プロテインの栄養成分を知ろう
フロバイスヒトリジメ(風呂場椅子ひとり占め)
この暗号のような言葉、みなさんはなんだかわかりますか?この言葉にピンときた方は、相当な知識の持ち主でしょう。トレーナーさんや管理栄養士さんは聞き覚えがあるかもしれません。
これはタンパク質を構成する「必須アミノ酸9種」を覚えるために、各アミノ酸の頭文字を並べた言葉です。よく勉強のために繰り返し呪文のように唱えていたのを思い出します。
こちらの記事では「プロテインを構成する栄養成分」について詳しく解説いたします。
プロテインを構成する栄養成分
ホエイ・カゼイン・ソイの違い
プロテインの種類には、牛乳を原料とするホエイプロテインとカゼインプロテイン。大豆を原料とするソイプロテインの3種類があります。原料の違いから、ホエイプロテインとカゼインプロテインは動物性、ソイプロテインは植物性に分けられます。
いずれもタンパク質を豊富に含む食品なのですが、どういった違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴をみていきましょう。
ホエイプロテイン
ホエイプロテインは、乳清といって「ヨーグルトの上澄み液」に溶け込んだ乳たんぱくを抽出したものです。吸収のスピードが早くスムーズなため、運動後のタンパク質補給におすすめです。
市場に流通しているプロテインの多くはホエイが原料になっています。
カゼインプロテイン
牛乳に酸を加えると、水に溶けないタンパク質がヨーグルト状に固まります。この乳たんぱくから作られるのがカゼインプロテインです。
チーズなどの原料に使われるものと同様で、胃の中にとどまり、ゆっくりと時間をかけて吸収・消化されます。カゼインは腹持ちが良いため、睡眠中の補給として夜に飲んだり、ダイエット中の間食として利用するのもおすすめです。
ソイプロテイン
ソイプロテインは植物性のタンパク質である大豆から作られたプロテインです。大豆には食物繊維が含まれており、消化吸収がゆっくりになるため、腹持ちが良いのが特徴です。
日本人は昔から
- 醤油
- 味噌
- 豆腐
- 納豆
などの大豆に馴染み深い食生活をしてきました。そのため食品との親和性が高く、日常生活の延長として取り入れやすいかもしれません。
アミノ酸
これらのプロテインはタンパク質を豊富に含んでいます。体内で消化・吸収される際に、タンパク質はいったん最小単位の「アミノ酸」に分解されます。そこから身体の設計図である「DNA」を基に、再びタンパク質に組み替えられるという過程を辿るのです。
ヒトの身体にとって必要なアミノ酸は20種類。それらの組み合わせで、細胞や組織が作られているのです。
ここからはアミノ酸の種類と栄養素としての役割をみていきましょう。
ヒトの身体にとって必要な20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できないものを「必須アミノ酸」、必須アミノ酸を除いたものを「非必須アミノ酸」といいます。
冒頭の「フロバイスヒトリジメ」に沿ってご紹介しましょう。
必須アミノ酸 | 非必須アミノ酸 |
---|---|
フ:フェニルアラニン | L-アスパラギン |
ロ:ロイシン | L-アスパラギン酸 |
バ:バリン | L-アラニン |
イ:イソロイシン | L-アルギニン |
ス:スレオニン(トレオニン) | グリシン |
ヒ:ヒスチジン | L-グルタミン |
ト:トリプトファン | L-グルタミン酸 |
リジ:リジン(リシン) | L-システイン |
メ:メチオニン | L-セリン |
L-チロシン | |
L-プロリン |
表1:必須アミノ酸と非必須アミノ酸
必須アミノ酸
必須アミノ酸は食事から直接摂取することでしか体内に取り込む方法がないため、アミノ酸の中でも特に重要視されるものです。近年では必須アミノ酸(Essencial Amino Acid)の補給に特化した「EAA」というサプリメントも市場に出回っています。
非必須アミノ酸
20種類のアミノ酸から、必須アミノ酸を除いた11種類は非必須アミノ酸といわれます。
「非必須」というと「必要ない」という意味に捉えられるかもしれませんが、そんなことはありません。これらも身体を構成するうえで大切なアミノ酸なのです。
非必須というのは、その他の栄養素から体内で合成して不足分を補えるため、必ずしも食事からすべてを摂取する必要がないという意味合いで捉えましょう。
アミノ酸スコア
9種類の必須アミノ酸について、体重・1日あたりの摂取必要量を国際機関(FAO/WHO/UNU)が2007年に定めています。以下の表2をご覧ください。
種類 | 0.5歳 | 1歳~2歳 | 3歳~10歳 | 11歳~14歳 | 15歳~18歳 | 成人 |
---|---|---|---|---|---|---|
フェニルアラニン+チロシン | 36 | 27 | 23 | 22 | 21 | 20 |
ロイシン | 73 | 54 | 44 | 44 | 42 | 39 |
バリン | 49 | 36 | 29 | 29 | 28 | 26 |
イソロイシン | 36 | 27 | 23 | 22 | 21 | 20 |
スレオニン(トレオニン) | 34 | 23 | 18 | 18 | 17 | 15 |
ヒスチジン | 22 | 15 | 12 | 12 | 11 | 10 |
トリプトファン | 9.5 | 6.4 | 4.8 | 4.8 | 4.5 | 4 |
リジン(リシン) | 64 | 45 | 35 | 35 | 33 | 30 |
メチオニン+シスチン | 31 | 22 | 18 | 17 | 16 | 15 |
合計 | 377.5 | 268.4 | 213.8 | 211.8 | 200.5 | 184 |
※単位はmg/kg/日
表2:体重・1日あたりの必須アミノ酸摂取必要量
WHOら 2007[1]より作成
これらのデータをもとに定められた水準を「アミノ酸スコア」といいます。
必須アミノ酸の必要量を満たしているかどうかという評価基準であり、各アミノ酸の必要量をすべて満たす食品は、アミノ酸スコアが「100」になります。
- 大豆
- 鶏肉
- 鯵
- 鶏卵
- 豚肉
- 鮭
- 牛乳
- 牛肉
などの食品はアミノ酸スコアが100で、良質なバランスでタンパク質を含んでいる食品といえるでしょう。
また必須アミノ酸には「桶理論」という考え方があります。図1のように桶を構成する9つの板の高さはアミノ酸スコアを表しています。
図1:アミノ酸の桶の理論
食事によって、この桶にアミノ酸(図の水分)が溜まっていきます。すべての必須アミノ酸が満たされていれば、アミノ酸は漏れることなく体内で利用されます。
しかし必須アミノ酸のうち、ひとつでも必要量に満たないもの(図ではリジン)があると、体内のタンパク質(桶の水)は不足分の量(高さ)までしか合成できません。他に摂取したアミノ酸がムダになってしまいます。
つまり食事のみでこのアミノ酸スコアを満たすには、さまざまな食品を組み合わせて、必須アミノ酸9種が満たされるように調節する必要があるのです。
穀物はアミノ酸スコアが十分でないものもあり、食材の組み合わせが重要になります。小麦はアミノ酸スコアが「44」精白米は「61」じゃがいもは「73」となっています[2]。
うどんやお茶漬けだけでごはんを済ませている人は、おかずとして動物性のタンパク質を摂ることでアミノ酸のバランスを整えましょう。
ビタミン・ミネラルの役割
タンパク質を体内で利用する際、補酵素として働くのが微量(ミクロ)栄養素のビタミン・ミネラルです。ビタミンは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられます。
脂溶性ビタミンは、
- ビタミンA
- ビタミンD
- ビタミンE
- ビタミンK
の4種で、油脂類と一緒に摂取するとよいでしょう。
水溶性ビタミンは、
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ビタミンB6
- ビタミンB12
- パントテン酸
- 葉酸
- ナイアシン
- ビオチン
- ビタミンC
の9種です。水に溶けるビタミンのため、長時間水にさらされると成分が流出しやすく、また加熱処理にも弱いという特徴があります。調理の方法に気をつけて、効率的に摂取するとよいでしょう。
これらはタンパク質、糖質、脂質などと相性良く、エネルギー補給される際に必要不可欠な栄養素で、それぞれのビタミンが異なる役割を持っています。
人間の身体に必要なミネラルは16種類。これらを必須ミネラルと呼びます。
ビタミンと同様、身体の維持の役割を担っているミネラルは、多量ミネラル7種と微量ミネラル9種に分けられ、1日あたりの必要量によって内訳が決まります。
多量ミネラルは、
- カルシウム
- リン
- カリウム
- 硫黄
- 塩素
- ナトリウム
- マグネシウム
の7種です。多量ミネラルは「電解質」ともよばれ、夏の暑い日などにミネラルを補給しましょうというのは、この電解質ミネラルのことを指します。
これに対し、微量ミネラルは、
- 鉄
- 亜鉛
- 銅
- マンガン
- クロム
- ヨウ素
- セレン
- モリブデン
- コバルト
の9種です。
ビタミン・ミネラルは身体の機能維持のために、タンパク質と合わせて摂取したい栄養素です。
製品によってはプロテインの中にビタミン・ミネラルが含まれています。普段の食事でビタミン・ミネラルが不足している場合は、プロテインによってそれらを補うことも期待できるでしょう。
まとめ
実はプロテインは、スポーツや筋トレをしている人だけが飲むようなものではなく、普段運動をしない人や栄養不足を感じている人も、利用する価値のあるサプリメントかもしれません。
あなたの力を最大限に引き出すために、一度プロテインを試してみませんか?
参考文献
1. Joint, W. H. O. (2007). Protein and amino acid requirements in human nutrition. World health organization technical report series, (935), 1.
2. 厚生労働省(2006)「特定保健指導の実践定期指導実施者育成プログラム」