食物繊維をうまく活用して便秘を解消しよう

便秘が続いてなんだかイライラ。お腹が張ったり、お肌の調子も悪くなるし……。
便秘は健康のバロメーターといってもいいぐらい、さまざまな影響を及ぼします。できることなら毎日すっきり排泄したいものです。
実は便秘にはさまざまな要因や改善策があります。今回のコラムでは、便秘解消策のひとつである食物繊維の活用法についてご紹介します。
便秘とは
通常、排便は毎日あるものです。しかしながら、なんらかの原因で便が硬くなって出にくくなることで排便回数が減ったり、量が減ってしまう場合があります。
一般的にこのような状態が3日以上つづく場合を「便秘」といいいます。
便秘の種類

便秘にはいくつか種類があり、機能性便秘と器質性便秘に分けられます。器質性便秘はイレウスや大腸がんなどなんらかの疾患にもとづいて生じる便秘のことをいいます。
機能性便秘は疾患に関係なくおこる便秘で、
- 弛緩性便秘
- 痙攣性便秘
- 直腸性便秘
に分けられます。
弛緩性便秘
弛緩性便秘とは、蠕動運動が弱くなったり、筋力の低下で便がうまく移動できずに大腸に留まった便秘のことです。大腸にとどまった便は水分がドンドン吸収されて硬くなり、出にくい状態となってしまうのです。便秘の中でも頻度が高く、高齢者や女性に多いといわれています。
痙攣性便秘
痙攣性便秘とは、ストレスや自律神経の乱れによって蠕動運動が活発になりすぎたり、痙攣をおこして便がうまく移動できないために起きる便秘のことです。痙攣性便秘は、コロコロとした硬い便と下痢を交互に繰り返している方が多いといわれています。
直腸性便秘
通常、便が直腸まで送り出されると便意を生じ、肛門の筋肉が緩んで便が排泄されます。しかしながら我慢することが習慣化していると、神経が鈍ってしまい直腸に便が送り出されても便意が生じなくなってしまうのです。これを直腸性便秘といいます。
便秘の原因
便秘の原因には、
- 水分不足
- 排便を我慢する習慣
- ストレス
- 運動不足
- 食物繊維不足
などさまざまです。
そのひとつに食物繊維不足があります。とくに日本人の食物繊維摂取量は目標量に到達しておらず不足傾向です。もし食物繊維不足が原因の便秘なら解決できるかもしれません。
ここからは便秘解消に役立つかもしれない食物繊維の効果的な活用法についてご紹介します。
便秘解消!食物繊維の効果的な活用法

食物繊維とは
食物繊維とは、人間の体内で消化できない成分のことをいいます。消化できないのでカロリーはほどんとありません。
にもかかわらず腸内で腸内細菌の発酵を受けて、腐敗物を便と一緒に排泄したりするなど腸内を綺麗に保つ働きがあります。腸内が綺麗に保たれることで、免疫系が活発に働いたり、エネルギー代謝が亢進するなどメリットがたくさんあるのです。
食物繊維の目標量を知ってますか?
そもそも食物繊維を1日にどれくらい食べたらよいかご存じでしょうか?
「日本人の食事摂取基準」では、成人男性で21g以上、成人女性で18g以上が望ましいとされています[1]。この量は人参であれば7本、レタスであれば6個、バナナであれば19本に相当します。
また「国民健康・栄養調査」によると、日本人の平均食物繊維摂取量は14.4gと不足しており、積極的に取り入れたいですね[2]。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違い
食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」があり、それぞれ特徴が異なります。
水溶性食物繊維は、腸内でゲル状なって腸内の腐敗物を絡めとりながらゆっくり移動します。不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸収し便のカサを増しながら移動。便のカサが増すことで腸が刺激され排便を促進します。
水溶性食物繊維、不溶性食物繊維どちらも大切な働きをしており、理想的なバランスは「水溶性食物繊維:不溶性食物繊維=1:2」といわれています。とくに不溶性食物繊維に偏って過剰に摂取すると、便のカサが大きくなりすぎてスムーズに移動できなくなり、大腸内に長時間停滞した便は腸に水分を吸収されてしまうため硬くなってしまい、かえって便秘になることも……。
それではどのような食品に食物繊維が含まれているのでしょうか?水溶性食物繊維と不溶性食物繊維それぞれ見てみましょう。
食物繊維を含む食品
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、ヌメヌメ・ネバネバとした食品が多く、下記のような食品が該当します。このヌメヌメが腸内でゲルを形成し、便を柔らかくしながら排泄します。
食物繊維の名称 | 主な食品 |
---|---|
ペクチン | 果物類、芋類、野菜類 |
グルコマンナン | こんにゃくいも |
アガロース | 寒天 |
アルギン酸ナトリウム | 昆布、ワカメなどの海藻類 |
フコイダン | もずく、めかぶ、昆布 |
カラギーナン | 海藻類 |
イヌリン | ごぼう、菊芋、チコリ、玉ねぎ、にんにく |
β-グルカン | きのこ、大麦 |
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維には、シャキシャキとした歯ごたえのある食品が多く、下記のような食品が該当します。スジっぽい繊維が水分を吸収しながら便を形成し、腸を刺激することで排便を促します。
セルロース | 野菜類、大豆、ふすま、穀類、芋類 |
リグニン | 豆類、カカオ、芋類 |
キチン | きのこ類、甲殻類の皮 |
キトサン | 甲殻類の皮 |
腸内環境を整えよう

腸内には、よい働きをする善玉菌と有害物質などを発生する悪玉菌、どちらでもない日和見菌が存在します。それらの菌がバランスを保ちながら腸内環境を維持しており、このバランスが崩れることも便秘の原因となるのです。
つまり腸内環境を綺麗に保つことも便秘対策のひとつです。そのために善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を食べたり、ビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌がすでに含まれている食品を食べることをおススメします。どちらかを食べるのではなく、両方食べることで腸にとって嬉しい働きをしてくれるのです。
ビフィズス菌や乳酸菌はヨーグルトやキムチ、漬物などに含まれています。さまざまな食品から腸に有用な菌を取り入れましょう。
便秘は食事だけが原因ではない

冒頭でお話したように、便秘にはストレスや生活リズムの乱れなどさまざまなな要因があります。食事だけでは改善が難しいことも多々あるでしょう。
その他の対策として、
- 水分補給
- 適度な運動
- 生活リズムを整える
などを意識してみましょう。
水分補給
便を柔らかくするために水分の摂取は欠かせません。日頃から意識して飲むようにしましょう。とくに目覚めの1杯は、睡眠中の水分不足を補給したり、腸を程よく刺激するので排便が促されます。
適度な運動
身体を動かすことで血流が促進し、腸の働きもよくなります。ウォーキングや体操など適度な運動を習慣にしてみましょう。
生活リズムを整える
腸の活動には自律神経が関わっています。リラックスする時間を設けたり、しっかり睡眠を取るなどして、自律神経を整えることも大切です。また朝食後など、決まった時間に落ち着いてトイレに入ることを習慣化することで、排便リズムが整うこともあります。
まとめ
今回は、便秘解消の解決策のひとつである食物繊維についてお話しました。
ご紹介したように便秘にはさまざまな要因があり、一概に食物繊維さえ食べたらいいというものではありませんでした。食物繊維や乳酸菌などを食べることで解決するかもしれませんし、違う要因なら別の対策が必要です。
食物繊維以外に今回ご紹介した水分補給や適度な運動など、心当たりあるものを試してみるのもひとつの手はないでしょうか。それでもダメな場合は、なんらかの疾患が潜んでいる場合もありますので、専門病院を受診しましょう。
参考文献
1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
2. 厚生労働省. 平成30年「国民健康・栄養調査」.