難消化性デキストリンとGI値の関係について
約30年ほど前に開発された難消化性デキストリン。
さまざまなメリットが期待されており、働きのひとつに「GI値を低く抑える」とあります。しかしながら「まったく効果を感じなかった」、「身体のためにこれからも継続したい」など感想は人それぞれ……。
はたして難消化性デキストリンでGI値は変わるのでしょうか?今回は「難消化性デキストリンとGI値」の関係について解説します。
GI値とは
GI値(グリセミック・インデックス)とは、1981年にジェンキンス博士らが開発した血糖について食品ごとに数値化したものです。一般的にブドウ糖を100とした場合に、他の食品ではどれくらいになるかを数値化しています。
GI値=(「食品」摂取時の曲線の面積/「ブドウ糖」摂取時の曲線面積) × 100
GI値低く抑えるのと同様に意識しておきたいことがいくつかあり、
炭水化物の過剰摂取を控える
ゆっくり食べる
野菜や大麦など食物繊維をとり入れる
ベジファースト
などが挙げられ、日頃から意識するとよいでしょう。
「難消化性デキストリン」はGI値を低く抑えることが知られています。はたして、どうなのでしょうか。
難消化性デキストリンとは
デキストリンとは日本語でデンプンのことです。つまり難消化性デキストリンとは「消化されにくいデンプン」のことをいいます。元々トウモロコシなどの穀類や熟した果物などに含まれ、化学技術の力を使って消化されにくい成分を取り出したものが難消化性デキストリンなのです。
一般的に人間の体で消化されない栄養素を食物繊維といいます。難消化性デキストリンは食物繊維に該当し、水に溶けやすい性質から水溶性食物繊維に分類されます。
難消化性デキストリンとGI値の深い関係
栄養素としての難消化性デキストリンはGI値を低く抑えることがわかっています。通常、糖質は酵素(分解するハサミ)によってブドウ糖に分解・吸収されます。この時、体に余分な糖は脂肪として蓄えられるのです。
難消化性デキストリンは、一部、分解する酵素(分解するハサミ)で切れないブドウ糖があるため、一部の糖が吸収されずにそのまま排泄されます。よってGI値が低く抑えられます。
過大な期待は禁物です
GI値が低いからといっても過信してはなりません。よく「難消化性デキストリンを摂取したら健康になれますか?」「痩せますか?」と質問をいただきます。あたかも難消化性デキストリンが魔法のやせ薬のような誤解が生じていることに疑問を感じます。
難消化性デキストリンは、GI値が0なわけではなく(そんな食品は存在しません。)、低いということを忘れてはいけません。大盛どんぶりやケーキが難消化性デキストリン食べたらチャラになるなんて話ではありません。
難消化性デキストリンは、キャベツや大麦などに含まれる食物繊維と同じ仲間です。キャベツを食べたからといって、ケーキがチャラになる発想には至らないでしょう。食物繊維の仲間と認識して活用するとよいのではないでしょうか。
多くの食物繊維をとり入れよう
食物繊維の消費が健康維持につながることが報告されています。
日本人9万人を17年間追跡した研究では、健康維持のためには、食物繊維の摂取が重要であると報告されています[1]。食物繊維摂取量の多かったグループは1日約20g程度摂取していました。
日本人の食事摂取基準では成人男性では1日21g以上、成人女性では1日18g以上が望ましいとされています[2]。しかしながら日本人の平均食物繊維摂取量は1日14.4gと圧倒的に不足しているのです[3]。
不足の背景には穀類や芋類、豆類の摂取量の低下があります。戦後直後までは食料難の時代でもあり、麦飯や芋が主な栄養源で食物繊維摂取量は1日20gを超えていました。ところが1950年頃以降、食が豊かになるにつれて麦飯よりも白米、手頃なファストフードなどが好まれるようになり、食物繊維摂取量が低下していったのです。
このような日本人の食物繊維不足を解決するひとつの策が「難消化デキストリン」です。利便性を追求する現代社会のニーズにあった食品ではありますが、頼りきりなんてわけにはいかないでしょう。
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、バランスが大切です。難消化性デキストリンは水に溶けやすい性質があります。野菜や豆類、芋類など多くの食品からとり入れることでバランスが保てるでしょう。
またこれらの食品には、ビタミン・ミネラルや還元成分など、食物繊維以外の栄養素も一緒に摂取できるので一石二鳥ですね。
まとめ
難消化性デキストリンにさまざまな意見があって当然ですよね。食物繊維の一種であり、過大な期待はできないことがわかりました。利便性が高い点では食物繊維不足の手助けとなるでしょう。
また健康維持には、バランスのよい食生活に加えて運動習慣も重要なポイントです。「食事×運動」を基軸に健康的な生活を心がけることこそが、健康への近道ではないでしょうか。
参考文献
1. Katagiri, R., Goto, A., Sawada, N., Yamaji, T., Iwasaki, M., Noda, M., … & Tsugane, S. (2020). Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based prospective study. The American Journal of Clinical Nutrition, 111(5), 1027-1035.
2. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
3. 厚生労働省. 平成30年「国民健康・栄養調査」.