プロテインを飲むタイミングの目安はいつ?
タンパク質を含む栄養価を補うための摂取では、少し乱暴ですが「食事に一品追加や置き換え、間食」といった具合に、1日トータルの食事で栄養価を添加するだけでも大きな役割を果たす可能性が高くなります。
しかしトレーニングなどによる身体づくりで、特にできるだけ余分な脂肪を付けずに筋肉を成長させるためには、より計画的に自身に合った「摂取量とタイミング」を意識してタンパク質を補給することが重要になってきます。
こちらの記事では、「プロテイン摂取のタイミング」について詳しくお話していきます。
筋肉の分解と合成について
筋肉(骨格筋)は、ヒトの身体の中で最大の器官です。
筋肉は、日々の生活を送る中で労働や家事、スポーツ・筋力トレーニングを行うという身体動作をつかさどるだけではありません。体型維持や体温、血糖値の調節、空腹・飢餓時のエネルギー供給※1等、多くの機能を有しています。
※1 エネルギー供給:長時間の空腹や飢餓状態、栄養補給を伴わないハードなスポーツ・トレーニング下では、筋肉を分解してエネルギーを作り出す作用が働く場合がある
筋力トレーニングや筋肉に強い負荷がかかるようなスポーツなど、活動が積極的に行われていれば筋肉は微細な損傷を起こし、一旦は分解にベクトルを強く向けていきますが、筋肉が持つ可逆的に過補償するという性質が働き、回復のためにベクトルの向きを合成へと転換します。
その際、プロテインなどによるタンパク質の補給が重要になります。運動前や、間食でタンパク質をチャージしておき、理想の身体づくりのために、運動後や、各食事の+αとしても摂取することをおススメします。
1日24時間のライフサイクルの中に常習的にスポーツやトレーニングが組み込まれているような方は、図1の天秤のように、時間経過する中でその傾きを刻々と変化させています。
筋肉の分解と合成は食事や運動時だけではなく、睡眠中も含めて1日中働きます。筋肉が分解されても、1日トータルでその分を合成できれば筋量はプラスマイナスゼロ。分解よりも合成が上回れば筋量は増加、分解よりも合成が下回れば筋量は減少していきます。
ゴールデンタイムや今回のタイトルにもある食前、食後など、ある時間帯をピンポイントで狙った摂取よりも、1日を通して「合成の時間帯」を効果的に継続できるような「タイミングと量」を意識することが重要です。
いつ、どのくらいを目安に摂取することが適切なのか?
プロテインの適切な摂取タイミング
筋力トレーニングが筋量を増加させる有効な手段であることは皆さん周知の事実。ダメージを受けた筋肉を素早く回復へと導くために、ゴールデンタイムが筋合成開始の基準時間帯となっているのは、これに端を発しているからです。
しかしながら近年の多くの知見から、このポイントの摂取だけでは、必要量を満たせないことがわかってきました。図2をご参照ください。こちらのグラフは筋の分解と合成をイメージグラフ化したものです。
筋力トレーニングや激しいスポーツを行った直後から分解と合成は同時に促進され、分解は24時間を境に48時間後元に戻ります。
対して合成は、1~2時間で急速にピークに達し徐々に下降していきますが、分解が終息するラインの時間帯も、その後24時間に渡って高い水準で推移していくことがおわかりいただけるかと思います。
つまり筋力トレーニングやスポーツを行った時間帯を基準点とした場合、その直後(ゴールデンタイム)だけではなく、おおよそ2日間は合成の担保が持続するということです。裏を返せばその経過時間帯に、タンパク質が不足すれば分解の負債を大きくしかねません。
それを防ぐためには、1日を通し一定の間隔で均等に十分な量のタンパク質を摂取することが大切です。6~8時間の睡眠時間を軸に覚醒時間が16~18時間とするなら、約3時間置きに5~6回の補給が理想的であるといえます。
プロテインの適切な摂取量
近年の知見から総合的に判断してみると、1日のタンパク質摂取推奨量は、体重1㎏あたり1.4~2.0g。1回あたりの摂取推奨量は体重1㎏あたり0.25/kg 程度となっています。体重70㎏のアスリートを基準にすると約100~140g。20g前後を5~6回に分けて摂取すれば良いということになります。
過去記事“プロテインのカロリーを一般食品と比較してみた”を参考に三度の食事では、タンパク質を豊富に含む食品を摂取し、不足分をプロテインで補うという考え方が合理的です。体格や年齢差で加減が必要だが、「多すぎず、少なすぎず」の適量が20~40gの範疇であることも多くの知見で明らかにされています。
蛇足になりますが、今だはびこる体育会系の悪習慣「吐くまで食べろ!!」的なドカ食いや「プロテインはトレーニングした日だけ飲めばよい」は誤りだという事ことがご理解いただけたかと思います。
また筋力トレーニングの頻度も、プログラムをしっかり組めば週2~3回でも効果が期待できるということです。
まとめ
ヒトの筋肉を大きくする行為は、車に例えるならエンジンを大きくするモデルチェンジと言い換えられます。エンジンが大きくなるに伴い、大量のガソリンというエネルギーを浪費する、いわゆる「低燃費」の車にシフトしていくことと同義です。
食が安定して供給されない動物の世界で、不用意にカラダを大きくしていくことは、より沢山のエネルギーを確保し続けねばならない、「リスキーな生活」が強いられます。動物の恒久的な種の保存を考えれば、限りあるエネルギーを有効に使い生命を維持していかねばなりません。
それではヒトにおける筋の分解と合成とは…?
筋力トレーニング後の大きくなろうとする適応と、そうなるまいとする抑制の機能がせめぎ合うさま。一定のエネルギー収支を絶妙なバランスで保ち、固体を維持しようとする神秘的な能力は、DNAに組み込まれた崇高なシステムのひとつです。
それを打開するためには、少しばかり面倒とも思える食習慣やタンパク質摂取習慣を身に着ける必要がある、との重要性をお伝えできたのではないでしょうか?