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BCAAとは?人体における役割と特長について

島袋 好一
最終更新日:2021.07.30
島袋 好一
トレーナー(寄稿)

近頃では、コンビニに陳列されているスポーツ飲料やゼリー飲料、栄養ドリンクにも「アミノ酸〇〇〇mg配合」と表示されたものが数多くあります。

「スポーツするとき」のエネルギー源のサポートや「疲れたとき」のリカバリーを目的にと、誰しも一度は手にしたことがあるのではないでしょうか。

配合されている「アミノ酸」の種類はいくつかあれど、「BCAA」は目にする機会の多いもののひとつではありませんか?

今回のコラムでは、みなさんにもすでにお馴染みのアミノ酸「BCAA」について解説します。

タンパク質からアミノ酸へ。人体で機能するには?

タンパク質からアミノ酸へ。人体で機能するには?

人体の約15%~20%が「タンパク質」で構成され、以下のように活用されています。

さらに飢餓や長時間のスポーツなどの緊急時には、分解されてエネルギー源として利用されます。

このように「タンパク質」は人体において多岐に渡る機能と役割を担っているのです。しかし残念ながら、肉や魚、卵などから摂取したタンパク質を人体でそのままの形で活用できません。

たとえば現代最高峰の医学の力を持ってしても、サラブレッドの足の筋肉をヒトに移植して筋肉を増強し、「足を速くする」ことなど不可能です。「馬の筋肉」を構成しているタンパク質と、「ヒトの筋肉」を構成しているタンパク質がまったく違うものだからです。

筋肉を増強して足を速くするためには、筋力トレーニングという刺激と負荷により「筋が破壊(分解)」されるというキッカケを作り、タンパク質を摂取して修復(再生・肥大・合成)するプロセスが必要になります。

つまり「馬の筋肉」は移植という選択ではなく、「さくら肉」として食し、アミノ酸まで消化・分解し、「ヒトの筋肉」へと再構築せねばなりません。どんな食品から摂取したタンパク質であれ、「アミノ酸」という分子に一旦変化を遂げなければ、人体では活用できないのです。

人体には20種類のアミノ酸が存在します。一般的にタンパク質とは、このアミノ酸が1本に繋がったものと定義され、組織や器官、細胞などその用途に応じて配列や結合の長さを変えるのです。こういった一連のサイクルを「タンパク質」の代謝といいます。

近年の生化学では、人体に存在する20種類のアミノ酸それぞれについての研究が進み、特徴と機能が明らかになってきています。

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BCAAとは

アミノ酸20種類

人体を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できず食事から摂取しなければならないアミノ酸を必須アミノ酸(EAA:Essential Amino Acids)といいます。一方、体内で合成できるアミノ酸を非必須アミノ酸(NEAA:Non-Essential Amino Acids)といい、それぞれに分類されます。

必須アミノ酸の中でも、構造上の特徴から側鎖に枝分かれした構造をもつ3つのアミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)を総称し、BCAA(分岐鎖アミノ酸:Branched Chain Amino Acids)と呼びます。

BCAAはタンパク質の構成成分であり肉や魚、卵、乳製品、豆類などタンパク質を含有する食品に多く含まれています。

表1:食品中のBCAA含有量
独立行政法人環境再生保全機構より引用

ほかのアミノ酸と同様、普段の食事を介して摂取されるため、バランスの良い食習慣があり、通常の栄養状態であれば特段不足することは考えにくい栄養素です。

BCAAは種々の天然のアミノ酸から抽出・分離することが可能で、近年では穀物を土壌に微生物を使ったバイオテクノロジーによっても生産され、パウダー状や飲料に含まれたものが数多く市場に流通しています。

BCAAの人体における役割と特長

1. 筋肉の主原料となる

筋タンパクを構成する20種類のアミノ酸のうち約16%がBCAA(必須アミノ酸の約50%)です。日常の3度の食事でバランス良くBCAAを摂取しておくことは非常に重要なのです。

2. 筋肉の分解を抑制し合成を促進する

筋肉はヒトの身体の中で最も大きな器官です。

日々の生活を送る中で労働や家事、スポーツなど身体動作をつかさどるだけではありません。体型維持や体温・血糖値の調節、空腹・飢餓時のエネルギー供給など多くの役割をはたしています。

筋分解と合成の図

図1:分解と合成のイメージ

1日24時間のライフサイクルの中で図1の天秤のように、さまざなきっかけによってそのベクトルを刻々と変化させています。多くの機能を持った筋肉は、その役割をはたすと日々数%ずつ古いものを壊し、新しいものへ作り変えるという身体現象を繰り返すのです。これを分解と合成といいます。

筋肉の分解と合成によるカラダの変化は、ヒトそれぞれ日々の生活環境への適応。身体を「体格と重量」という指標をもって判断した場合、

  1. 筋肉が分解されても、1日トータルでその分を合成できれば筋量はプラスマイナスゼロ
  2. 分解よりも合成が上回れば筋量は増加
  3. 分解よりも合成が下回れば筋量は減少

という結果が導かれます。

「筋トレ」という行為そのものが、今あるものを壊し新しいものに作り変えるという行為です。そのため日々の生活サイクルの中に筋トレが加われば、分解と合成は半ば強制的に加速されるのです。

筋トレによって筋肉に負荷がかかると一旦は、ダメージを受けベクトルは分解側に傾きます。しかしその後、分解の作用を過補償する性質が働きます。充分なタンパク質(アミノ酸)を摂取することにより合成のほうが少し上回り、筋肉は大きくなっていくのです。

食物から摂取したタンパク質がアミノ酸に分解される過程で、多くのアミノ酸が肝臓の酵素で代謝されます。それに対してBCAAは肝臓をすり抜け筋肉に運ばれ、筋肉にある酵素によって代謝されるというほかのアミノ酸とは異なる性質を持ちます。

筋力トレーニングやスポーツをおこなっているときは、筋肉が活発に動き、それに伴いBCAAの代謝酵素が活性化。結果、BCAAをどんどん分解しようとする作用が高まります。ゆえに体内の血中BCAA濃度が充分でなければ、筋肉中のBCAAの分解が促進されてしまうのです。

事前に食事などからBCAAを積極的に補給しておけば、筋分解を抑制できるのです。加えて、分解から合成への切り替えをおこなうスイッチのような役割(BCAAの中でも、とくにロイシン)も担っています。

3. 緊急時のエネルギーとなる

普段の食事で必要なエネルギーとタンパク質を摂取し、適度な運動刺激であれば、極度に分解作用が高まることはありません。日々ハードなスポーツや筋トレ、長期的なダイエットなどで食事制限をおこなうと、糖質や脂質由来のエネルギー不足に陥る可能性が高くなります。

人体には緊急状態に追い込まれると、筋肉中のBCAAを分解し、エネルギーを作り出す機能が備わっています。

柔道やボクシングなどの階級別スポーツや、ボディビルディングのように筋肉美を争うフィギア競技では、「いかにして余分な脂肪を削ぎ落し、筋肉を残すか?」が勝利の分かれ目。摂取カロリーを調整しながら、BCAAを豊富に含む食品を積極的に摂ることによって、筋分解の抑止力となるのです。

特異的なスポーツに限らずとも、一般的なヒトの加齢にともなう筋量の低下を停滞、逓減させる効果も期待できます。

1~3いずれの役割においても、筋肉の構成や活動に大きく関わっているのがおわかりいただけたのではないでしょうか?

まとめ

20種あるアミノ酸の中でも、アイドルグループに例えるならセンター的ポジションに位置づけられる「BCAA」について解説しました。

「必須」、「非必須」と活字にすると、体内での存在比率の大きさから、過大評価をしてしまいがちです。スポットライトを浴びるセンターアイドルも、それを際立たせるバイプレーヤーの存在あってこそ眩いばかりの光を放てるもの。グループのチームワークなくしては、その個性を発揮できではしないのです。

タンパク質を構成する個々のアミノ酸も、それぞれが相互に協調しあい、人体の複雑な機能に作用しているのです。

「これさえ摂っておけば万事OK!!」という魔法のアミノ酸は存在しません。

長きに渡りトップの座に君臨するアイドルグループとおなじく、健康で活力あるカラダを維持するには、バランス良くアミノ酸を摂取し、「アミノ酸のチームワーク」を保つことが大切なのです。

参考文献

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独立行政法人環境再生保全機構. 呼吸リハビリテーションマニュアル⑥ 栄養療法.

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島袋 好一 トレーナー(寄稿)
この記事を書いた人
島袋 好一
トレーナー(寄稿)

トレーナー。体育学修士、JATI-AATI(上級トレーニング指導者)保有。トレーニング歴は30年にも及ぶ。「知識と実践の融合」、「担がざるもの教えるべからず」を最大のテーマに日々のセッションに対峙。専門学校講師時代は最大年間1000時間以上の座学、実技の講義及び運動指導者資格の対策講座を担当。

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