ダイエット中の味方?押し麦について解説
大麦ブームで最近話題の「押し麦」。江戸時代にはすでに食べられており、徳川家康も食べていたなんてエピソードもあります。糖尿病を患っていたのでは?といわれる家康。実は人一倍健康意識が高く、麦ごはんを好んで食べていたといわれています。
人生50年といわれた時代に70代半ばまで生きた家康。徹底した食事管理により長寿をまっとう。そんな家康が好んだ「麦ごはん」には健康やダイエットの秘密が隠されていたのです。
近年、栄養学の進歩で麦ごはんのパワーが数々わかってきました。今回は、現在わかっている「ダイエッター必見の押し麦の魅力」についてご紹介します。
押し麦とは
そもそも「押し麦」とはなにかご存知でしょうか?
押し麦は、ビールや焼酎の原料となる大麦の一種です。大麦は稲穂の形状の違いによって「二条大麦」と「六条大麦」に分類され、押し麦は六条大麦に属します。
六条大麦にはもち性とうるち性があり「もち性=もち麦」、「うるち性=押し麦」です。押し麦は、精麦される過程でローラーによって押し潰されているため「押し麦」といいます。この潰す過程があることでふっくらと仕上がるのです。
比較的安価で手に入ることから、一般的に「麦ごはん」で使用されているのは「押し麦」といわれています。
戦前までは当たり前のように麦ごはんとして押し麦が食べられていました。しかしながら戦後の経済成長とともに白米が主流になったことで、「麦ごはん=貧しい」イメージとなってしまったのです……。
押し麦の栄養価
そんな押し麦が注目をあびるきっかけとなったのは、栄養価の高さです。押し麦には、
- カリウム
- マグネシウム
- ナイアシン
- ビタミンB1
- ビタミンB2
などのビタミンやミネラルが豊富なのです。
日露戦争の中、脚気でどんどん倒れる兵士に「麦ごはん」を食べさせて戦ったというくらい栄養価が高かったのです。
さらに時代が進み1970年代頃。「体内で消化できないが重要な働きをする栄養素」として食物繊維が注目されるようになりました。
多くの健康やダイエットに関する研究が50年ほど前から盛んにおこなわれ、健康の代名詞ともいえる食物繊維。実は押し麦には豊富に含まれていたのです。
押し麦は、白米や玄米と比較すると圧倒的に食物繊維を多く含むのが特徴です。とくに日本人が不足している水溶性食物繊維が豊富で、とても魅力的だといえるでしょう。
白米 | 玄米 | 押し麦 | |
---|---|---|---|
カロリー | 358kcal | 353kcal | 346kcal |
タンパク質 | 6.1g | 6.8g | 6.7g |
脂質 | 0.9g | 2.7g | 1.5g |
糖質 | 77.1g | 72g | 66.1g |
食物繊維 | 0.5g | 3g | 12.2g |
水溶性食物繊維 | – | – | 6.7g |
不溶性食物繊維 | 0.5g | 2.3g | 5.5g |
表1:白米と玄米、押し麦の成分比較
厚生労働省「食品成分データベース」より作成
ダイエット中の栄養補給としての押し麦の魅力
それでは太るメカニズムについて考えながら、ダイエット中の方には魅力的な押し麦についてを解説します。
太る原因には運動量が少ない、油物の食べ過ぎなどいくつかありますが、高GI値食品の摂りすぎも要因のひとつといえます。
ごはんやお菓子など、糖質の多い食べ物は高GI値。いかにGI値を低く抑えるかも理想の身体づくりの秘訣のひとつではないでしょうか。
そしてその秘訣が押し麦にはあります。
押し麦には食物繊維が豊富に含まれていると前述しました。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。不溶性食物繊維は体内で水分を吸収し、カサを増して排泄されます。水溶性食物繊維はゲルを形成し、他の栄養素を巻き込みながら排泄されます。
それではどのようにしてダイエット中のサポートをするのでしょうか?
低GI値
押し麦を含む大麦には、β-グルカンと呼ばれる水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
β-グルカンは消化されない成分で、腸まで届いてゲルを形成。体内からキレイをサポートし、排泄されます。このゲルが他の栄養素も巻き込みゆっくり移動、GI値も低く抑えるのです[1]。
セカンドミール
押し麦には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維、どちらの食物繊維も豊富に含まれています。食物繊維豊富な食品を摂取することでGI値が低く抑えられます。そしてその効果が次の食事まで持続することを「セカンドミール」といいます[2]。
たとえば朝食に「押し麦」を食べることで、朝食に限らず、昼食時のGI値まで抑えられるのです。毎食食物繊維を食べるのが難しい方は、1日1食からでもはじめてみるとメリットを感じられるかもしれません。
食べ過ぎ防止
白米を食べるよりも噛み応えのある押し麦。咀嚼することで満腹感を得られることは科学的に証明されており、理にかなっているです。
よく噛むことはゆっくり食べることにもつながり、満腹感を得られ、GI値も低く抑えられ、一石二鳥です。さらに腹持ちもよいので、食べ過ぎ防止や余計なお菓子に手を出さなくてすみ、ダイエット中の味方なのです。
快調な毎日に
食物繊維は消化されずに腸に入ると、腸内細菌のエサとなり発酵されます。その過程でプロピオン酸や酪酸などの短鎖脂肪酸を産生。短鎖脂肪酸は悪玉菌の苦手な酸性です。
そのことによってスムーズに排泄されます。これらが日々のコンディションや、綺麗をサポートし、美しいダイエットの味方となるでしょう。
ムリなく続けられる
意外にも、食べはじめるとはまってしまう人が多い押し麦。毎日継続するにはコストパフォーマンスも重要ですよね。六条大麦のもち麦と比較して押し麦は、比較的安価なため継続しやすいでしょう。
ダイエット中の押し麦の摂り方
押し麦の魅力についておわかりいただけたと思います。さっそく、ダイエット中の押し麦の摂り方についてみていきましょう。
押し麦だからといって食べすぎ注意
押し麦ダイエットをはじめる前に、冒頭の表(表1)を再度ご覧ください。
カロリーは白米や玄米、押し麦もそう大差ありません。押し麦だからといってたくさん食べていると、かえって逆効果ですので要注です。
押し麦の炊き方
最大限の魅力を体感したい方は、現在食べている白米を押し麦に切り替えることをオススメします。押し麦の炊き方は、押し麦の重さの2倍ほど水を入れて、いつものごはんを炊くように炊飯します。
はじめてトライする方は、ごはんに少々混ぜる程度からはじめてみるのがいいかもしれません。徐々に身体に慣らして、ご自身のお好みの割合を見つけてみましょう。
押し麦の茹で方
茹でた押し麦は、サラダやヨーグルトに入れたりと便利です。
十分つかるくらいの沸騰したお湯に押し麦を入れて15分~20分茹でれば完成です。冷蔵庫で2日程度保存できますし、冷凍保存も可能。製氷機皿に入れて冷凍しておくと、スープや味噌汁にちょっと足したい時に便利です。また冷凍された押し麦をそのままヨーグルトに入れても、サクサクした食感で美味しくいただけます。
まとめ
今回は押し麦の魅力についてご紹介しました。体内での働きはもちろん、お財布にも優しい押し麦。食物繊維の他、ビタミン・ミネラルも豊富で栄養価の高い食品でした。
白米を食べられた家康があえて食べた「麦ごはん」。その魅力はダイエットサポート以上の価値がありました。長寿をまっとうした家康の健康法を真似て、健康的なダイエットに取り組むことが人生100年時代を生き抜く秘訣かもしれません。
参考文献
厚生労働省. 食品成分データベース.
1. Behall, K. M., Scholfield, D. J., Hallfrisch, J. G., & Liljeberg-Elmståhl, H. G. (2006). Consumption of both resistant starch and β-glucan improves postprandial plasma glucose and insulin in women. Diabetes care, 29(5), 976-981.
2. Wolever, T. M., Jenkins, D. J., Ocana, A. M., Rao, V. A., & Collier, G. R. (1988). Second-meal effect: low-glycemic-index foods eaten at dinner improve subsequent breakfast glycemic response. The American journal of clinical nutrition, 48(4), 1041-1047.