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プロテインとアミノ酸サプリメントはなにが違うのか?

坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)
最終更新日:2022.06.21

近年、プロテイン市場が拡大し、プロテインやBCAA、EAAなど種類豊富なアミノ酸サプリメントが出回るようになりました。しかしながらあまりにも種類が多く、なにをどう選択し、使い分けたらよいのか迷うところでしょう。

そこで今回は、プロテインとアミノ酸サプリメントの違いと使い分けについてご紹介します。

プロテインとは

タンパク質のことを英語で「protein」といいます。

つまりプロテインとはタンパク質のことです。なので肉や魚、卵なども含めた意味になります。ただ皆さまが、一般的にプロテインといわれてイメージするのは、運動前後などにパウダーを溶かして飲む液体のドリンクではないでしょうか。

タンパク質の消化・吸収

タンパク質は100個以上のアミノ酸が結合したものです。胃や腸で消化され、

  • アミノ酸が2個のジペプチド
  • アミノ酸単体

などに分解・吸収され、皮膚や爪、髪、臓器、ビタミンなどを合成する材料として働くのです。プロテインサプリメントを摂取する場合、このステップを経て吸収するので消化・吸収にやや時間を要します。

またプロテインサプリメントには一般的に、

  • ホエイプロテイン
  • カゼインプロテイン
  • ソイプロテイン

の3種類があります。

違いは色々とありますが、消化・吸収に着目するのであれば、ホエイプロテインが1時間、カゼインプロテインが6~8時間、ソイプロテインが3~6時間かかるといわれています。

販売されているプロテインサプリメントのアミノ酸

体内でさまざまな働きをするアミノ酸。アミノ酸には、「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」があります。

アミノ酸は、バリン、ロイシン……と全部で20種類。体内で合成できず、食事やサプリメントから補う必要のあるアミノ酸を「必須アミノ酸」といい、全部で9種類が該当します。また体内で合成できるものを「非必須アミノ酸」といいます。

健康食品として販売されているプロテインサプリメントの多くが、20種類のアミノ酸を網羅しており、だいたいがアミノ酸スコア100です。

アミノ酸20種類は筋肉の材料成分であり、身体づくりのサポートとして、食事から取り入れる必要があります。つまりプロテインを摂取することは、筋肉作りのための材料を準備するようなものといえるでしょう。

アミノ酸サプリメントについて

それではEAAやBCAAなどのアミノ酸サプリメントは、いったいどういうものなのでしょうか。

実はこれらのサプリメントは、アミノ酸20種類が網羅されているわけではなく、身体によいとされているアミノ酸をいくつかミックスしたものです。また、すでにアミノ酸にまで分解されているので、吸収に要する時間は30分程度。つまりプロテインよりも素早く吸収されるのです。

それでは、サプリメントとして販売されることの多いアミノ酸の栄養素としての働きをみていきましょう。

BCAA(分岐鎖アミノ酸 3種)

BCAA(branched-chain amino acids)とは、日本語で分岐鎖アミノ酸。構造上、枝分をしていることが名前の由来で、必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンをまとめてBCAAとよんでいます。

筋肉を構成している必須アミノ酸の約30~40%がBCAAであり、身体づくりのサポートに特に大切なアミノ酸です。

特にロイシンは、丈夫な身体づくりのサポートとして優秀であるとされており、運動時や加齢にともなう骨格筋減少(サルコペニア)に注目し、高齢者へのBCAA摂取が勧められています。

ただしロイシン単体での摂取は、逆にバリンやイソロイシンの血中濃度を下げてしまうという報告もあるので注意が必要です[1]

EAA(必須アミノ酸 9種)

EAA(Essential amino acid)とは、日本語で必須アミノ酸です。EAAを摂取していれば、9種の必須アミノ酸が網羅できているので前述のBCAAも必然的に摂取することになります。

前述の通り、既にアミノ酸にまで分解されているので30分程度で吸収されます。

トレーニング前、中、後や就寝中に下がった血中アミノ酸濃度を一定に保つ目的。不足しがちな朝食のアミノ酸を補う目的で、朝の時間や朝食の+αとして摂取するのもいいのではないでしょうか。

EAAは体内で合成されないため、食事やサプリメントから補う必要があります。そのため血中濃度を維持することが難しく、食後30~45分にEAAの利用量が増大し、食後1.5~3時間で利用量がピークに達するといわれています[2]

供給分がなくなると血中アミノ酸濃度が低下してしまいます。しがってせっかくトレーニングをして筋肉を増大させたい、もしくは、丈夫な身体を維持したいのに、材料が足りないことになるのです。要するに、アミノ酸濃度が足りない時間帯を減らすことがポイントであり、食間などに少しずつ摂取するも一つの手です。

ただしいっきに摂取すると、浸透圧が高すぎて下痢のおそれがあるので、小まめに摂取することをおすすめします。

グルタミン

グルタミンは体内で最も多いアミノ酸で、腸や肝臓、腎臓、筋肉で代謝されます。その中でも半分以上は腸で代謝されることが知られています。流行りのファスティングなどの際に、絶食期間が長くなる場合には、腸への補給として、グルタミンを摂取することもおすすめです。

アルギニン

アルギニンは体内で合成できるアミノ酸です。しかし、環境や外敵から負けないような健康的な身体づくりや、トレーニングによる筋肉強化のサポートとしては優秀なため、ぜひ摂り入れてほしいアミノ酸のひとつです。

クレアチン

クレアチンは、クレアチンリン酸として筋肉に95%存在しており、アルギニン、グリシン、メチオニンの3種のアミノ酸から合成可能です。しかし残念なことに、体内で合成されるクレアチンは1日の必要量の半分程度であり、不足分は食品もしくはサプリメントからの摂取が必要となります。

クレアチンリン酸は、運動時のエネルギー補給として重要です。素早くエネルギー補給のサポートができ、瞬発力や持久力を要するスポーツにおける、理想的なパフォーマンスを目指す方にとってはうれしい成分です。

プロテインとアミノ酸どちらを選択すべきか

プロテインとアミノ酸どちらを選択すべきか

筋肉の構成成分としては、アミノ酸20種が全て網羅されることが重要です。よってBCAAやEAAなど単独のアミノ酸だけを摂取しているだけでは、身体づくりには不十分であり、土台の材料も足りない状況で家作りを始めているようなものです。

したがって食事やプロテインで十分な材料を摂り入れて、運動などで土台を構築、強化したうえで、さらに自分に必要な単独のアミノ酸を摂取することが有用ではないでしょうか。またタンパク質の取り込みには、相性の良い糖質の摂取が不可欠です。

さらにビタミンやミネラルの摂取も必要なため、結局は、3食の食事で必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

そして食事で補いきれないタンパク質をプロテインで補給し、目的やシーンに応じて、アミノ酸サプリメントを使い分けてみるのがいいのではないでしょうか。アミノ酸サプリメントの必要量は、個々人のトレーニング内容やコンディションによって異なるでしょう。

プロテインに初めてトライするという方は、まずは食事とプロテイン摂取からはじめてみて、必要に応じてアミノ酸サプリメントを追加することをおすすめします。

まとめ

プロテインは、アミノ酸20種類を網羅したサプリメントです。一方EAAやBCAAは、いくつかのアミノ酸がミックスされたもので、その特徴はさまざまです。

まずはプロテインで土台を構築し、例えば、瞬発力が必要な競技をされる場合にはクレアチンを取り入れてみるなど、使いわけが大切かと思います。

また食事をおろそかにして、プロテインやアミノ酸サプリメントで栄養補給をすることは本末転倒です。理想の身体づくりには、血中アミノ酸濃度の維持が必要であり、1食抜けるだけでも低下してしてしまうため、定期的な補給が必要になります。朝食を食べる時間がないという方は、プロテインからはじめてみるのも一つの手段として有効ではないでしょうか。

最後に、プロテインやアミノ酸サプリメントでタンパク質を摂取しただけでは、筋肉合成は望めません。運動をして筋肉に刺激を与えることが大切であり、食事と運動は切っても切れない関係であることを忘れないでくださいね。

参考文献

1. Wolfe, R. R. (2017). Branched-chain amino acids and muscle protein synthesis in humans: myth or reality?. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14(1), 1-7.

2. Atherton, P. J., Etheridge, T., Watt, P. W., Wilkinson, D., Selby, A., Rankin, D., … & Rennie, M. J. (2010). Muscle full effect after oral protein: time-dependent concordance and discordance between human muscle protein synthesis and mTORC1 signaling. The American journal of clinical nutrition, 92(5), 1080-1088.

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坂口 真由香 管理栄養士(寄稿)
この記事を書いた人
坂口 真由香
管理栄養士(寄稿)

管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、フードコーディネーター、サプリメントアドバイザー保有。大阪市内400床病院で6年間、献立作成や慢性期から急性期疾患の栄養管理に従事。糖尿病などの慢性疾患を対象に年間4,500件ほどの栄養相談・サポートを経験。

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