イヌリンを摂るにあたっての注意点はあるのか?
数年前の菊芋ブームで注目を浴びたイヌリン。菊芋をそのまま食べたり、菊芋パウダーを活用している方もいらっしゃるでしょう。
一方で「お腹の調子が悪くなった」など不調の声もあるようです。はたしてイヌリンを食べることによるデメリットはあるのでしょうか?
この記事では、イヌリンについて詳しく解説しながら「摂取においての注意点」を突き止めていきます。
イヌリンとは?
イヌリンとは水に溶けやすい水溶性食物繊維の一種で、体内で消化吸収できません。
通常栄養素は胃腸で消化されて、腸で吸収されます。消化されないイヌリンはそのまま腸に到達します。水溶性食物繊維の特徴を生かして体内でゲルを形成。このゲルが他の栄養素を巻き込みながらゆっくり移動して排泄されるため、GI値を低く抑えて健康によい働きをするといわれています。
また体内からキレイのサポートをするため、すっきり生活に役立つともいわれています。
イヌリンの安全性
ではどんな食品にイヌリンが含まれているのでしょうか?
イヌリンは、
- 玉ねぎ
- チコリ
- らっきょ
- ネギ
- ニンニク
- アスパラガス
- アーティチョーク
など普段よく食べる食材に含まています。チコリやアーティチョークはあまり聞き慣れないかもしれませんが、ヨーロッパやアメリカでは食卓の定番食材です。
数年前に菊芋にイヌリンが含まれていることでブームになり、菊芋の知名度が上がりました。イヌリンといっても、実は日頃から食べている食物繊維の一種で、安全性は高いと考えられています。
摂りすぎると不調をきたすことも
安全性が高いといわれる一方で、イヌリンを食べたことによって下痢などお腹の不調をきたしたなんて声もあるようです。
お腹の不調
通常、天然の食材から食物繊維を多量に摂取したとしても、健康障害が生じることは考えにくいといわれています。むしろ日本では食物繊維の不足が課題で、食物繊維を食材から大量にとることのほうが難しいのです。
しかしながら今まであまり野菜を食べてなかった人が急に食べはじめたり、極端に多く食べるなどした場合には、身体が慣れていないこともあり、負担になることがあります。
食物繊維にはイヌリンのような水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、バランスよく摂取することが推奨されています。イヌリンばかりに偏って摂取していると下痢になりやすいので注意が必要です。
FODMAP
FODMAPをご存じでしょうか?
FODMAP(フォドマップ)
F:fermentable (発酵性)
O:oligosacharides (オリゴ糖)※オリゴ糖を含むフルクタンやイヌリン
D:disaccharides (二糖類)※乳製品に含まれる乳糖
M:monosaccharides (単糖類)※果物やはちみつに含まれる果糖
A:and
P:polyols (ポリオール)※キシリトールなどの糖アルコール
FODMAPとは、腸内で発酵されやすい糖の略称です。すっきり習慣に役立つ食品も多く含まれています。しかしながらこれらの食品摂りすぎると腸で大量に発酵されることによってお腹が張ったり、不調をきたす方もいるようです。
もともとFODMAPは、過敏性腸症候群(IBS:Irritable bowel syndrome)のために考えられた食事法です。過敏性腸症候群は、便秘・下痢・お腹の張りなどが症状として現れ、日本人では10人に1人いる病気です。FODMAPに該当する食品を控えることで症状が軽減すると報告されています[1]。
FODMAPを多く含む食品は、玉ねぎやアスパラガスなどの野菜、大豆食品、乳製品、果物です。その他サプリメントなどで過剰に摂取している場合も注意が必要かもしれません。
これらの食材をすべて取り除くことはなかなか困難ですし、食べたからといって必ず症状が起こるわけでもありません。個人差もあるため、ご自身の腸と相談しながらとり入れるとよいのではないでしょうか。
栄養素の吸収阻害
食物繊維の過剰によりミネラルの吸収(カルシウム、鉄、亜鉛)が阻害されるといわれてきました。
しかしながら最近ではフィチン酸の影響が大きいといわれています。フィチン酸は穀類などの不溶性食物繊維に豊富に含まれており、還元成分でもあり嬉しい働きがあります。一方で、ミネラルの吸収を阻害してしまうといわれているのです。つまり食物繊維は、たくさん食べてもミネラルの吸収にあまり影響しないのです。
またイヌリンの摂取によってカルシウムの吸収が促進することも明らかにされています。
摂取量の目安
イヌリンの摂取目安量についてはさまざまな議論が交わされており、明確なことはわかっていません。一部の報告によると1日10gまで十分に許容できるといわれています。しかしながらおならの頻度が増えたと訴える方も中にはいたようです[2]。
多くの研究ではイヌリンを5g~15g摂取し検証しています。しかしながら少量でもお腹の不調を訴える方もいれば、多量に摂取しても大丈夫な方もおり個人差が大きいのです。
日本人の食事摂取基準では、成人における1日の食物繊維目標量は男性21g以上、女性18g以上が望ましいとされています[3]。しかしながら1日14.4gと不足しているのが現状です[4]。
食事から食物繊維を補給する場合、健康障害が生じることは極めて考えにくいといわれています。
食物繊維は、
- 穀類
- 芋類
- 豆類
- 野菜類
- 果物類
- 海藻類
などの多くの食材に含まれています。偏ることなくさまざまな食材から積極的にとり入れましょう。
まとめ
今回の記事ではイヌリンの摂取する上での注意点について解説しました。イヌリンは、普段食べている野菜や果物に含まれる水溶性食物繊維でした。
日々の食事で野菜をしっかり摂り入れていれば問題ないでしょう。また野菜の摂りすぎで健康障害をきたすことも考えにくいです。
食物繊維といってもたくさんの種類があり、イヌリンはその一種にすぎません。腸には100兆個以上の腸内細菌が存在しています。イヌリンだけでその大量な腸内細菌の栄養補給をするにはムリがあるのではないでしょうか。
参考文献
1. Halmos, E. P., Power, V. A., Shepherd, S. J., Gibson, P. R., & Muir, J. G. (2014). A diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome. Gastroenterology, 146(1), 67-75.
2. Bonnema, A. L., Kolberg, L. W., Thomas, W., & Slavin, J. L. (2010). Gastrointestinal tolerance of chicory inulin products. Journal of the American Dietetic Association, 110(6), 865-868.
3. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
4. 厚生労働省. 平成30年「国民健康・栄養調査」.