β-グルカン(ベータグルカン)とは?期待できる効果と摂取目安量について
「β-グルカン」なんて難しいワードはじめて聞く、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?「聞いたことはあっても、どんな食べ物に含まれていてどんな働きをしているのか、詳細までは……」なんて方も。
確かに、β-グルカンを理解するには栄養学や化学の知識が必要となります。しかし安心してください!今回の記事では、β-グルカンの構造や働きについて一切化学式を使わずに図解とともに説明していきます。
さらに近年注目されている、環境変化に負けない身体づくりやエイジングケアなどのサポートとしても注目されている研究を一つずつ紐解いていきましょう。
β-グルカンとは?
図1:α-グルカンとβ-グルカン
人間の主なエネルギー源であるブドウ糖が、いくつか結合してできた塊をグルカンといいます。またそのブドウ糖が結合する際に「鎖」役となるものには、「α型」と「β型」の2種類が存在しています。
α型で結合されたグルカンにはデンプンやグリコーゲンなどがあり、これらをα-グルカン。人間は、α-グルカンを消化する能力(鎖を切るハサミ)をもっているので、最終的にブドウ糖となり体内でエネルギー源として作用します。
一方で人間は、β-グルカンを消化する能力をもっていないので、エネルギーに変換できません。そのため食物繊維としてそのまま大腸まで運ばれます。この運ばれる過程で、身体に良いとされる働きが発見されてきており注目されているのです。
β-グルカンはどんな食品に含まれているのか?
1940年頃、酵母と健康的な身体との研究が進められ、酵母の一部がβ-グルカンだとわかりました。その後、きのこや野菜、大麦などからもβ-グルカンが発見されたのです。
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、β-グルカンは水溶性食物繊維に分類されます。特に大麦の水溶性食物繊維の大部分がβ-グルカンだとわかっています。
食品に含まれるβ-グルカンは、食品成分表に記載されていないため詳細はわかりませんが、水溶性食物繊維の大部分がβ-グルカンであることから、大麦には多くのβ-グルカンが含まれていると考えられます。
図2:食品100gあたりに含まれる食物繊維量
文部科学省 食品成分データベースより作成[1]
β-グルカンへの期待
β-グルカンには以下のようなさまざまな働きが期待できます。
環境変化に負けない丈夫な身体づくりのために
古くから、きのこには季節や場所など、環境に変化があるとに力を発揮すると注目されていました。研究が進み、その有用成分がβ-グルカンであると発見されました。
1960年代にβ-グルカンから精製されたレンチナンが有用であることがわかり、積極的に使われていた時代もあったそうです。
さらにβ-グルカンと丈夫な身体づくりへの影響に関する研究が進められ、2000年代には、身体の保護に重要な働きをすることがわかりました。
健康維持のために
米国人対象の研究では、β-グルカンを摂取したことで、健康維持につながる報告があります[2]。さらに日本人対象の研究でも、同様の健康維持に有用である報告があります[3]。
また、β-グルカンとGI値の関連を調べる研究も進められており、β-グルカンを摂取することで健康のために有用である報告もあります[4]。
さらにβ-グルカンには、低分子と高分子の2種類があり、高分子の方が粘度が高く、粘度が高いほどGI値を下げる可能性があるのではないかといわれています[5]。またそれらの現象は、容量ではなく粘度がポイントであると報告されています[6]。
すっきり習慣に
動物実験の研究段階ではありますが、β-グルカンが短鎖脂肪酸を生成することで、スムーズに排泄されることがわかっています。このことからすっきり習慣に良いのではないかといわれています。
食べ過ぎ防止に
β-グルカンは腹持ちがよいことから、過剰摂取を抑制できると報告されています。
また何を食べるかだけでなく、どの順番で食べるかも重要であり、最初の食事が次の食事に影響する「セカンドミール」にも注目されており、最初の食事でβ-グルカンを含む食品を摂取することも健康維持につながる可能性があるといわれています[7]。
β-グルカンの摂取目安量
ヨーロッパの報告では、3g/日以上の摂取で健康によいデータがあることが報告されており、他の健康情報からも4g/日が必要ではないかといわれています。
オーストラリアでは、1食1g以上の摂取を推奨していることから、1日3g以上は摂取できたらいいと考えられます。
大麦に含まれる水溶性食物繊維の大部分(約70~80%)がβ-グルカンです。また大麦は、きのこやごぼうなどと比較しても水溶性食物繊維が多いことからβ-グルカンが豊富と考えられます。
β-グルカンは、グルカンの結合によって働きが異なるといわれており、酵母やきのこ、大麦では少しずつ構造が異なります。
そのため特定の食材にこだわるのではなく、さまざまな野菜や大麦といった食材を組み合わせて摂取することで、栄養素の恩恵がより期待できるのではないでしょうか。
まとめ
これらのことからβ-グルカンには、さまざまなメリットが期待できるのではないかと考えられます。きのこや大麦などを日々の食事に少しずつ取り入れ、β-グルカンの力を体感していきましょう。
参考文献
1. 文部科学省. 食品成分データベース, https://fooddb.mext.go.jp/
2. Behall, K. M., Scholfield, D. J., & Hallfrisch, J. (2004). Diets containing barley significantly reduce lipids in mildly hypercholesterolemic men and women. The American journal of clinical nutrition, 80(5), 1185-1193.
3. Shimizu, C., Kihara, M., Aoe, S., Araki, S., Ito, K., Hayashi, K., … & Ikegami, S. (2008). Effect of high β-glucan barley on serum cholesterol concentrations and visceral fat area in Japanese men—a randomized, double-blinded, placebo-controlled trial. Plant foods for human nutrition, 63(1), 21-25.
4. https://www.foodstandards.gov.au/consumer/labelling/nutrition/Documents/Beta-glucan%20glucose%20review.pdf
5. Kwong, M. G., Wolever, T. M., Brummer, Y., & Tosh, S. M. (2013). Attenuation of glycemic responses by oat β-glucan solutions and viscoelastic gels is dependent on molecular weight distribution. Food & function, 4(3), 401-408.
6. Kwong, M. G., Wolever, T. M., Brummer, Y., & Tosh, S. M. (2013). Increasing the viscosity of oat β-glucan beverages by reducing solution volume does not reduce glycaemic responses. British journal of nutrition, 110(8), 1465-1471.
7. 青江誠一郎. (2015). 大麦 β-グルカンの機能性について. 日本食生活学会誌, 26(1), 3-6.