありません。多くの栄養素が、さまざな臓器で助け合いながら働いています。なにかを抜けば、支障をきたすかもしれません。

また今回ご紹介したもち麦だけでなく、

  • 穀類
  • 野菜
  • 海藻
  • 果物

に食物繊維は豊富に含まれています。毎日摂り入れてみてくださいね。

参考文献

1. 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2. Seidelmann, S. B., Claggett, B., Cheng, S., Henglin, M., Shah, A., Steffen, L. M., … & Solomon, S. D. (2018). Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis. The Lancet Public Health, 3(9), e419-e428.

3. Rayner, J., D’Arcy, E., Ross, L. J., Hodge, A., & Schoenaker, D. A. (2020). Carbohydrate restriction in midlife is associated with higher risk of type 2 diabetes among Australian women: A cohort study. Nutrition, Metabolism and Cardiovascular Diseases, 30(3), 400-409.

4. Katagiri, R., Goto, A., Sawada, N., Yamaji, T., Iwasaki, M., Noda, M., … & Tsugane, S. (2020). Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based prospective study. The American journal of clinical nutrition, 111(5), 1027-1035.

5. Behall, K. M., Scholfield, D. J., & Hallfrisch, J. (2004). Diets containing barley significantly reduce lipids in mildly hypercholesterolemic men and women. The American journal of clinical nutrition, 80(5), 1185-1193.


6. Wolever, T. M., Jenkins, D. J., Ocana, A. M., Rao, V. A., & Collier, G. R. (1988). Second-meal effect: low-glycemic-index foods eaten at dinner improve subsequent breakfast glycemic response. The American journal of clinical nutrition, 48(4), 1041-1047.

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坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。

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