タンパク質が不足するとどうなる?身体の変化と原因・対策について
日ごろからタンパク質を意識して食べていますか?
忙しくて食事を簡単にすませていたり、ダイエットで極端に食事制限をしていると陥りやすいのがタンパク質不足。タンパク質は体内でさまざまな働きをしており、不足すると筋肉量が減ったり、疲れやすくなったりなど支障が出ることも……。
今回のコラムでは、タンパク不足のサインや身体への影響、タンパク質のとり入れ方などについて解説します。
体内でのタンパク質の働き
タンパク質は肉や魚、豆腐などの食品に含まれており、それらを食べると胃や腸でアミノ酸という成分に消化され腸から吸収されます。
筋肉や臓器、血液、ホルモンなど身体の多くはタンパク質です。吸収されたアミノ酸は、多くのアミノ酸と結合して、血液や臓器などタンパク質をつくります。
タンパク質が不足しているサイン
国民健康・栄養調査によると[1]、20歳以上の男女ともにタンパク質の推奨量を満たしています[2]。そのため大半の方は不足の心配はないと考えられています。
しかしながら下記のような項目に心当たりがある場合は、タンパク質が不足しているかもしれません。
- 1日2食
- 忙しくて食事バランスが乱れている
- 過度なダイエットをしている
- 仕事でのミスが増えた気がする
- 運動しているのに、なかなか理想の身体にならない
- 見た目の元気がないといわれるようになった
- 化粧ののりが良くない
タンパク質が不足するとどうなるのか
筋肉が落ちて太りやすい身体に
ダイエットや減量のために食事制限をしていると、必要なエネルギー量が入ってこないため、身体はなんとかエネルギーを作りだそうとします。その際に、体脂肪や筋肉を分解してエネルギーをつくります。つまり筋肉がどんどん分解されるために筋肉が減ってしまうかもしれません。
人間の身体は、筋肉や脳、肝臓でエネルギーをたくさん消費しています。筋肉量が減ってしまうと利用されるエネルギーも減ってしまうために、太りやすい身体になってしまうのです。
激しい運動やトレーニングをしている場合、運動量に見合った栄養が確保できていないと筋肉の分解が合成を上回ってしまうため「運動しているわりに理想の身体に近づけない」なんてことがあります。
筋肉は常に合成と分解を繰り返しています。いかに合成時にタンパク質を主体とし、その他の栄養素もうまく取り入れられるかがポイントになります。
不健康な身体に
忙しく余裕のない方は、タンパク質が不足しているかもしれません。
普段よりたくさん動いたり運動した場合は、タンパク質の必要量が増加します。コンディション維持のためにも十分なタンパク質の補給を意識しましょう。
また身体の多くはタンパク質でできています。タンパク質をはじめとする栄養素の不足は、身体の不調につながりかねません。丈夫な身体づくりにはやはりタンパク質を中心とした十分な栄養素の補給が重要です。
小さなミスが増える
小さなミスが増えてきた場合もタンパク質の不足が原因かもしれません。ほっとするような休息時間に増えるとされているセロトニン。このセロトニンを作っているのもトリプトファンというアミノ酸です。
トリプトファンは、必須アミノ酸といい体内で合成されないため食事から摂取する必要があります。体内で合成できないアミノ酸はトリプトファン以外にもあり、必須アミノ酸をしっかり補給するためには、「良質なタンパク質」を取り入れる必要があります。
良質なタンパク質とは、肉・魚・卵・大豆・牛乳などアミノ酸スコア※が高い食品です。
※アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸をどれだけバランスよく含まれているのか数値化したもの。高ければ高いほど良質なタンパク質といえる。
運動しているのになかなか効果がみられない
健康目的や筋肉増強など運動の目的はさまざまかと思いますが、運動の効果を体感できていない場合は、タンパク質が不足しているかもしれません。運動や筋力トレーニングにより、筋肉は分解され、タンパク質を主体とする栄養素を取り込むことで筋肉が作られます。
タンパク質が不足している場合、トレーニングで分解が促進したものの合成するだけの栄養が入ってこないため、筋肉が作られづらくなってしまいます。
タンパク質の必要量を知る
それでは1日にタンパク質はどれくらい必要なのでしょうか?
成人男性の推奨量は65g、成人女性の推奨量50gです[2]。アスリートや運動を積極的にされている方は、通常よりもタンパク質を多く必要とし、体重1kgあたり1.4~2.0gを目安に摂取するとよいでしょう。
こんな食事は危険!タンパク質不足の可能性あり
1日に必要な量はわかりました。しかし必要量がわかっても、具体的にどのような食事が理想なのかわからない方も多いでしょう。下記のような食事をしている場合はタンパク質が不足しているかもしれません。
- 朝食は食べない、もしくはトーストとコーヒーのみ
- 昼はパスタやうどんなど麺類中心
- ダイエット中で、野菜中心にしている
- 夕食にまとめてタンパク質をとっている
タンパク質は常に合成と分解を繰り返し、とくに空腹や十分にタンパク質が補給されていない時間帯に分解が促進します。よって3食の食事で均等にタンパク質を補給することが大切です。
しかし残念なことにタンパク質は食いだめできません。一度にたくさん食べても体内利用される量には限界があり、1食あたり20~40gを目安に数回に分けて摂取したほうが、身体づくりによいと報告されています[3]。
また別の報告で、10gを1.5時間毎、20gを3時間毎、40gを6時間毎それぞれのグループで摂取した結果、タンパク質20gを3時間毎に食べたグループが丈夫な身体づくりに有用でした[4]。
これらの報告から、朝昼夕の3食と、必要に応じて間食や夜食でタンパク質を均等に摂取することがポイントといえるでしょう。
タンパク質を「意識して」食べよう
タンパク質は、肉・魚・卵・大豆・牛乳・ヨーグルトなどに豊富に含まれています。毎食タンパク質を意識して摂取し、1食当たり肉+豆腐などタンパク質食品を「2品」食べると不足の心配はほぼないでしょう。
またタンパク質は上記にあげたような食品だけではなく、ごはんやパンなど主食にも多少含まれています。タンパク質を効率よく体内で利用するためには、タンパク質単体で摂取するよりも、ごはんやパンなどの炭水化物や野菜などのビタミン・ミネラルを一緒にとり入れるとよいでしょう。
まとめ
タンパク質は少し意識することで簡単に摂取できます。
ポイントは毎食欠かさずに、なにかしらタンパク質食品を取り入れることです。
最近では、コンビニでチキンやヨーグルトなどタンパク質食品を手軽に購入できます。いつもの食事に意識してタンパク質を追加してみましょう。
参考文献
1. 厚生労働省. 平成30年「国民健康・栄養調査」.
2. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
3. Kerksick, C. M., Arent, S., Schoenfeld, B. J., Stout, J. R., Campbell, B., Wilborn, C. D., … & Willoughby, D. (2017). International society of sports nutrition position stand: nutrient timing. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14(1), 1-21.
4. Areta, J. L., Burke, L. M., Ross, M. L., Camera, D. M., West, D. W., Broad, E. M., … & Hawley, J. A. (2013). Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. The Journal of physiology, 591(9), 2319-2331.