難消化性デキストリンはダイエットに活用できるのか?

欧米化してしまった日本食……。
その始まりは1970年代頃にさかのぼり、ファストフード店が日本に上陸。肉やパンを食べるようになり脂質の摂取量は加速。一方で、食物繊維摂取量は減少の一途を辿り、今もなお続いています。
2000年代になると高血圧や糖尿病といった生活習慣病が深刻化。日本食の重要性が再び注目される中、手軽に摂取できる食物繊維として難消化性デキストリンが注目を浴びるようになりました。
栄養素としての難消化性デキストリンにはさまざまな働きが期待されており、ダイエット目的に活用している方もいるようです。
今回の記事では、「難消化性デキストリンとダイエット」について解説します。
難消化性デキストリンとは
デキストリンとは日本語で「デンプン」のこと。つまり難消化性デキストリンとは「消化されにくいデンプン」のことです。
もともとトウモロコシなどの穀類や熟した果物などに含まれ、化学技術の力を使って消化されにくい成分を取り出したものが難消化性デキストリンです。
一般的に人間の体で消化されない栄養素を「食物繊維」といいます。難消化性デキストリンは食物繊維に該当し、水に溶けやすい性質から「水溶性食物繊維」に分類されます。
難消化性デキストリンに期待できる働き
糖質の吸収をゆるやかにする
栄養素としての難消化デキストリンには、糖質の吸収をゆるやかにする働きがあるといわれています。通常、糖質は酵素(分解するハサミ)によってブドウ糖に分解・吸収されます。このとき、体に余分な糖は脂肪として蓄えられるのです。
難消化性デキストリンはブドウ糖を分解する酵素(分解するハサミ)の働きをブロックするため、一部の糖が吸収されずに便に排泄されます。よって糖質の吸収がゆるやかになるのです。
そもそも太る理由は、血糖値が上昇すると糖質を脂質に変えるインスリンが大量に分泌されるからです。つまり血糖値を急激に上げないことが、太らないためのポイントといえるでしょう。

脂肪の吸収をゆるやかにする
栄養素としての難消化性デキストリンは血液中の総コレステロールや中性脂肪の吸収をゆるやかにするといわれています。
脂肪はリパーゼと呼ばれる酵素によって分解されます。分解された脂肪はミセルと呼ばれる脂肪の集合体をつくり、消化管を移動。その後、ミセルが壊れることで腸にて脂肪が吸収されます。
難消化性デキストリンはミセルを安定に保つ働きがあるといわれています。また、一部の脂肪が吸収されずに便に排泄されるともいわれています[1]。

腸内環境を整える
難消化デキストリンなどの水溶性食物繊維には腸内環境を整える働きがあります。腸内には100兆個を超える腸内細菌が存在。善玉菌や悪玉菌、日和見菌といった菌があり、それらの菌がバランスを保ちながら腸内環境を維持しています。
食物繊維は善玉菌の好物です。消化されずに腸内をお掃除しながら移動してきた食物繊維は、善玉菌によって発酵され酢酸やプロピオン酸など短鎖脂肪酸を生成します。この短鎖脂肪酸が腸内環境を整えるために重要な働きをしています。
また短鎖脂肪酸はエネルギー代謝を亢進したり、脂肪の蓄積を抑える働きがあるとわかってきました。その他、食欲を抑えるといわれるホルモンの分泌を促進するともいわれています[2]。
ミネラルの吸収を高める
ダイエット中は食事量が減るため、どうしても栄養バランスが乱れてしまいます。体内にごく微量存在するミネラル(人体の約3%)。わずかであっても全身のいたるところで働く栄養素です。
またダイエットの鍵となるエネルギー代謝に関わっており、糖質や脂質などの三大栄養素からエネルギーをつくるときにサポート役となるのがミネラルです。
さらに皮膚やコラーゲンをつくるサポートも担っており、ミネラル不足でお肌の調子が悪くなったり、「せっかく痩せたのに……」なんてなりかねません。またミネラルは、エネルギー消費を高める筋肉の維持や働きにもかかわっています。
動物や人間の研究で難消化性デキストリンは、カルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラルの吸収を高める働きがあるとわかってきたようです[3][4]。
まとめ
栄養素としての難消化性デキストリンにはさまざな働きがありました。ただし、一部の糖や脂肪の吸収を抑えるといわれており、ケーキと一緒に難消化性デキストリンを食べたからといってチャラにはなりません。
また一部の食物繊維を偏って食べると、かえってお腹の不調をきたすこともあります。食物繊維は野菜や果物など多くの食材に含まれています。種類もペクチンやグルコマンナンなど豊富に存在。多くの食品を組み合わせて食べることをオススメします。
参考文献
1. Kishimoto, Y., Yoshikawa, Y., Miyazato, S., Oga, H., Yamada, T., Tagami, H., … & Yamamoto, K. (2009). Effect of resistant maltodextrin on digestion and absorption of lipids. Journal of Health Science, 55(5), 838-844.
2. 木村郁夫. (2014). 腸内細菌叢を介した食事性栄養認識受容体による宿主エネルギー恒常性維持機構. YAKUGAKU ZASSHI, 134(10), 1037-1042.
3. Vermorel, M., Coudray, C., Wils, D., Sinaud, S., Tressol, J. C., Montaurier, C.,J Vernet,J., Brandolini, M.,Bouteloup-Demange, C., Rayssiguier, Y. (2004). Energy value of a low-digestible carbohydrate, NUTRIOSE® FB, and its impact on magnesium, calcium and zinc apparent absorption and retention in healthy young men. European journal of nutrition, 43(6), 344-352.
4. 宮里祥子, & 大隈一裕. (2015). [特集: 健康と活力を支える糖質摂取-改めて知る糖質の生体調節機能-] 難消化性デキストリンの新たな生理機能: 腸内発酵を介した生体調節機能. 応用糖質科学: 日本応用糖質科学会誌, 5(4), 204-207.