管理栄養士オススメ!食物繊維の上手な摂り方
今話題の「腸活」。なぜそれほど腸が注目されているのでしょうか?
腸は健康のバロメーターといわれるほど、栄養素を吸収したり、免疫系が存在するほど重要な器官なのです。
今回の記事ではそんな腸を健康に保つための秘訣となるであろう「食物繊維の上手な摂り方」について管理栄養士の視点で解説します。
食物繊維とは
食物繊維とは「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。つまり体内で消化・吸収されずに、小腸を通過して大腸に到達する難消化性成分が食物繊維です。
従来の栄養学では、「栄養素は消化・吸収されるもの」として認識されており、食物繊維は「食べ物のカス」として見向きもされていませんでした。しかし栄養学の進歩とともに、1970年代頃より「消化されないが体内でよい働きをする栄養素」として認知が高まりました。
それらが健康と密接に関わっていることから食物繊維は「第6の栄養素」として注目されています。また性質の違いから不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類に分類されます。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は、水に溶けない食物繊維で野菜類や穀類などに含まれており、シャキシャキとした歯ごたえが特徴的。咀嚼回数が増え満腹感を得られやすくなったり、低GI食材として有用です。
また腸内で水を吸収しながら排泄されるため、すっきり生活には欠かせない存在です。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は水に溶ける食物繊維です。ネバネバした食べ物に多く、胃や腸をゲル状になってゆっくりと移動するため腹持ちが良く、食べ過ぎの防止につながるでしょう。
食物繊維の1日の目標摂取量
成人における1日の食物繊維の目標摂取量は男性21g以上、女性18g以上が望ましいとされています[1]。この量は人参であれば7本、レタスであれば6個、バナナであれば19本に相当します。
しかしながら国民1人あたりの1日の平均摂取量は14.4gと不足しているのが現状です[2]。
食物繊維が豊富な食品
食物繊維は、
- 穀物
- 芋
- 豆
- 野菜
- 海藻
- 果物
- きのこ
などに豊富に含まれています。それでは食品に含まれる食物繊維の成分についてみていきましょう。
穀物
米や小麦には不溶性食物繊維のセルロースやヘミセルロースが豊富です。また最近話題の大麦にはβ-グルカンと呼ばれる水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
穀類は精製することで食物繊維量が減ってしまいます。なるべく玄米や七分つき米など精製度が低いものを選ぶとよいでしょう。また大麦の一種であるもち麦や押し麦をごはんに混ぜて食べるのもオススメです。
食品 | 量 | 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 食物繊維の総量 |
---|---|---|---|---|
白米 | 茶碗1杯(150g当たり) | 0.45g | – | 0.45g |
玄米 | 茶碗1杯(150g当たり) | 1.8g | 0.3g | 2.1g |
大麦 | 茶碗一杯当たりの使用量(10g当たり) | 0.7g | 0.5g | 1.2g |
芋
芋にはセルロースやヘミセルロースといった不溶性食物繊維のほか、ガラクタンなどの水溶性食物繊維も含まれています。
水溶性食物繊維は不足しがちなので、サツマ芋などの水溶性食物繊維の多い食品をオススメします。焼き芋や干し芋など手軽におやつで食物繊維を補給できるのも嬉しいポイントです。
食品 | 量 | 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 食物繊維の総量 |
---|---|---|---|---|
さつま芋 | 100g当たり | 1.8g | 0.9g | 2.7g |
じゃが芋 | 100g当たり | 2.2g | 1.2g | 3.4g |
里芋 | 100g当たり | 1.5g | 0.8g | 2.3g |
豆
大豆といえばタンパク質が豊富な食材です。実は食物繊維も豊富で、とくに不溶性食物繊維がたっぷり含まれているのです。
また大豆製品には食物繊維が豊富なものと少ないものがあります。大豆の絞り汁で作られる豆腐や豆乳は食物繊維が少なく、絞りカスのおからには食物繊維がたっぷり含まれています。
さらにオリゴ糖などの難消化性成分も含まれており、健康のためにはよりよい食材といえるでしょう。
食品 | 量 | 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 食物繊維の総量 |
---|---|---|---|---|
納豆 | 1食(50g当たり) | 1.2g | 2.2g | 3.4g |
大豆(ゆで) | 1食(50g当たり) | 3.2g | 1.1g | 4.3g |
おから(生) | 1食(50g当たり) | 0.9g | 2.6g | 3.5g |
野菜
野菜は食物繊維の大きな供給源です。とくに不溶性食物繊維が豊富に含まれます。そのほか、ビタミンやミネラル、還元成分など体にとって欠かせない栄養素がたっぷり含まれているのも嬉しいポイントです。
しっかり水で洗い、皮ごと調理すると食物繊維の摂取量を増やせます。
食品 | 量 | 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 食物繊維の総量 |
---|---|---|---|---|
ブロッコリー | 100g当たり | 4.3g | – | 5.1g |
ニンジン | 中1本(100g当たり) | 0.7g | 2.1g | 2.8g |
カボチャ | 100g当たり | 0.9g | 2.3g | 3.5g |
海藻
海藻にはセルロースやヘミセルロースといった不溶性食物繊維。アルギン酸やフコイダンといった水溶性食物繊維が含まれています。
食品 | 量 | 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 食物繊維の総量 |
---|---|---|---|---|
わかめ | 酢の物1食分(乾燥10g当たり) | – | – | 3.9g |
こんぶ | 1食分(10g当たり) | – | – | 0.7g |
味付け海苔 | 1食分(3.2g当たり) | – | – | 0.8g |
果物
果物には不溶性食物繊維のセルロースや水溶性食物繊維のペクチンが含まれています。
食品 | 量 | 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 総量 |
---|---|---|---|---|
バナナ | 1本(100g当たり) | 1g | 0.1g | 1.1g |
キウイ | 1個(100g当たり) | 1.8g | 0.7g | 2.5g |
みかん | 1個(100g当たり) | 0.5g | 0.5g | 1g |
きのこ
セルロースやヘミセルロース、リグニン、β-グルカン、キチンなどさまざまな食物繊維が含まれます。
食品 | 量 | 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 食物繊維の総量 |
---|---|---|---|---|
ぶなしめじ | 1/2房当たり | 1.25g | 0.25g | 1.5g |
なめこ | 味噌汁1杯(10g当たり) | 0.1g | 0.24g | 0.34g |
きくらげ | 1食分(1g当たり) | 0.06g | 0.7g | 0.76g |
食物繊維を上手に摂るポイント
できることなら、効率的に1日に必要な食物繊維を摂り入れたいですよね?ここからは、食物繊維を上手に摂るポイントについてご紹介します。
野菜は生と過熱どちらがよいか?
サラダなどの野菜を生で食べるとシャキシャキとした触感を楽しみながら、しっかり噛むことで満腹感が得られ食べ過ぎ防止となるでしょう。またお浸しや煮物などは野菜を加熱することでカサが減り、沢山食べられるためオススメです。
具だくさんスープやみそ汁を活用しよう
スープや味噌汁に野菜やきのこをたっぷり入れることで食物繊維をたくさん摂取可能です。またお野菜からしっかりダシがでることで、調味料が少なくて済みます。具が沢山入るため、お椀に入る汁の量が減ることで減塩効果も期待できるでしょう。
野菜を1日5皿を目安に食べる
1日の食物繊維の目標量を達成するための目安として、「1日5皿の野菜料理」を取り入れるとよいでしょう。サラダやお浸し、酢の物、煮物など調理法を変えることで飽きずに食べられるためオススメです。
主食に大麦など食物繊維の豊富な穀類を取り入れる
食物繊維豊富な主食を選択するとよいでしょう。たとえば白米に大麦や押し麦、雑穀などの穀物を混ぜてみるのもポイントです。全粒粉パンやパスタには食物繊維やミネラルがたっぷり含まれています。
豆や芋を1日1回食べるように心がける
豆や芋はつい忘れがちですが、大切な食物繊維の供給源です。豆は食物繊維のほか、還元成分も豊富に含まれています。芋は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のバランスが取れた食材です。サラダや温野菜、煮物などで1日1回取り入れてみましょう。
果物を取り入れる
果物には食物繊維のほか、ビタミンやミネラルなどを含み毎日取り入れたい食品です。ただし、果物には果糖やブドウ糖、ショ糖などの糖も含まれるため、摂り過ぎには注意が必要です。1日の目安量は片手の手の平に乗る量にしましょう。
ベジファースト
食べるタイミングを意識するだけで食物繊維のパワーをさらに発揮できます。GI値の低い野菜から先に食べることが有用であると知られています[3]。
食物繊維と発酵食品のコラボで腸活
人間の腸には、約100兆個以上の腸内細菌が存在しています。腸内細菌には善玉菌と悪玉菌、日和見菌があり、それらの菌が絶妙なバランスで腸内環境を維持しているのです。
食物繊維は善玉菌のエサとなり、食物繊維が腸内細菌によって発酵(分解)をうけて、酢酸や短鎖脂肪酸などが作られます。
さらに、ここに善玉菌の仲間であるビフィズス菌や乳酸菌を摂り入れることで、腸内で直接届くことで健康を保っているのです。
ヨーグルトや漬物、キムチ、納豆、味噌などの発酵食品にはこれらの菌が含まれています。食物繊維を含む食品と一緒に食べることで、ダブルのパワーですっきり健康生活をサポートしてくれるのではないでしょうか。
まとめ
食物繊維は野菜だけではなく、穀物や豆などにも豊富に含まれていました。
日々の食生活の中でまんべんなく食べることで、さまざまな難消化性成分を摂り入れられます。また身体は簡単に変化することはなく、食物繊維や乳酸菌などの腸で良い働きをするといわれる食品を継続的に取り入れることが重要なポイントです。
参考文献
文部科学省. 食品成分データベース.
1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
2. 厚生労働省. 平成30年「国民健康・栄養調査」.
3. Imai, S., Fukui, M., & Kajiyama, S. (2014). Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions in patients with type 2 diabetes. Journal of clinical biochemistry and nutrition, 54(1), 7-11.