プロテインは筋トレ前?筋トレ後?飲むタイミングについて
一念発起して、筋トレを開始。
年頃の男の子なら異性の目も気になり「格好いいカラダになりたい!!」。中年のお父さんなら「崩れた体型を何とかしたい」。スポーツをおこなうヒトなら、自身が取り組む競技の能力を向上させるため。
それぞれ筋トレを実践する目的は違えど、せっかくやるならしっかり成果を出したいと思うのは至極当然のことです。
そんなとき、多くの人がまずは手に取ってみたいサプリメントのひとつが「プロテイン」ではないでしょうか?
こちらの記事では「筋トレを開始⇒プロテインを購入⇒いつ摂るのがいいのか」というような、疑問をお持ちの方に向けたお話です。
筋肉の分解と合成について
筋肉はヒトの身体の中で、最も大きな器官です。
日々の生活を送る中で労働や家事、スポーツなど身体動作をつかさどるだけではありません。体型維持や体温、血糖値の調節、空腹・飢餓時のエネルギー供給など多くの役割をはたしています。
このように多くの機能を持った筋肉は、その役割をはたすと日々数%ずつ古いものを壊し、新しいものに作り変えるという身体現象を繰り返し、これを分解と合成といいます。
「筋トレ」という行為そのものが今あるものを壊し、新しいものに作り変えるという行為ですから、日々の生活サイクルの中に筋トレが加われば、分解と合成は半ば強制的に加速されるのです。
筋トレによって筋肉に負荷がかかると一旦は、ダメージを受けベクトルは分解側に傾きます。しかしその後、分解の作用を過補償するという性質が働き、合成の方が少し上回り、筋肉は大きくなっていくのです。その際に、材料であるタンパク質を充分に摂取しておくことが重要になります。
図1:分解と合成のイメージ
1日24時間のライフサイクルの中に常習的に筋トレが組み込まれると、図1の天秤のように、時間経過する中さまざなきっかけによって、そのベクトルを刻々と変化させています。
筋肉の分解と合成という活動は食事や筋トレ時だけではなく、睡眠中も含めて1日中作用しています。筋肉が分解されても、1日トータルでその分を合成できれば筋量はプラスマイナスゼロ。分解よりも合成が上回れば筋量は増加、分解よりも合成が下回れば筋量は減少していきます。
また筋トレをおこなえば、今まで以上に筋肉の材料であるタンパク質の必要量が増していきます。しかし単に筋トレといっても目的は千差万別。体格などの要素が加わればよりいっそう個体差が大きくなります。3度の食事だけではこと足りず、間食や補食を加えなければいけない場合も。
では必要量の目安とは、一体どれくらいの量なのでしょうか?
自分自身のタンパク質必要量を知る
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、18歳以上の健康な成人の1日におけるタンパク質摂取推奨量は男性60~65g、女性は50g[1]。
この推奨量は標準的な体格が指標となっています。
カラダの大きい方と小さい方、日々の生活で積極的に筋トレをおこなっている方と、そうでない方を比較すれば当然前者の必要量が増すのはいうまでもありません。
多くの知見から総合的な判断をすると、日々スポーツや筋トレをおこなっている方の推奨量は、体重1㎏あたり1.4~2.0g。1回の食事では体重1㎏あたり0.25/g 程度。
この3つの指標から必要量の目安を算出すると、日本人成人男性のおおよその平均体重65kgを基準とすれば下限値60g、上限値が130gという数値となります。
体格や筋トレの実施状況をもとに数値を算出しておけば、タンパク質とプロテイン摂取のタイミングと回数をより具体的に考えられます。
どのようにプロテインを活用すればよいのか?
筋トレをおこなう目的によって、摂取の注意点が変わります。
カラダを大きくする場合の理想は「できるだけ余分な脂肪を付けずに筋肉を大きくすること」で、小さくする場合の理想は「できるだけ筋肉を落とさずに余分な脂肪を落とすこと」にあります。
いずれの場合にせよタンパク質は、それぞれの目的が達成されるべく量を目的に応じ然るべきタイミングで摂取できねばなりません。
まずは双方ともに「1日3回の食事それぞれで、しっかりとタンパク質を摂取できているか?」が大前提となります。
体重65kgの男性ならば、1回の食事で肉・魚・卵・大豆製品・乳製品をバランスよく摂取すれば、体重1㎏あたり0.25/g 程度のタンパク質摂取はそう難しくありません。
※肉、魚であれば種類、部位を問わず、手のひらに乗る程度の大きさの脂身の少ない切り身、卵1個と納豆1パックとごはん1膳で充足できます。
しかしおにぎりや菓子パン、麺類というような炭水化物のみの食事だと、たちまちタンパク質が不足してしまいます。とくに「筋肉量を維持し、余分な脂肪を落とすこと」を目的に筋トレをはじめた方は、誤った食事制限により、タンパク質摂取不足に陥っていることも少なくありません。
筋肉の材料であるタンパク質の摂取不足は、材料不足により運動によって促進される筋肉の分解を手助けしてしまう可能性が高くなります。炭水化物や脂質の摂取量を調整しながら、体格に見合ったタンパク質の必要量を確保するように心掛けましょう。
食事でタンパク質不足になりがちな方は食事に添加。体格が大きく、3度の食事だけでは必要量を満たせない方は、補食や間食でプロテインを活用すれば必要量を容易に補えます。
また逆に「できるだけ余分な脂肪をつけずに筋肉を大きくすること」を目的に筋トレをはじめた方は、筋肉の合成量が日々上回っていくためのサポートとして、タンパクの摂取を意識しなければなりません。
1日を通じて一定のローテーション、数量でタンパク質を補給し、6~8時間の睡眠時間を軸に覚醒時間が16~18時間とするなら、約3時間置きに5~6回の補給が理想的です。
その時間軸の中に3度の食事と2~3回の間食やプロテイン摂取を戦略的に落とし込み、食事や間食、プロテイン摂取というタンパク質補給のすべてのタイミングが並列と考えるべきです。
ゴールデンタイムや今回のタイトルにもある筋トレ前、筋トレ後など、ある時間帯をピンポイントで狙った摂取よりも、1日を通して「合成の時間帯」を効果的に継続できるような「タイミングと量」を意識することが重要になります。
筋トレを開始し順調にトレーニング強度が高まって筋量が増加すれば、おのずとと必要量も増加していきます。
前述した上限値~下限値の数値を参考に、ご自身の体重に照らし合わせ、その変化を確認しながら、あわせてタンパク質の摂取量も加減してください。
まとめ
いかがでしたか?
筋トレをおこない、その成果を確かなものとするには「タンパク質の摂取とプロテインの有効活用」は切っても切り離せないものがあります。
しかしながらタンパク質もプロテインも、摂れば摂るほどにその成果をあげる、魔法の栄養素・サプリメントではありません。
タイミングや必要量を間違えば体内で有効活用されることなく、体外に排出されてしまいます。また過度な摂取はカラダの不調を招く恐れもあるのです。
カラダづくりとタンパク質・プロテイン摂取は準備周到に戦略的におこないましょう。
参考文献
1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版)