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BCAAで筋肉痛は軽減できるのか?さまざまな研究データから解説

坂口 真由香
最終更新日:2021.07.30
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

久しぶりのトレーニングやいつもよりトレーニングを頑張ったときに襲ってくる「筋肉痛」。早急な回復はもちろんのこと、できることなら避けたい「筋肉痛」。

筋肉痛には、筋肉の材料となるアミノ酸が重要であると考えられています。とくに「BCAA」は筋肉痛の軽減や回復に効果的であるといわれており、スポーツの分野では積極的に摂取している方もいるのではないでしょうか。一方で、BCAAをはじめて聞いた方もいらっしゃることでしょう。

今回のコラムではBCAAの概要に触れ、報告されている研究をもとに筋肉痛について解説します。

筋肉痛の原因

筋肉痛には急性と遅発性があります。急性は運動中や直後に生じ、運動を中止することで消失する痛みです。遅発性の筋肉痛は運動後8時間~24時間後に発現し、24時間~72時間で痛みのピークに達し、3日~10日で消失するといわています。運動後しばらくして感じる痛みは遅発性の筋肉痛です。

ではどうして筋肉痛が起こるのでしょうか?

乳酸説

運動時に筋肉を修復するためにはエネルギーが必要です。筋肉に蓄えているグリコーゲンを分解してATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを作り、筋肉を動かします。このときに「乳酸」と呼ばれる物質が一緒に作られます。従来は乳酸が溜まることで筋肉痛などを起こし、これが疲労の原因と考えられていました。

しかしながら運動時に作れられた乳酸は、肝臓で処理されて再びエネルギーとして利用されることがあきらかになりました。現在、乳酸は筋肉痛にあまり影響していないと考えられています。

筋肉組織ダメージ説

トレーニングをすることで筋肉組織がダメージを受けます。組織を修復しようとして炎症物質である、

などが産生され、筋膜を刺激することで痛みが生じるのではないか?といわれています[1]。現在はこちらの説が一般的な筋肉痛のメカニズムとして考えられています。しかしながら筋肉痛についてのメカニズムははっきりわかっていないのが現状です。

BCAAとは

BCAAとはバリン、ロイシン、イソロイシンといった3つのアミノ酸の総称です。これら3つのアミノ酸は枝分かれした構造上の特徴から、「分岐鎖アミノ酸」あるいは「BCAA(branched-chain amino acid)」と呼んでいます。

人間の身体は20種類のアミノ酸で構成され、体内で合成できる非必須アミノ酸11種類、合成できない必須アミノ酸9種類に分類されます。BCAAは必須アミノ酸に該当し、食事から摂り入れなければなりません。

筋肉をつくる筋タンパク質における必須アミノ酸の35%がBCAAといわれ、主に筋肉で活躍。筋肉の材料となったり、エネルギー源になることが知られています。

健康な人におけるBCAAの推定必要量は4g/日程度といわれています。食事から摂取する必須アミノ酸の50%はBCAAといわれており、肉や魚といったタンパク質食品を毎食摂りれていれば不足の心配はないでしょう。

しかしながら通常よりも激しいトレーニングをおこなったり、食事バランスが崩れていると不足してしまう可能性があるのです。

BCAAで筋肉痛は軽減できるのか

ここからはBCAAと筋肉痛について報告されている論文をご紹介します。

海外の男子学生を対象としたクロスオーバー試験※1では、朝夕の食事と一緒にBCAAサプリメントもしくはプラセボを4週間摂取しました。3週間以降はレジスタンストレーニングを追加。5週間のウォッシュアウト期間※2を経て、BCAA群とプラセボ群が入れ替わり4週間同様のプロセスで実施されました。

BCAA群とプラセボ群どちらもクレアチニンキナーゼ(CK)※3の上昇を認めました。48時間後の値ではBCAA群のほうがCKの上昇を抑制できたと報告されています[2]

BCAA摂取によるCKの上昇

Sharp, C. P.ら(2010) 図6[2]より引用

※1 クロスオーバー試験:被験者がプラセボと試験薬(この場合サプリメント)どちらも摂取し効果を検証。費用や期間が長くなるためデメリットもあるが、正確な評価判定を得られやすいメリットもある。

※2 ウォッシュアウト期間:研究の評価に影響しうる薬剤やサプリメントの影響が十分排除されるまでの期間(薬剤やサプリメントを使用しない期間)。

※3 クレアチニンキナーゼ(CK):筋肉細胞に多量に存在する酵素。トレーニングなどによって筋肉細胞が壊れると、血液中に放出されるため筋肉の疲労を示す指標として使用されることがある(CKが高値の場合、筋肉細胞が壊れていることを意味する)。そのほか、心臓は主に筋肉で構成されているため、心筋梗塞の指標など病気を確認するためにも活用されている。

またトレーニングしていない男性を対象として研究では、トレーニング前後にBCAAもしくはプラセボを摂取し、筋肉痛の度合(VAS※4 score)を評価したところ、両者ともに痛みは発生しました。

48時間後の痛みはBCAA群のほうが低値を示したと報告されています[3]。これによりBCAAを摂取することで、遅発性の筋肉痛を軽減できる可能性があるのではないかといわれています。

BCAA摂取によりVASが低値

Jackman, S. R.ら (2010). 図3[3]より引用

※4 VAS(Visual Analogue Scale):0を「痛みのない状態」、100を「これ以上強い痛みは考えられない」として、感じる痛みを10㎝のスケール上に線を引いてどの程度か示す評価方法。

男女を対象にして研究では、運動前にBCAAもしくはプラセボを摂取し、筋肉痛を調べました。女性においてBCAAを摂取した群は、筋肉痛が軽減したと報告されています。一方で男性は、BCAAとプラセボで痛みに大差はありませんでした。

理由は明らかとなっていません。可能性があるとすれば、女性よりも体重が重い男性にはもっと量が必要であったかもしれないと述べられています。また運動前に5gのBCAAを摂取すると、運動後の数日間、筋肉痛と疲労が軽減できるのではないかと考えられています[4]

運動前にBCAAを摂取した男女の筋肉痛

Shimomura, Y.ら(2006)図2[4]より引用

ここまでBCAAと筋肉痛について報告されている研究を紹介しました。まだ解明されていないこともたくさんあり、今後の研究に期待したいですね。

20種類のアミノ酸が豊富な食品の摂取が大切

20種類のアミノ酸が豊富な食品の摂取が大切

BCAAにはさまざまな効果を期待できることがわかりました。しかしながらBCAAさえ摂取すればよいわけではありません。それほど人間の身体は単純でなく、多くの栄養素が機能して生命活動を維持しています。

トレーニングなどによってダメージを受けて消耗した筋肉では、回復のためにタンパク質を新らに合成しなければなりません。その際、人間を構成する20種類すべてのアミノ酸が必要となります。とくに体内で合成できない必須アミノ酸は食事から補給しなければなりません。

肉や魚、卵などのタンパク質食品には、BCAAならびに20種類のアミノ酸が豊富に含まれています。毎食食べることを心がけてみるとよいでしょう。

まとめ

BCAAを摂取することで筋肉痛の軽減が期待できそうでしたね。またBCAAだけでは不十分で、BCAA以外のアミノ酸も大切でした。

そして筋肉痛や疲労の軽減には、栄養補給と同じくらい休息や睡眠が大切です。「栄養×運動×休養」の3拍子がそろってこそ日々のコンディションが整うのではないでしょうか。

参考文献

1. Kim, J., & Lee, J. (2014). A review of nutritional intervention on delayed onset muscle soreness. Part I. Journal of exercise rehabilitation, 10(6), 349.

2. Sharp, C. P., & Pearson, D. R. (2010). Amino acid supplements and recovery from high-intensity resistance training. The Journal of Strength & Conditioning Research, 24(4), 1125-1130.

3. Jackman, S. R., Witard, O. C., Jeukendrup, A. E., & Tipton, K. D. (2010). Branched-chain amino acid ingestion can ameliorate soreness from eccentric exercise. Medicine and science in sports and exercise, 42(5), 962-970.

4. himomura, Y., Yamamoto, Y., Bajotto, G., Sato, J., Murakami, T., Shimomura, N., … & Mawatari, K. (2006). Nutraceutical effects of branched-chain amino acids on skeletal muscle. The Journal of nutrition, 136(2), 529S-532S.

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坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
この記事を書いた人
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。

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