もち麦、押し麦はなにが違う?大麦の分類について
「大麦」、「もち麦」、「押し麦」って店頭でも隣り合わせで並んでおり、どれを買うべきか悩みませんか?
ちなみにですが、それぞれによさがあるので私はすべて食べています。
こちらの記事では、「大麦、もち麦、押し麦、それぞれの違い」について栄養学・調理学の視点から紐解いていきましょう。
大麦の分類
大麦は穂の形状の違いにより「二条大麦」、「六条大麦」の2種類に大別されます。
二条大麦は、ビールや麦焼酎などの原料です。一方で、六条大麦は、私たちが普段食べている「もち麦」や「押し麦」にあたります。それでは同じ六条大麦にあたる「もち麦」、「押し麦」はなにが違うのでしょうか?
それは米に「もち米」と「うるち米」があるように、大麦にも「もち性」と「うるち性」があるのです。もち性にあたるのが、その名のとおり「もち麦」。うるち性が「押し麦」です。
ちなみに小麦やライ麦と同じイネ科に属しますが、別ものになります。
もち麦と押し麦の違い
性質(デンプン)の違い
性質の違い、それはデンプンの違いです。
デンプンには、アミロースとアミロペクチンがあります。アミロペクチンが多いほど弾力と粘りが強く、モチモチとした食感になります。一方で、アミロースは弾力と粘りが弱く、パサついているのが特徴です。
もち性の「もち麦」の大部分は、アミロペクチンです。一方で、うるち性の「押し麦」には、アミロペクチンとアミロースが含まれています。
アミロースとアミロペクチンの構造を見ていきましょう。アミロースはブドウ糖が直列に連なった構造をしています。一方で、アミロペクチンはブドウ糖が絡み合った複雑な構造をしています。
これらがどれくらいの割合で含まれているのかが粘りと硬さの決め手です。
下にアミロースとアミロペクチンの配合割合を示しています。
いかがでしょうか?粘りの強いもち米は100%アミロペクチンです。インディカ米やトウモロコシはアミロースの割合が多いので、弾力と粘りが弱く、パサついているのが特徴です。
穀類の種類 | アミロース | アミロペクチン |
---|---|---|
もち米 | 0 | 100 |
うるち米 | 17 | 83 |
インディカ米 | 27 | 73 |
トウモロコシ | 25 | 75 |
大麦(もち麦) | 2~5 | 95~98 |
大麦(押し麦) | 20~30 | 70~80 |
表1:穀類に含まれるアミロースとアミロペクチンの割合(%)
食感の違い
もち麦と押し麦の大きな違いは「アミロースの含有量」です。
押し麦は、約20~30%がアミロースといわれていますが、もち麦は約2~5%しか含まれておらず、大半がアミロペクチンでもち米と似ています。この違いが食感に大きく影響しています。もち麦はモチっとした弾力、押し麦はふっくらとした食感が特徴です。
またアミロペクチンは、絡み合った複雑な構造をしており丈夫なため、保水力が強く冷めても美味しいのが特徴です。この特徴からおにぎりやサラダに入れるときは、もち麦の方が向いているのかもしれませんね。弾力よりもふっくらとした食感を楽しみたい方は、押し麦の選択をおススメします。
これはお米でも同様で、米の品種でアミロースとアミロペクチンの割合は異なり、「コシヒカリ」と「ミルキークイーン」でも食感は違うのです。皆さん、好みで選択していますよね。「もち麦」と「押し麦」も食べ比べして、好きな方をチョイスしてはいかがでしょうか。
ちなみに麦ごはんに「山芋とろろ」をかけて食べる方法は、とても理にかなっています。山芋にはアミラーゼというデンプン(アミロース・アミロペクチン)を消化する酵素が豊富に含まれており、すりおろしで山芋の細胞を壊すことでアミラーゼがより働くのです。また熱に弱いため、生ですりおろして食べることで大麦をよく消化してくれます。
加工方法の違い
「もち麦」と「押し麦」では精麦※1方法が少しだけ異なるのです。
まず大麦の硬い外皮を取り除きます。外皮を取り除いた後、蒸す工程に入ります。ここまでは、もち麦、押し麦ともに同じです。
もち麦は蒸した後、さらに綺麗に磨く作業がなされ、マルっとした形になるため「丸麦」ともいわれます。一方で、押し麦は蒸した後にローラーで潰されるので、その名のとおり「押し麦」です。押し麦の潰す過程があることで、吸水がよくやわらかい食感となるのです。
※1 精麦:大麦の外皮を剥いて加工する過程
栄養価の違い
ここまで、食感や製造過程など少しずつ異なっていた「もち麦」と「押し麦」。はたして栄養価にも違いはあるのでしょうか。
栄養価については、「もち麦」の方が食物繊維や他の栄養素が多いといわれることがあります。しかし販売メーカーによって異なるので、ご自身で購入する際に栄養成分表示を確認し、食物繊維量やその他の栄養素について確認してみるのがよいでしょう。
だたし、大麦(もち麦・押し麦)の栄養価がよいことは間違いありません。白米を食べるよりも大麦を混ぜた方が食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に摂取できます。
白米と比較すると大麦には、カルシウムやカリウム、マグネシウムなどが豊富に含まれています。カルシウムは骨や歯の構成成分以外にも健康のために大切なミネラルです。またカリウムは、ナトリウムと拮抗して働きます。マグネシウムは、穏やかな毎日のために貴重な栄養素です。
栄養素 | 白米 | 玄米 | 大麦(もち麦・押し麦) |
---|---|---|---|
エネルギー(kacal) | 358 | 353 | 346 |
タンパク質(g) | 6.1 | 6.8 | 6.7 |
脂質(g) | 0.9 | 2.7 | 1.5 |
炭水化物(g) | 77.6 | 74.3 | 78.3 |
糖質(g) | 77.1 | 71.3 | 66.1 |
食物繊維総量(g) | 0.5 | 3 | 12.2 |
水溶性食物繊維(g) | – | 0.7 | 6.7 |
不溶性食物繊維(g) | 0.5 | 2.3 | 5.5 |
リン(mg) | 95 | 290 | 160 |
鉄(mg) | 0.8 | 2.1 | 1.1 |
カルシウム(mg) | 5 | 9 | 21 |
カリウム(mg) | 89 | 230 | 210 |
マグネシウム(mg) | 23 | 110 | 40 |
銅(mg) | 0.22 | 0.27 | 0.22 |
亜鉛(mg) | 1.4 | 1.8 | 1.1 |
ビタミンB1(mg) | 0.08 | 0.41 | 0.11 |
ビタミンB2(mg) | 0.02 | 0.04 | 0.03 |
ビタミンB6(mg) | 0.12 | 0.45 | 0.13 |
葉酸(μg) | 12 | 27 | 10 |
パントテン酸(mg) | 0.66 | 1.37 | 0.4 |
ナイアシン(mg) | 1.2 | 6.3 | 3.4 |
※食品100gあたり
表2:白米、玄米、大麦の栄養価
まとめ
いかがでしたか?
もち麦と押し麦には、
- 性質(デンプン)の違い
- 食感の違い
- 加工方法の違い
がありました。
それぞれのよさがあり、用途に応じて使い分けてみるのがよいでしょう。お米に混ぜて炊く場合、大麦の割合をかえるだけで食べたときの食感が異なります。ぜひ、好みの割合を見つけてみてくだいね。
参考文献
文部科学省. 食品成分データベース