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ダイエット中にEAA(必須アミノ酸)は必要か?

坂口 真由香
最終更新日:2022.07.12
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

筋肉で引き締まった身体が美の象徴となってきました。街中にはトレーニング施設が建ち並び、ジム通いも生活の一部となりつつあります。

トレーニングに欠かせない栄養にも関心が高まり、プロテイン市場は拡大。最近ではBCAAやEAAなどの特定のアミノ酸にも注目が集まっています。なにをどう選択すべきか?お悩みの方もいらっしゃるでしょう。

今回のコラムでは「ダイエット中におけるEAAの重要性」について栄養素に立ち戻って解説します。

EAAとは

20種類のアミノ酸

EAA(Essential amino acids )は日本語で必須アミノ酸。自然界にアミノ酸は500種類以上存在するといわれており、そのうち20種類が人間を含む動物のタンパクを構成するアミノ酸です。

人間をつくる20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できるものを非必須アミノ酸。体内で合成できないアミノ酸を必須アミノ酸と呼んでいます。必須アミノ酸は、

  • バリン
  • ロイシン
  • イソロイシン
  • ヒスチジン
  • リジン
  • メチオニン
  • フェニルアラニン
  • スレオニン
  • トリプトファン

の9種類が該当します。必須アミノ酸は体内で合成できないため、食事で補給しなければなりません。

これら9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸の計20種類がそろい、筋肉や内臓、血液といった人間の身体がつくられます。たった1種類でも不足するとエラーがおこるため、20種類すべてを取り入れることが重要なのです。

現実問題、十分な栄養補給をおこなえない発展途上国では、必須アミノ酸などの栄養不足により命を落としてしまう子どもがいることも忘れてはならない事実です。

現在の日本において、普通の食生活をしていればアミノ酸が不足することはないでしょう。しかしながらダイエットなどで極端に食事を制限していると不足の事態となります。栄養障害までならずとも美容と健康の面で影響があるのではないでしょうか。

またボディビルダーのような肉体を目指して日々激しいトレーニングに望んでいる場合、一般的に推奨される量を補給するだけでは十分でありません。自身の身体の大きさを視野に入れて栄養補給することも大切ではないでしょうか。

EAAはダイエットに活用できるのか

EAAはダイエットに活用できるのか

運動による筋肉の合成のサポートをする

ダイエットの成功の鍵は、筋肉を落とさずに体脂肪を落とすこと。そうすることでほどよく引き締まった美しい身体が獲得できるでしょう。また筋肉を落とさないことで代謝を維持し、リバウンドしにくいダイエットとなるでしょう。

そのためには食べないダイエットとはおさらば。しっかりと運動をした上で、食べるダイエットが主流となっています。食べるダイエットといっても、ただ闇雲に食べたらよいという意味ではなく、必要な栄養素を然るべきタイミングで補給することです。

そのひとつとして筋肉の材料となるアミノ酸の補給があげられます。冒頭でもお話しましたが、身体を構成するタンパク質は20種類すべてそろわないと合成できません。中でも9種類のEAA(必須アミノ酸)は欠かせず、とくにダイエット中はしっかり補給したいものです。

EAAやBCAA、ロイシンなどのアミノ酸は運動刺激による筋肉の分解と合成がおこなわれる過程において、材料補給として特に重要で、次の日の身体の準備としても有用だといわれています。またトレーニング後にロイシンとBCAA、EAAサプリメントを補給したところ、EAAはほかのアミノ酸摂取と比べて理想の身体づくりのサポートとして、有用であったとも報告されています[1]

そもそもEAAの中には、BCAAやロイシンなどのアミノ酸が含まれているため、BCAAやロイシンの恩恵もあるのではないか?との議論もあります。

少なくともBCAAやロイシンを含むEAA(必須アミノ酸)が、身体づくりには重要であることは多くの研究で証明されています。また人体を構成する上でも必須であることは間違いないでしょう。

EAAは肉や魚などに豊富に含まれる

EAAは肉や魚などの動物性タンパク質に豊富に含まれています。ダイエット中であっても肉や魚などのタンパク質を補給することは大切です。ただしお肉は部位によっては脂質が多いので、脂質の少ない部位を選択するのもポイントです。

ダイエット中だからこそEAAだけでは不十分

ダイエット中だからこそEAAだけでは不十分

それではEAAだけ補給していればよいのでしょうか?

いえ、非必須アミノ酸の存在を忘れてはなりません。非必須という名前からそれほど重要でないと勘違いしている方もいるようですが、むしろ身体にとって重要だからこそ進化の過程で合成できるようになったとも考えられます。

20種類のアミノ酸が十分に補給されていてこそ、EAAが体内で活躍できるのではないでしょうか。チロシンがフェニルアラニンからつくられるように一部の非必須アミノ酸はEAAから合成されます。

また糖質を代謝する回路からつくられるアミノ酸も存在します。さらにアルギニンやチロシンなどは病気など特定の条件下では不足することも知られており、非必須アミノ酸であるからといっておろそかにしてはならないのです。

人間の身体を構築しているのは20種類のアミノ酸。非必須アミノ酸をおろそかにして、EAAやBCAAなどの一部のアミノ酸を補給しても十分な能力は発揮できないでしょう。

肉や魚といったタンパク質には、EAAや非必須アミノ酸どちらも豊富に含まれています。ダイエット中だからこそ、タンパク質をしっかり摂り入れることが大切です。

まとめ

EAAは体内で合成できない大切なアミノ酸です。ダイエットの鍵となる運動刺激による筋肉アップのサポートには欠かせない栄養素といえるでしょう。

ただし体内では20種類のアミノ酸ならびにそのほかたくさんの栄養素が機能して身体を維持しています。そして身体にとって不必要な栄養素はなく、特定の栄養素に偏ることは望ましくありません。

ダイエット中こそタンパク質を意識しながら、そのほかの栄養素もバランス良く摂り入れることが成功への近道ではないでしょうか。

参考文献

1. Moberg, M., Apró, W., Ekblom, B., Van Hall, G., Holmberg, H. C., & Blomstrand, E. (2016). Activation of mTORC1 by leucine is potentiated by branched-chain amino acids and even more so by essential amino acids following resistance exercise. American Journal of Physiology-Cell Physiology, 310(11), C874-C884.

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坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
この記事を書いた人
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。

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