レジスタントスターチで痩せるのは嘘?働きについて解説

「ごはんや芋などの炭水化物は冷まして食べたほうが痩せる」という声がある一方で「全然効果がなかった」という声もあるようです。
はたしてレジスタントスターチで痩せるのは嘘なのでしょうか。今回のコラムではレジスタントスターチの働きについて詳しく解説していきます。
レジスタントスターチとは
レジスタントスターチ(RS)とは、消化されない(レジスタント)デンプン(スターチ)という意味で、糖質であるにもかかわらず、食物繊維と同じような働きをすることで注目されています。
レジスタントスターチは下記のように分類されます。
ひとつの食品に複数のRSタイプを含み、同じ食材であっても丸ごと摂取と粉砕したものを摂取するのでは、化学的に同じ組成であってもRS含有量は異なります。そのため生理効果に違いが出るのです。とくにRS3タイプのデンプンは、冷ましたり、冷凍など調理後の保存状態によりRSが増加するといわれています。
RSタイプ | 属性 | 食品例 |
---|---|---|
1 | 細胞壁に包み込まれているなど、物理的に消化されづらい状態にあるデンプン | 全粒穀物、豆類など |
2 | デンプン粒子が結晶構造をしており、消化されにくいデンプン | バナナ、コーンスターチなど |
3 | 老化したデンプン | 冷えたご飯や芋など |
4 | 化学加工デンプン | 加工食品 |
Dupuis, J. H., Liu, Q., & Yada, R. Y. (2014)[1]より作成
レジスタントスターチの働き

腸内環境改善効果
レジスタントスターチを摂取すると排便量や回数が増加するという報告があります。またレジスタントスターチが大腸で消化されると、短鎖脂肪酸(SCFA)を生成。とくに短鎖脂肪酸のひとつである「酪酸」は、大腸の上皮細胞のエネルギー源であり水分・ミネラルなどの吸収にかかせず腸内で重要な働きをしています。
さらにこの「酪酸」がビフィズス菌などの腸内フローラの形成に重要な働きをしていることもわかってきました[2]。「酪酸」によってビフィズス菌や乳酸菌と呼ばれる善玉菌が増殖し、逆に悪玉菌など腸にとって有害物質の生成を抑えるのです。よって便量増加など整腸作用促進効果が期待できるといわれています。
満腹感向上・食後血糖の抑制効果
レジスタントスターチを摂取することで、満腹感や食後血糖値の上昇を抑制できるという報告があります[3]。
コレステロール上昇抑制効果
レジスタントスターチを4週間以上摂取した場合に、血清中性脂肪やLDLコレステロールを低下させる可能性があると報告されています[4]。
レジスタントスターチで痩せるのは難しいのか

RS3タイプのレジスタントスターチは、加熱することで構造が変化して消化されやすくなり、冷めると再び消化されにくい構造に変化します。下記表にあるように炊きたてのごはんや茹でた芋は、レジスタントスターチの量がかなり低い状態です。
一方で冷凍した食品はレジスタントスターチの含有量が高くなります。温めたジャガイモと冷めたジャガイモを比較した研究では、冷めたジャガイモのほうがレジスタントスターチの量が多かったと報告されています[5]。
含有量 | 乾燥物中の重量(%) | 食品の例 |
---|---|---|
かなり低い | <<1 | 茹でたジャガイモ、炊き立てご飯、パスタ、小麦粉 |
低い | 1~2.5 | シリアル、ビスケット、パン、パスタ(冷めたもの)、炊飯米(冷めたもの) |
中程度 | 2.5~5.0 | コーンフレーク、フライドポテト |
高い | 5~15 | 生米、冷凍した食品 |
非常に高い | >15 | 生のジャガイモ、生の豆類、未完熟のバナナ |
日本食物繊維学会(2008)「食物繊維ー基礎と応用」[6]より作成
これらのことから、レジスタントスターチの含有量の多い冷めたデンプンを食べると痩せるなど過大に宣伝され、レジスタントスターチが不思議な食べ物として注目されています。
レジスタントスターチとエネルギー消費について検討した報告によると、減量はエネルギーバランスが重要であり、レジスタントスターチを摂取したからといって劇的な体重減少が得られる可能性は低いです。
考えられるとしたらレジスタントスターチの働きによって腸内環境が改善された結果、間接的な影響でわずかに減少する可能性はあるかもしれないと述べられています[7]。
またレジスタントスターチが豊富に含まれていると、食物繊維の働きを発揮し、急激な高血糖を防げると考えられています。
だたしレジスタントスターチのメリットを実現するには、1日の炭水化物摂取量の10%~20%は、レジスタントスターチである必要があると推定されています[1]。しかしながらほとんどの食品は1食当たり5%未満であり、レジスタントスターチの比率が低いのです。
まとめ
レジスタントスターチは食物繊維に似た働きがあることから、さまざまな効果を期待して痩せるなどの声が高まっていました。しかしながら減量効果については劇的なものでないようです。
またレジスタントスターチを含む食品は糖質です。食べすぎるとかえって血糖値の上昇や体重増加を招きますので気をつけましょう。
参考文献
1. Dupuis, J. H., Liu, Q., & Yada, R. Y. (2014). Methodologies for increasing the resistant starch content of food starches: A review. Comprehensive reviews in food science and food safety, 13(6), 1219-1234.
2. Litvak, Y., Byndloss, M. X., & Bäumler, A. J. (2018). Colonocyte metabolism shapes the gut microbiota. Science, 362(6418).
3. Stewart, M. L., Wilcox, M. L., Bell, M., Buggia, M. A., & Maki, K. C. (2018). Type-4 resistant starch in substitution for available carbohydrate reduces postprandial glycemic response and hunger in acute, randomized, double-blind, controlled study. Nutrients, 10(2), 129.
4. Yuan, H. C., Meng, Y., Bai, H., Shen, D. Q., Wan, B. C., & Chen, L. Y. (2018). Meta-analysis indicates that resistant starch lowers serum total cholesterol and low-density cholesterol. Nutrition research, 54, 1-11.
5. Raatz, S. K., Idso, L., Johnson, L. K., Jackson, M. I., & Combs Jr, G. F. (2016). Resistant starch analysis of commonly consumed potatoes: Content varies by cooking method and service temperature but not by variety. Food Chemistry, 208, 297-300.
6. 日本食物繊維学会(2008)「食物繊維―基礎と応用」. 東京, 第一出版.
7. Higgins, J. A. (2014). Resistant starch and energy balance: impact on weight loss and maintenance. Critical reviews in food science and nutrition, 54(9), 1158-1166.