押し麦とは?含まれる栄養と期待できる効果について
戦後の主食といえば「麦ごはん」。この麦ごはんに使用されていたのが「押し麦」です。
押し麦は、食が豊かになるにつれて忘れられた存在でありましたが、近年大麦ブームが到来し、再び脚光を浴びるようになりました。
こちらの記事ではそんな「押し麦の魅力」についてご紹介していきます。
押し麦とは?
押し麦は、精麦※1される過程においてローラーで潰されており「押し麦」とよばれます。この潰す過程があることでふっくらと仕上がるのです。比較的安価で手に入ることから、一般的に「麦ごはん」で使用されているのは「押し麦」です。
最近では、「押し麦」によりビタミンB1とビタミンEを強化した「胚芽押し麦」なんかも販売されています。
※1 精麦:大麦の外皮を剥いて加工する過程
玄米と押し麦の栄養素比較
健康的な食生活をしていくうえで重要となる主食の選択。
- 白米
- 玄米
- 雑穀米
- 麦ごはん
と選択肢は豊富です。その中で、なんとなく玄米が一番身体によさそうなイメージをお持ちではないでしょうか。たしかに玄米はビタミン・ミネラルが豊富です。
食物繊維も豊富なのですが、実は「押し麦」には食物繊維が玄米の約4倍も含まれているのです。
水溶性食物繊維
食物繊維には、不溶性と水溶性がありどちらも摂取することが大切です。
白米と玄米には、水溶性食物繊維がほとんど含まれていません。しかし「押し麦」には、水溶性食物繊維が豊富に含まれており、水溶性食物繊維の大部分を占めるβ-グルカンが豊富に含まれています。
β-グルカンはすっきり習慣のサポートの他に、丈夫な身体づくりや健康にもよいといわれています。
カルシウム
カルシウムは骨や歯を構成する大切なミネラルです。体内で20~30%ほどしか吸収されず、成人ではおおむね700~800mg/日必要とされています。
また加工食品に含まれる食品添加物のリンは、カルシウムの吸収を阻害してしまうので食べ過ぎは注意が必要です。カルシウムは、干しエビやイワシ、牛乳などに多く含まれており、「押し麦」には白米の約4倍、玄米の約2倍含まれているのです。
白米と押し麦の栄養素比較
押し麦には、ビタミンやミネラルが白米よりも豊富に含まれています。ビタミンやミネラルは、体内のいたるところで働き、生きていくうえで欠かせない栄養素です。
カリウム
押し麦には、カリウムが白米の約2倍含まれています。
カリウムは、ナトリウムと拮抗することでバランスよく身体を支えています。
また食塩を摂り過ぎたときには、合わせてカリウムの多い食品を一緒に取り入れてみてください。立ちっぱなしのときなどには特に意識することをおすすめします。カリウムは、芋類類や野菜類、果物類に多くまれています。
マグネシウム
マグネシウムは、約300種類以上の酵素に関与し、特にトレーニングやダイエットをする方に必要とされています。
またビタミンB1との相性も良いので、一緒に摂ることをおススメします。ナッツ類や海藻、大豆、玄米に多く含まれており、玄米には劣りますが、押し麦は白米の約2倍マグネシウムを含んでいるのです。
ビタミンB1
ビタミンB1は、エネルギー源となる糖質と一緒に摂取することでよりエネルギッシュな日々が期待できます。
残念なことに体内で貯蓄できる量が少ないため、インスタント食品やダイエットなどで偏った食生活をしていると不足しやすい栄養素です。エネルギッシュな毎日のコンデション維持のためにも日々、しっかりと摂取することが必要です。
とくに激しいスポーツをされている方は、大量にエネルギー消費をしているため、糖質とともにビタミンB1を摂って理想のコンデションを維持しましょう。またビタミンB1は、ニンニクや玉ねぎなどに含まれる「アリシン」と結合し「アリチアミン」という物質になります。アリチアミンはアリシンに比べて吸収性が高いのが特徴です。
ビタミンB1は豚肉やうなぎ、豆類に多く含まれています。押し麦には、ビタミンB1が白米の約1.4倍含まれています。
豚と玉ねぎの生姜焼きに「麦ごはん」を添えれば、日々頑張っている身体のコンデションを維持するのにもってこいのメニューではないでしょうか。
ビタミンB2
栄養ドリンクを飲むと尿が黄色になることがありますが、これはビタミンB2の色です。
身体のサイクルに関与しており、とくにエネルギーがたくさん必要なこどもや、運動している方は多くのビタミンB2を必要とします。またビタミンB2は、美容には欠かせないビタミンで、美しくありたい方には必須な栄養素です。
ビタミンB2は、鮭やレバーなどに多く含まれています。押し麦には、ビタミンB2が白米の1.5倍含まれています。
ナイアシン
ナイアシンはビタミンB群の仲間であり、多くの栄養素をしっかりと身体に取り込む上でビタミンB2とともに必要となります。他にも健康のために重要な働きもあります。また、アルコールが好きな方はしっかりと摂取しておきたいビタミンです。
タンパク質食品に多く、とくにカツオやマグロに多く含まれています。さらにナイアシンは、体内で必須アミノ酸であるトリプトファンから合成することもできます。
押し麦には白米の約3倍含まれており、タンパク質食品と一緒に摂ることがおすすめです。
ビオチン
ビオチンは、身体づくり、身体のサイクルなどたくさんのことに関わっているビタミンです。
腸内細菌から合成されるので不足は起こりにくいといわれていますが、美容にはかかせないビタミンです。
さらに妊娠中は普段よりも多く摂取する必要があります。目安量は成人で45μg/日。妊婦および授乳婦は、各々プラス2μg/日および4μg/日とされています[1]。
ビオチンは鮭や大豆、卵、玄米などに多く含まれています。押し麦には白米の約2倍ビオチンが含まれています。
なぜ牛タン定食に「麦ごはん」が多いのか
牛タン屋さんに行くと、定番のようにセットで出てくる「麦ごはん」。なぜ牛タンとセットなのか疑問に思ったことはありませんか?
戦後、日本にGHQが進駐していた頃、牛タン発祥の仙台にも駐留軍がいました。駐留軍は、タンやテールなどを食べる習慣があまりなく、駐留軍が残したタンやテールを有効利用しようとしたことが始まりのようです。
当時の日本は食糧難真っ只中で「麦ごはん」が当たり前でした。これが牛タン定食に「麦ごはん」がセットである所以といわれています。
この牛タンと「麦ごはん」、実は栄養学的にも理にかなっています。
あっさり食べれる牛タンですが、脂質量がヒレ肉の約3倍と多く、カルビとほぼ変わらないくらい脂質が多いのです。「麦ごはん」に含まれる、
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ナイアシン
- ビオチン
は脂質が気になる方にはおすすめのビタミンで、脂質が気になる時には、ぜひ「麦ごはん」を一緒に食べるようにしましょう。
まとめ
戦後の食糧難を救った「押し麦」には、ビタミンやミネラルが豊富であることをおわかりいただけましたでしょうか。ビタミンやミネラルが豊富な玄米に引けを取らないほど食物繊維やビタミン・ミネラルが含まれていましたね。
炊飯方法も簡単で、玄米やもち麦に比べると安価で、お財布にも優しい美容法ではないでしょうか。ぜひ普段の食事に取り入れてみてください。
参考文献
文部科学省. 食品成分データベース
1. 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)