食物繊維たっぷり!「ごぼう」の栄養とその魅力

きんぴらや煮物など日本人の食卓には欠かせない「ごぼう」。
独特の出荷方法により年中食卓に並ぶ代表的食材であり、比較的安価でお財布に優しい常備野菜として活用している人も多いのではないでしょうか。
実は、海外ではあまり食べられることなく「日本人は木の根っこを食べる」と陰口をいわれるほど……。しかしながら食物繊維はもちろん、魅力的な栄養が満点!
こちらの記事では、そんな「ごぼうの魅力」についてご紹介します。
ごぼうの歴史

ごぼうは、ユーラシア大陸北部が原産国です。海外では、薬草として使用されることはあっても食用として食べられることはなく、日本独自でごぼうの文化が発展したといわれています。
解熱作用や利尿作用があることから薬草として使用していた中国から入ってきたとされ、平安時代にはすでに食材として食べられていたようです。冠婚葬祭などさまざまな行事で使用され、室町時代には正月の定番料理の一つである「たたきごぼう」が食べられていたようです。
このようにごぼうは、日本で独自に発展し、
- 煮しめ
- きんぴら
- 汁物
- 揚げ物
- あえ物
など調理法は多岐にわたり、祭りや行事食、家庭料理と幅広く利用されています[1]。
日本人が欧米人よりも腸が長いことをご存じでしょうか。肉食の欧米人と異なり日本人は、古来から穀類や野菜など食物繊維の多い食材を主に栄養源としてきたことが、腸の長さの所以と考えられています。欧米人が決して食べようとしなかったごぼう。日本人は本能でその魅力に気付き食べていたのかもしれませんね。
ごぼうの産地と旬

生産地は、
- 青森県
- 茨城県
- 北海道
- 千葉県
で全国出荷の7割を占めています。
旬は、4~5月、11~1月。新ごぼうは6~7月ですが、貯蔵しやすい特性から、収穫後すぐ出荷するものもあれば、一旦貯蔵しておき順次出荷しているものまであります。そのため1年を通して食卓で食べられるのです。
またごぼうの種類と旬を知っておくと、より美味しく食られますので、ご紹介します。
滝野川ごぼう
一般的に家庭で食べているものが「滝野川ごぼう」です。江戸時代に東京の滝乃川付近で栽培されたのが名前の由来です。直径2~3㎝、長さ1m、収穫時期11~2月。
堀川ごぼう
「堀川ごぼう」は滝野川ごぼうを越冬栽培して太くしたものです。直径6~9㎝、長さ50㎝、収穫時期11~12月。
大浦ごぼう
「大浦ごぼう」千葉県大浦地区で特産品とされているごぼうです。直径10㎝、長さが1mと太長いのが特徴です。また繊維が少ないため柔らかく、中が空洞になっています。空洞に肉やしんじょなど詰めて食べる料理が有名です。
新ごぼう
「新ごぼう」は12月~初夏にかけて収穫できるので、「春ごぼう」ともいわれます。直径1.5㎝、長さ30~70㎝と一般に食べられている滝野川ごぼうより短めです。柔らかく土臭くないので、きんぴらや柳川鍋に適しています。
ごぼうに含まれる注目の栄養素

ごぼうには、
- イヌリン
- セルロース
- リグニン
- カリウム
- マグネシウム
- 銅
などの栄養素が含まれています。
食物繊維
食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。ごぼうは嬉しいことに不溶性食物繊維(セルロース・リグニン)、水溶性食物繊維(イヌリン)どちらも含まれているのです。
食物繊維の作用の一つとして、「便秘改善・予防」があげられます。不溶性食物繊維は、悪玉菌の発生を抑えて、善玉菌を増やす働きがあり腸内環境を整えます。また蠕動運動を亢進し、便意を促すのです。水溶性食物繊維は、腸管内でゲルを形成するので便の移動がスムーズになります。
つまり便秘改善・予防には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維が必要なのです。他にも血糖値の急上昇抑制や免疫力アップなど健康維持に寄与する魅力がたくさんあります。
カリウム
人間の身体は60~80%が水分です。この水分は真水ではなく、ある一定の塩分濃度に保たれています。この濃度の調整役がナトリウムとカリウムで、互いに作用しあい一定に保っているのです。
食塩をたくさん摂り過ぎたとき、カリウムが作用してナトリウムを尿へ排泄してくれており、高血圧予防に有効といわれています。
マグネシウム
マグネシウムは、全身で酵素のサポート役として働いており、タンパク質の合成やホルモンの分泌などさまざな働きがあります。ナッツや大豆、海藻に多く含まれており、ごぼうにも大豆の半量程度の量が含まれています。
銅
銅は、鉄の吸収や心臓収縮、脳の発育など、さまざまな働きがあるミネラルです。
おおむね0.8㎎/日程度必要であり、ごぼう100g当たりには0.2mg含まれています。その他、干しエビやしゃこ、牡蠣、アボカドに豊富に含まれています。
ごぼうの栄養素をしっかりとるためのポイント

ごぼうの栄養素が豊富なことはご理解いただけたかと思います。その栄養、できるならそのままゴッソリ頂きたいですよね。そのためのポイントをご紹介します。
皮は剥かない
前述した栄養素の他にごぼうには、抗酸化物質であるポリフェノールが含まれています。
このポリフェノール、皮下2~3mmのところに豊富に含まれているので、皮を剥きすぎると大切な栄養素を逃してしまいます。泥や汚れをたわしでそぎ落とす程度にしておきましょう。
アク抜きはほどほど(酢水は使わない方がいい)
水にさらすと出る茶色の正体は、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸です。酢水につけるとごぼうの褐色を防げますが、栄養素が減ってしまうので、水にさらす程度で十分です。またポリフェノールは肉の臭みを消す働きがあるので、皮ごと料理すると一石二鳥です。
ごぼうの保存方法

泥つきのまま新聞紙に包み、冷暗所で保存すると1か月は保存可能です。
また洗ったごぼうは、水につけておくよりも冷凍保存がおススメです。まず泥や汚れを落として、食べやすい大きさや調理しやすい形にカットします。ペーパータオルなどでしっかりと水気を切り、使いやすい分量を小分けにしてラップで包んだり、ブリーザーバッグに入れて保存すると調理のときに使いすくおススメです。
ごぼうに含まれる食物繊維やミネラルは、冷凍でほとんど損なわれることなく1か月ほど保存が可能です。解凍する際は、自然解凍するとごぼうの水分が抜けてしまい水っぽくなるので、そのまま調理することをおススメします。
まとめ
いかがでしたか?
欧米人は食べない日本特有の伝統食材「ごぼう」。食物繊維はもちろんのこと、その他の栄養素も魅力的でしたね。
とくに老化やがん化を促進する、活性酸素の働きを抑えるポリフェノールがごぼうの皮には豊富に含まれています。食物繊維とポリフェノールのダブルの力でデトックス効果を発揮できるのではないでしょうか。
1年を通して食べられ、調理法も多岐にわたるので飽きることなく楽しめるのではないでしょうか。ぜひ、冷凍庫にストックしておき活用してみてくださいね。
参考文献
文部科学省. 食品成分データベース
1. 冨岡典子. (2001). 日本におけるごぼうを食材とした料理の地域的分布と食文化. 日本家政学会誌, 52(6), 511-521.