ストレッチでなぜ筋肉痛?理由と対策について
「筋肉痛」
誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
運動不足の状態で子どもの運動会に出たり、大掃除や引っ越しなどで重いものを運んだり。体のあちこちが痛くて、思うように動けないあの瞬間はなんともいえませんよね。
身体のためによかれと思ってストレッチをはじめてはみたけれど、「翌日に筋肉痛になってやめてしまった」という方もいらっしゃるかもしれません。せっかく前向きになったその気持ちと行動をムダにしないためにも、
- 「そもそもどうして筋肉痛は起こるの?」
- 「ストレッチは筋肉痛の原因になるの?」
- 「どうしたら筋肉痛が解消するの?」
といった素朴な疑問を一つひとつ解決していきましょう。さて、あなたの筋肉痛はいったいどこから?
ストレッチでなぜ筋肉痛になるのか?
筋肉の痛みにはさまざまな種類があります。
一般的にストレッチ後の筋肉痛は「DOMS(Delayed onset muscle soreness):遅発性筋肉痛」というものにあたります。実はこの「遅発性筋肉痛がなぜ起こるか」というメカニズムは、いまだに明確に解明されてはいないんです[1]。
遅発性筋肉痛は「慣れない運動」や「過度な運動」をした際に起こりやすく、中でも筋肉に対して「伸ばそうとする力」がかかったときに起こりやすくなります。まさにストレッチをやりはじめた方に起こりそうな現象ですね。
筋肉は細かい筋線維という組織が束になったものです。その周りには筋膜や腱といった結合組織があります。これらが筋肉痛を引き起こすのではないかと推測されます。
- 筋肉が引っ張られすぎると、筋線維や結合組織に微かな傷がつく。
- 傷を修復しようと白血球などの血液成分が集まる。この過程で「炎症」が起きる。
- 炎症は発痛物質(ブラジキニン、ヒスタミンなど)を分泌させて、感覚神経を刺激する。
- 痛みの情報が脳に伝わり、「筋肉痛」を感じる。
つまり身体の準備ができていない状態で急にムリなストレッチをすると、筋肉痛につながる可能性があります。
こんなストレッチはNG!間違ったストレッチ
前述のように、筋肉を伸ばしすぎたり、慣れていないことをすると、筋肉が傷つく恐れがあります。こんなストレッチしていませんか?
朝起きて「すぐ」ストレッチをする
朝、目覚めた直後というのは、誰しも身体が硬い状態です。いきなりストレッチをすると筋肉に大きな負担がかかります。
起きてすぐは、ベッドの中でゆっくりと背伸びをする程度にしておきましょう。そして顔を洗ったり、歯を磨いたり、朝食を食べたりして、身体が目覚めてきた段階でゆっくりとストレッチをおこないましょう。
身体が硬いのに「ムリ」をしてストレッチをする
180度ペターっと開脚できたり、バレリーナやフィギュアスケート選手のようにしなやかな身体には少し憧れますよね。
しかし柔軟性というのは、一度や二度のストレッチで得られるものではありません。ムリなストレッチはケガや筋肉痛の原因になります。焦らずに、今自分にできることから少しずつはじめましょう。
身体によいだろうと「長時間」ストレッチをする
身体によいことには「適切」な時間や加減があります。
ストレッチで筋肉が伸ばされ続けると、大きな負担になり傷つきやすくなります。1回のストレッチは20秒程度を目安に、全体でも5分~20分くらいのストレッチをこまめに分けて、節度をもっておこなうようにしましょう。
筋肉痛への対策
筋肉痛の対策として、事前の予防やなってしまった後のケア、それぞれにどうすればよいのでしょうか。
「筋肉への過度な負担」と「急な刺激」が筋肉痛の要因であれば、それらをできるだけ軽減する準備とケアが必要になってきます。
ストレッチを使い分ける
運動前には筋肉の温度をしっかり上げるようにしましょう。
スポーツをする方であれば、ウォーミングアップとして動的ストレッチ(ラジオ体操など)で筋肉や関節の可動域を広げておくと、身体への負担も軽減します。
ストレッチがメインの運動になる場合、軽いウォーキングなどをして身体を温めておくのもよいでしょう。
フォームローラーで筋肉をほぐす
フォームローラーを使って筋肉をほぐしましょう。
ストレッチにこだわらず、運動前後に適したツールを使って筋肉の緊張をやわらげ、血行をよくすることが大切です。
食事を大切にする
身体のコンディション維持には食事の役割が不可欠です。
組織のもとになる「タンパク質」を中心として、ビタミンB群、C、E、亜鉛などをバランスよく摂り、コンデションを整えましょう。
またエネルギーのもとである糖質や脂質などの栄養が十分でないと、筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとしてしまいます。運動量に見合った糖質をしっかりと取るようにしましょう。
まとめ
筋肉痛自体は痛いものですが、決して身体にとって悪いことではありません。少しでも身体によいことをしようと動かした結果、身体に起こる反応です。
つまり筋肉痛は前向きな痛みなのです。運動に慣れ、ゆっくりと負荷を上げることでリスクも減らせます。
あなたが頑張っているからこそ起こる「筋肉痛」。できる予防を心がけながら、楽しく運動を続けましょう。
参考文献
1. 野坂和則. (2001, August). 045N10009 遅発性筋肉痛の程度は筋損傷の程度を反映しているか?. In 日本体育学会大会号 第 52 回 (2001) (p. 304). 一般社団法人 日本体育学会.